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アレス動物医療センター

うさぎの病気 エンセファリトゾーン

説明

 注:2005年時下記のような文章を書きましたが、現在はみなさんのご助力もあり、エンセファリトゾーンは日本でも検査可能となりました。
 ご協力本当に有難うございました。

 エンセファリトゾーンという病気を耳にしたことはありますか?

 何とも耳慣れない、しかも覚えにくい名前の病気ですが、結構大事な病気なのです。

 このエンセファリトゾーンというのは、ようは寄生虫です。
 ウサギに寄生し、様々な症状を出す寄生虫で、他にも犬やモルモット、ヒトでも感染しうると言われています(ただし何らかの問題で非常に免疫力が落ちているヒトのみで、健康な人の場合は感染しても自力でやっつけるそうです)。

 どのような症状を出すかと言いますと、これは様々で、今言われているのは、
1.神経症状:斜頚、旋回、痙攣、部分的な麻痺、開張肢、尿失禁、運動失調、眼振
2.目の障害:白内障、ブドウ膜炎
3.腎臓の障害:腎炎
4.その他:沈うつ、食欲不振、成長不良
 などなど、ちょっと覚えきれないくらいいろんな症状が出る可能性があります(同時にとは限らず、この中の一つ、ということもありえます)。

 感染するとすべてのうさぎさんがこうなるかというと、そういうわけではなく、ごく一部のうさぎさんのみが症状を出します。
 しかしまだ知名度の低い病気なので、実は見過ごされているだけで、きちんとした検査をすると、もっともっと見つかるのかもしれません。

 ではなぜきちんとした検査がされてないかといいますと、実は日本ではまだそれを行える検査機関がないのです。
 海外などではそのような検査機関があるので、血液検査で調べることが出来るのですが、日本ではそういう面ではやはりまだまだ遅れている、というしかありません。
 
 ちょっと前まではこの病気は検査することも、治療することもできない謎の病気という風に言われていたのですが、今はフェンベンダゾールというこれまた耳慣れない薬で、治療が有効という報告がされています。
 ですから、以前はこの神経症状は寄生虫が原因の可能性も全くないわけではないのですが、検査も治療もできないのです、などと弱腰なことを言っていたのですが、日本でも検査できるようになったら、もっとたくさんのうさぎさんを治療して(あるいは予防して)あげることもできるのかもしれません。

 で、なぜこのようなことを今回ひとりごとに掲載したかと言いますと、ぜひみなさんに、この病気を知ってもらい、日本でも検査が出来るように、アンケート署名に参加していただきたいからです。

 結局なぜまだ日本では検査できないかというと、日本の研究機関はうさぎの検査を出来るようにしても、儲けにならないだろう(そんなにたくさんのうさぎの検査依頼は来ないだろう)と思われているわけです(まあ、他にもいろんな理由があるのかもしれませんが)。

 ですから、みなさんの知識の向上と、その必要性を訴える声が企業の耳に届けば、もしかしたら日本でも検査が出来るようになるかもしれません。

 [エンセファリトゾーン研究会]というホームページをぜひ一度、ごらんになってみてください。
 これはエンセファリトゾーンの重要性に気づき、それを訴えるために何人かの先生方が立ち上げた、貴重な情報ホームページです。
 先にあげたアンケート署名もこのホームページにあります。
 アンケートに関しては決して義務でも何でもないので、必ずというわけではないのですが、せめてその内容を読んでみてください。
 きっと大きな何かをえることが出来るはずです。

 最後に一つだけ、とても重要なことを。

 今たくさんのうさぎさんが神経症状や食欲不振などで戦っていることと思われます。
 しかしそれらすべてがエンセファリトゾーンが原因かと言いますと、そんなことは絶対ありません。
 あくまで健康なウサギでは滅多に発症しない、見つかることはまれな病気です(と、少なくとも今はそういわれています)。

 何らかの神経症状や、食欲不振で治療していて、なかなか治らないから、これはエンセファリトゾーンに違いない、今診てもらっている先生は病気を見誤っている、と思ったら大間違いです。
 神経症状のウサギを見たときに、最初に何を疑うべきかと言ったらやはり内耳炎や中耳炎です(やはりほとんどがそうだと思われます)。
 エンセファリトゾーンの神経症状は、内耳炎の可能性を除外し(治療に反応するかどうかで確認し)、中耳炎の可能性を除外し、中毒の可能性、脳腫瘍、脊椎疾患などの可能性を除外し、最後に残った可能性です。
 いきなりこれを疑って他の検査なり治療なりをぶっ飛ばして、この治療だけしてくれ、などと獣医師を困らせてはいけません。

 このページはそういうことを言いたかったわけではなく、こんな可能性もあり、それを飼い主さんにも理解してもらいたい、そんなささやかな野望のもとに書いたものです。

 いきなり病院に行って、これまでの治療は止めて、エンセファリトゾーンの治療をしてください、などというと、大きな過ちを犯しかねないことを、くれぐれもご理解ください。 


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