私が獣医師になりたてのころは、下痢をしたらウサギにヨーグルトを食べさせろと、獣医師はみな口をそろえて言っていましたが、今はその効果に疑問視する獣医師も多いようです。
うさぎは盲腸内の善玉菌が消化吸収のもっとも大事な部分を担うのですが、低繊維食や高蛋白、高炭水化物の餌ばかり食べていると、悪玉菌が増えてしまって命に関わります。
ヨーグルト(その他乳酸菌の入った製品)を良いと言うのは、ようはお腹の中に善玉菌を増やそうという考えから来ています。
これに対し、ヨーグルトは必要ないという意見もあります。
これは、うさぎの胃酸は人間や犬、猫と違って非常に強烈な強酸なので、胃の中で乳酸菌が失活(効果がなくなる)してしまうのではないか、ヨーグルトの中の乳糖が有害なのではないかという意見があるからです。
下痢をしているときにはうさぎの胃酸は強酸から弱酸に代わるので、多少は腸にまで届くのかもと思うのですが、そもそもウサギが下痢をする状況を作ってはいけないわけで、火事になったら火消しをというのではなく、そもそも火事が起こらないようにしなければいけないのかも、という気がします。
長い間学会で話題に上がっていながら、いまだにその効果が白黒ついていないということは、たいした害も、有効性もないと言うことかもしれません。
それに下痢をしているからといって、病院にも行かずにヨーグルトで治療をしているつもりになってはいけません。
まずは病院へ連れて行き、原因を調べてもらい、それに対する適切な治療を受ける必要があります。
ヨーグルトはあくまで補助ですし、主治医の先生が与えないほうが良いというのなら、それに従いましょう。
ヨーグルトに入っている乳糖という成分や、脂肪分、タンパク質、炭水化物の量など成分的には本来ウサギに与えるべきではないものですので、効果が微妙となると、メリットとデメリットは合わせてトントンなのかもしれません。
以前はヨーグルトや乳酸菌製剤について聞かれたら、「ちょっとくらいなら」とお応えしていたのですが、最近は「本人が喜ぶならちょっとくらいはいいですが、基本的にはあげないほうがよいと思いますよ」とお応えしています。
野生のウサギでヨーグルトを食べているところは見たことがありませんしね。
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