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アレス動物医療センター

捨てウサギ

 先日「小さなウサギを拾いました」と病院に駆込んできた患者さんがいました。
 そんな馬鹿なと、患者さんが抱えている小さな菓子箱を覗きこむと、本当に小さい、生まれてまだ1週間も経っていないようなウサギが一匹、所在なげに座っていたのです。

 きっと、家でウサギが増えてしまって、処遇に困ったのでしょうが、捨て猫ならぬ捨てウサギを見るのは私も初めてでした。
 最近ウサギを含めたエキゾチックアニマルが急増しており、明らかに診察する機会も増えていますが、これに比例するようにこれからも捨てウサギが出てくるのかと思うと、ため息を出さざるをえません。

 犬や猫はかなり小さい時点でも、人の手により育てることが出来るかもしれません(だからと言って捨てていいという訳では当然ないですが)。
 しかしうさぎは違います。
 「うさぎの購入時期」でも書いていますが、ウサギが生きて行くうえで最低でも生後3週間はうさぎのミルクを飲まなければいけないのです。
 これは犬のミルクでも猫のミルクでも牛乳でもだめで、うさぎのミルクでなければ意味がないのです。
 運良く猫のミルクなどで成長することができても、なかなか健康な体を作ることは難しく、何かのおりにすぐ病気になるような弱いウサギになってしまいます。

 飼い手を見つけられず、かといって自分の手を汚したくない人が、「誰かに拾われて幸せになってね」と偽善者ぶって公園に捨てても、その仔は幸せになれるはずもなく、それどころか生きることも出来ないのです。
 つまりその人はウサギを捨てたのではなく、殺したということになります。
 
 何かしらの病気に対し、治してあげようと必死に通っていらっしゃる患者さんの影で、こんな無責任なことをする人も、ごく一部とはいえいるとは、なんともやり切れぬ思いです。

 うさぎのような本当にデリケートな生き物は、ウサギを愛してやまない人の手でだけ幸せになれるのかもしれませんね。


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