小学校や中学校でウサギを飼育しているところが多いようですが、その飼育環境はお世辞にも良いとはいえないものが多いようです。
先日二人の女の子がバスタオルを抱えて病院に来ました。
小学4、5年生あたりでしょうか、目に涙をいっぱいためてバスタオルを診察台の上に置いたのです。
バスタオルを開くと生まれて間もないウサギが5匹、冷たく固まっていたのです。
すでに事切れていることを告げるとますます涙が止まらなくなり、時間をかけて話を聞くと、次のような話でした。
学校では狭いスペースに数匹のウサギが雄雌入り乱れて飼われているとのことで、その中でメスは次々と出産し、次々と育児放棄をし、次々と死んでいるようで、その日飼育当番だった二人はその現場に出くわしてしまったというわけです。
うさぎは交尾したらすぐにオスと離して(あるいは他のウサギと離して)飼わないと、なかなか落ち着いて育児が出来ないようで、このような育児放棄やカニバリズム(子食い行動)に出てしまうことが多いのは有名な話です(ウサギを飼う人にとっては)。
学校での飼育環境というのはそういう意味では、出産にはあまりに不適切な環境なのかもしれません。
メールでの質問でもよくいただくのですが、学校でのうさぎの飼育で、育児放棄が非常によく起きているようなのです。
子うさぎの状態や、子ウサギが命を落としてしまった原因を子供たちに説明したあと、出来たら学校の先生に頼んで雄と雌を別々に飼うようお願いしてみたらと伝えました。
子供たちはどれが雄か雌かすらわからないという話だったので、また今度病院に連れてきてくれたら雄と雌を見分けるよと話し、学校に提出するための診断書を持たせて、その場は帰ってもらいました。
すると一時間もしないうちに学校のウサギを連れてきてくれたのです。
聞くと病院からは結構遠い学校で、先生やご両親に一緒に来てもらったわけではなく、子供たちだけで連れてきてくれたのです。
1,2kmは離れているという話で、子供たちのひたむきさに強く胸を打たれました。
しばらくのち、その小学校の先生から電話があり、雄雌別々に飼うか、あるいはせめてオスの去勢手術をしてはと説明してみたのですが、その返答は曖昧なものでした。
ウサギを学校で世話をするのは情操教育の一環であり、出産などの現場に立ち会わせるのもその目的の一つで、小学生にそれを去勢手術や避妊手術で回避するという行為を知らせるのはどのようなものかと・・・というような話と、現実問題では雄と雌を別々に飼育するのはなかなか難しく・・・というようなお話でした。
確かに学校の先生のいうこともわからないでもないです。
学校でウサギやニワトリを飼うのはおそらく、動物の飼育を通して生命の尊さや、生物を世話をすることの難しさを伝えるという、情操教育の一環なのでしょう。
小学生に避妊や去勢手術を説明するというのも、相当気を使うでしょうし、骨の折れる作業でしょう。
コスト面やスペースの問題など現実面でも多々問題はあるのでしょう。
しかし、この状況が果たして子供達に良い影響を与えるのでしょうか?
何のコントロールもなく無制限に子供が増え、狭い飼育環境で過密な状況で飼われ、次々と育児放棄されて、当たり前のように死んでいく。
この状況を見て子供達は何を思うのでしょう。
本当に命の大切さを感じられるのでしょうか。
世の中にいったいどれだけの学校でウサギが飼われているのかは知りませんが、この中で雄と雌を別々に飼っているところはどれくらいあるのでしょう。
避妊手術や去勢手術を受けさせている学校はあるのでしょうか。
ウサギを飼うには一匹に対して広いスペースが必要であることを教えている学校はあるのでしょうか。
ウサギが子供を産むには大きな気遣いが必要であると教えているのでしょうか。
一匹一匹の命を大切に維持するためには、大きな努力が必要であることを教えているのでしょうか。
学校のウサギに対し、避妊去勢手術をすることについては賛否が分かれるところなのかもしれませんが、もう少ししてあげられることはあるのかもしれません。
環境を改善するために、話し合いの場が持たれ、人が動き、生徒が動き、先生が動き、それがうまく運ぶかどうかは別として、うさぎの命のために沢山の人が動くことだけでも、子供達は生命の尊さの一部をかいま見ることが出来るのかもしれません。
学校の実状も知らず、安易にこのようなことを書くと怒られてしまいそうですが、まあいいでしょう。
だって「ひとりごと」なんですもの。
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