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アレス動物医療センター

間違ったプライド

 先日非常にショックなメールをいただきました。
 飼っているうさぎの食欲がなくなり、すぐに病院へ連れていったのになんともないと言われ、その後何件か転院したにもかかわらず、結局手遅れで命を落とされたというものでした。
 
 獣医師は人間のお医者さんと違い、内科も外科も耳鼻科も歯科も眼科もしなければいけませんし、犬や猫、ウサギ、げっ歯類、フェレット、トリなど異なった種類の生き物も診療しなければいけません。
 では1人でそのすべてに関しスペシャリストとなりうるかというと、これははっきり言って無理です。

 例えば私の勤める病院は外科、眼科、内科を得意としていますが、それ以外の分野では他の病院に比べ、抜きんでて優れているというわけではありません。
 したがってハ虫類の患者さんが来ると、「ごめんなさい、よく分からないので、***病院のほうへ行ってみて下さい」と言わざるをえない時もあります。
 私なんかは欲張りな獣医師ですから、すべての担当する患者さんを自分の手で治してあげたいと思うのですが、それでも出来ないこともあれば、分からないこともあるのです。
 それはしょうがないことだと私は思っています。
 これからは獣医師もだんだん専門分野ごとにわかれ、内科、外科、眼科、歯科、爬虫類、げっ歯類、鳥類と細かく分業化されて行くでしょうが、それまでは動物病院ごと(獣医師ごと)に得手不得手があるのは当然のことだと思うのです。
 私なんかは、今はうさぎの勉強をするのに手一杯で、とても爬虫類やサルなどの勉強をしているゆとりはありません。
 獣医師も万能ではないのです。

 ただ許されないのは、分からないのに分かったような顔をして、様子を見てくださいということです。
 血液検査をするわけでもなく、レントゲン検査をするわけでもなく、うさぎの診察に自信がないことを伝えるでもなく、ウサギをよく診る病院を紹介するわけでもない。

 どの獣医師にもプライドがあります。
 知らないことがあるというのを、患者さんに知られたくない気持ちもわかります。
 しかし、ことは命に関わることであり、それが獣医師のプライドよりはるかに大切であることは、言うまでもありません。

 患者さんに無知を知られるのが嫌なのか、あるいは別の病院に患者さんを奪われるのが嫌なのかは分かりませんが、そのためにお茶を濁すような診断をするのは間違ったプライドです(プライドですらないのかもしれませんが)。
 
 今回メールをいただいた方のうさぎさんを実際診察したわけではありませんから、はじめの病院の診断が正しかったのか、どうかを判断することはできません。
 もしかしたら、その時点では何もなかったのかもしれませんから、私が診察もせずにどうこう言うのは良くないことなのかもしれません。

 ただ今回の件であらためて、分からないことは分からないという勇気の大切さを教えていただいた気がします。
 いろいろ検査してみる、いろんな本をひっくり返して調べてみる、出来うるかぎりの治療を考えてみる、精一杯の努力をしてみる。
 それでも自分には治すことが出来ず、別の誰かが治せる可能性があるのなら、獣医師は平気で患者さんを手放す勇気を持たなければいけないのかもしれません。

 最後に、名前は挙げられませんが、とてもとても大事にされていたのに、不幸にも月に帰ってしまわれたうさぎさんのご冥福をお祈りしたいと思います。 


アレス動物医療センター

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