獣医師の成長というのは、人間の体の成長と似ていて、はじめの成長はぐんぐんぐんぐん伸びていき、だんだん成長は緩やかになり、最後は成長が止まる(あるいは止まって見えるかのように緩やかに成長する)ものだと思います。
もちろん成長が止まらないよう努力し続けていかなければいけないのですが、それでも緩やかになってきた自分の成長を見るよりも、すさまじい勢いで成長していく後輩獣医師たちの変化を見るのは、とても楽しいものなのです。
ロールプレイングゲームなどで最初はスライム数匹倒すだけでぐんぐんレベルが上がっていくのが、やがてレベル上げが大変になっていくように、私のレベルアップもなかなか大変になってきました(まだまだひよっこの癖に)。
まがりなりにも院長という役職になってしまうと、おいそれと病院を離れることも出来なくなり、大阪や東京のセミナーも長期のものは参加できず、歯がゆい思いをすることもたびたびです。
そうすると変化の少ない自分を眺めているよりも、獣医師2号から4号の日々の成長を眺めているほうが楽しくなってきたりします。
彼らは一月一月大きく成長し、一年たつころには見違えてしまうほど育っていくのです。
本人たちには自覚はあまりないのかもしれませんが、はたで客観的に見ていると、その変化がはっきりと見えてきます。
たとえば獣医師3号は最近超音波検査に興味を持ち始めました。
アメリカで画像診断の専門医資格を日本人で始めて修得した宮林先生という偉〜い先生が大阪にいらっしゃるのですが、その先生に超音波検査の指導を受けるため大阪に通い始めたのです。
いくら電車で行けといっても、病院の負担を考えて長距離バスで移動する彼女は、見た目の割に頑固な博多娘です。
しかしその岩をも砕くまじめさが功を奏し、見る見る間に成長し、気がつくと私の超音波検査技術をはるかに上回っていたのです。
最近は超音波検査について獣医師3号に教えてもらうことも多くなり、成長し行くわが子を見守る親の気持ちを独身ながらに味わう羽目になりました。
先日終了試験も無事?合格し、立派な修了証書が病院に届きました。
修了証書を手にした獣医師3号を記念に写真に収めながら、危うく泣きそうになる34歳(もうすぐ35歳)。
いつかうちを卒業して、福岡の実家に帰る日も来るのでしょうが、あの技術があればきっとどこの病院でも重宝がられるのではと、ちょっと鼻高々なのです。
いつか嫁に出すお父さんの気持ちというのはこんなものなのでしょうか(こんな程度ではないんでしょうが)、少しは嫁入り道具の足しにはなったのかなと思います。
獣医師2号はいつ自力で開業しても良いくらいの腕にまで育っていますが、まだ自分の技術に満足していないのか、置いていく私を心配しているのか、病院と私を支えてくれています(そろそろ私も週休2日にして良いでしょうか・・・・・・・・・ああ、だめですか)。
獣医師4号は最近鳥の診療に興味を持ち始め(というか、昔からあったようですが)、今度1月ほど東京の鳥の病院に奉公に出す予定で、新たな知識、技術を学んできてくれることでしょう。
私が余り自由に動けない分、彼らにはどんどん外でも勉強を重ねてきてもらい、そして彼らから学ぶことによって私も少しは成長できるはずです(私の心がけ次第でしょうが)。
私が修行していた病院が外科の病院であったにもかかわらず、私はウサギに、同期の先生の一人はしつけに、もう一人は漢方に興味を持っていったように、うちで働いている獣医師たちにも、興味の赴くままに育っていってほしいと思います。
2000ページもある分厚い獣医学書のただ字面だけを眺めていても、なかなか身にはつかないですが、興味を持った分野はその瞬間にぐっと身につくものです。
老いては子に従え、というほど老いたつもりはありませんが、後輩の獣医師たちが育つのを見る喜び、そしてその獣医師たちに教えられる喜びと、なかなかこのポジションは贅沢なお仕事です。
私も負けてられない!と思ったりする今日この頃です。
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