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アレス動物医療センター

神経症状は治せないのか?

疑問、質問

 現在、6ヶ月になるミニウサギ(♀1400g) を飼っています。
 2ヶ月ごろから目が充血し 病院ではパスツレラによる「ブドウ膜炎」と診断され、サルファ剤+非抗生剤の目薬で治療しておりましたが、よくならずに4月頃より斜頚になりました。
 パスツレラ菌が脳に感染したとゆうことで薬がエンロフロキサシンに変わりましたが好転しませんでした。途中、ステロイドやクロラムフェニコールなども試してみましたが結果は×でした。
 先週、病院に行った時に「もうできることはありません、今後症状が悪化した時の対処(餌を食べなくなった特の点滴とか・・・)しかできません。」といわれました。
 ようするにもうあきらめられたとゆうか、サジを投げられたみたいです。でも、私としてはあきらめたくはありません。最近、よく食べ体重も増えてきたのに何とかならないか模索中です。
 とりあえず別の病院に行こうかと思ってますが ほかの獣医さんの考えも聞いてみたいので相談させていただきました。実際に診察されたわけではないので、お分かりにはならないかとは思いますが、なにかアドバイスいただけないでしょうか?
 
(一部ホームページ用に中略しております)

お返事

斜頚の原因はいろいろあり、これはホームページのほうにも書いたのですが、一番多いのはやはりパスツレラなどの細菌感染によるところが多いでしょう。

 で、これに使う薬もエンロフロキサシンという抗生剤が最も一般的であり、時々ステロイドやクロラムフェニコールを試すことがありますが、エンロフロキサシンが最も安心して使えるものと思っております。
 それ以外で使うものとしてはビタミンB製剤や抗ヒスタミン製剤くらいでしょうが、エンロフロキサシンほどの効果は期待できません(大概併用してます)。
 ステロイド剤は(私は)短期間使用することが多いですが、その有効性には賛否両論あります。

 これ以外の斜頚の原因は、エンセファリトゾーン(寄生虫)が多いでしょうか。
 この場合は寄生虫の駆虫薬を用いることになります。

 ただ日本では、現時点ではエンセファリトゾーンをきちんと検査するのは困難です。
 ですから、斜頚のこが来た場合は、はじめから抗生剤と駆虫薬、ビタミン剤を出して、後は天に任せるということがほとんどです。

 治療の効果はまちまちで、完全に治るこから、全く治らず命を落とすこ、そして多少改善しても、完全には治らず、そのまま生活しているこもいます。
 ただ、完全に治ったように見えた場合は、再発防止のため、それからさらに2、3週間薬を続けて治療を終えるのですが、元気や食欲はあるけど斜頚が残ってしまったというこの場合は、飼い主さんが理解を示してくれるなら、かなり長期間にわたって薬を飲んでもらうこともあります。

 私の患者さんの中で、小さいころに神経症状が出始め、以降薬をどれだけ続けても回復せず、それでも普通に生活してるからと、飼い主さんがずっと飼い続けているこがいます。今確か7歳くらいだったと思いますが、ときどき耳掃除に連れてこられています。
 このこは何年も薬を飲んでいたのですが、まったく変化がなく、試しに薬を止めてみても、全く悪化も改善もなかったため、そのまま薬を止めて生活してもらっています。

 これらの治療が今のところの限界のようです。
 ちなみに、鼓膜切開法といって、鼓膜をぶちやぶって中を洗浄するという、手術もあるのですが、これを支持してる先生もいれば、反対してる先生もおり、その有効性はまだはっきりしていないようです。
 ちなみに私は恐くてやったことがありませんので、その効果を正確には知りません。

 薬を止める時期については獣医師それぞれの好みがあるので、難しいところですが、この獣医さんの治療法に関しては、最善のものをされているのではないかと思います。
 その先生が治療をあきらめたかどうかは分かりませんが、私だったらこんなとき、飼い主さんにはこのように伝えています。

「この仔の斜頚は、正直治る可能性は低いです。
 しかしゼロではないし、元気にしているのなら、こんな恐い病気で命を取り留めただけでも立派なものです。
 神経というのはダメージを受けるときは一瞬ですが、これが回復するには何年もの長い月日がかかります。
 今後この仔の斜頚が治るにしてもそれは本人の治癒力と飼い主さんの世話によるものであり、きっと薬による回復ではないでしょう。
 薬は悪化を押さえることはできるかもしれませんが、おそらく神経の回復には役だってくれません。
 元気になり、しかも改善が見られなくなった今、薬を続けることにほとんど意味はないでしょう。
 ずっと続けて予防として使うのも1つの手ですが、耐性菌が出来て薬が効かなくなるよりは、次回症状が出たときのために薬を止めてその時に備えるのも1つの手です。
 どちらを選ぶかは飼い主さんの好みです。
 今のところどちらのほうが良いという報告はないようですから」

 もしかしたら、その獣医さんもこのようなことを言いたかったのかもしれません。
 獣医師として出来ることは今はないが、決してうさぎの回復をあきらめたわけではないと、私は思うのです。
 弁護するわけではないのですが(弁護してるか?)。


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