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アレス動物医療センター

学校のウサギ2

 今回はちょっとうれしい「ひとりごと」、というより報告です。
 
 以前「学校のウサギ」というひとりごとを書いたことがあり、かなりの反響がありました。

 一般のご家庭からは、大半が「確かに学校のうさぎの状況はひどい」という賛同の声であり、それに対し学校関係で働いてらっしゃる方からは「確かにひどい状態なのはわかっているのだけれど、予算や敷地面積など、現実問題としてはどうにも・・・」というものでした。
 これはまあ、確かに教職員の方からの意見ももっともで(それが良い、悪いは別として)、教鞭をとるという大変な仕事の他、クラブや部活の顧問、学外での活動など多忙な毎日の中、子供をほったらかしにうさぎの相手ばかりはしていられないという現実や、実際の費用の問題(ケージを個別にしたり、去勢、避妊手術をしたり)など、実際行動に起こすのは難しいのでしょう。

 救いは、学校でうさぎの子供が次々と産まれ、次々と育児放棄にあい、次々と死んでいくことを「命の尊さを教えるためにはしかたがない」と言い訳されるのではなく、「確かに良くない」と正直に認識されている方ばかりであるということです。

 学校のウサギに関する感想メールは一般の方や、教職員関係の方を含め、100件近くのメールをいただきましたが、少なくとも「それで良いと思っている」という意見はありませんでした。
 すべての人の価値観が同じである必要はないのですし、「今の学校のうさぎの現状は良くない」と思うことが必ずしも正しいのかはわかりませんが、やはり同じように思ってくれている人がたくさんいると、心強いものがあります。

 今はこのように感じてくれている人達がいるだけでも良しとすべきなのか、と半ばあきらめかけていたところに、次のようなメールが届きました。
  
 
 はじめまして
 HPのひとりごとの中の学校飼育について読み、メールしました。
 私も教育現場で働いています。
 去年から飼育担当になり、すさまじい光景を目の当たりにし、そのあと、雄雌分け、去勢手術、ケージの購入、、、を経て、
 現在2年目は飼育小屋の前にウサギ専用の畑を作り始めました。
 今人参を育てています。

「去年の4月、初めて飼育担当になり、ショックを受けました。
 6畳が3つあるウサギ小屋に50以上のウサギが好きなように生活していたのです。
 もちろん去勢などしてありませんでしたので、増え続ける一方でしたが、私がそれ以上に悲しく思ったのは
赤ちゃんの死体がそこらじゅうにあったという実態でした。
 子どもたちの当番の時間より10分前に飼育小屋へ行き、できれば子どもたちにこのひどい状態の死体を見せたくないと思いました。
 ひきちぎられたようなひどい死体を見て、情操教育になどなりません。
 毎日毎日だいたい、3匹くらいずつ目にしました。
 そして校長先生に相談に行き、雄雌を他の教員に手伝ってもらって分けました。
 そのあと地域の獣医さんで雄の方だけ去勢してもらい、現在、20匹に落ち着きました。
 私のクラスでは教室でウサギを飼い、土日には子どもたちが交替で家に連れて行ったりしています。
そのような状況ですが、今日は経過報告まで」

 
 このメールをいただいたときに、真夜中の病院で一人寂しく拍手喝采を送っておりました。
 すばらしいではないですか。
 成せば成る、なんて簡単な言葉で片づけられることではありません。

 メールではこれだけの文章に短縮されていますが、実際これを行動に移すためには、とても大きな苦労をされたであろうことは、容易に想像ができます。
 さぞ、大変だったでしょう。
 でも、こちらの学校では、この大変な作業を計画し、きちんと行動に移されたのです。
 もしかしたら、他にもこのように学校動物の環境改善に取り組まれている学校があるのかもしれません(うちのホームページとは関係なく、とっくにやっている学校もたくさんあるのかもしれませんし)。

 あくまで理想論なのかも、などと獣医師である私ですら諦めかけていたことを、実際に行動に起こせる人達がいて、それがきちんと実を結んでいるのです。
 日本もまだまだ捨てたものではありません(言い過ぎ)。
 
 実行までには移されていなくても、「まずは何から着手したらよいでしょうか」と、メールで問い合わせてくださった方も何件かありました。

 それが、きちんとした形になるかどうかはわかりませんが、まずは行動してみることが大事なのかもしれません。
 近くの動物病院に、学校のうさぎの去勢手術がどれくらいの費用になるのか問い合わせてみるところからでも、あるいは校長先生に掛け合ってみるところからでも(そういうのが校長先生に問い合わせるべきことなのか、よくわかりませんが)、いいのかもしれません。
 
 ちょっとずつ、ちょっとずつ、かもしれませんが、学校のうさぎの飼育環境の改善が成されていくのかもしれません。

 ちょっとずつ、ちょっとずつ、学校で不慮の死を迎える、子ウサギが減っていくのかもしれません。

 理想論も、行動に移せば現実になりうる。
 そんな当たり前だけど、すごく大切なことを、教えていただいたような気がします。 
 ・・・あっ、今回オチがないですね。


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