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アレス動物医療センター

ウサギへの片思い


 先だって頂いたメールで、飼っているウサギに嫌われたのではないかと言う質問、といいますか心配しているという内容のものがありました。

 その子はある病気で病院に通っているそうなのですが、毎日飼い主さんが薬を飲ませ、点鼻薬をさしと頑張って看病していらっしゃるにもかかわらず、うさぎは日増しに薬の投薬を拒むようになり、今では抱っこすら嫌がるようになってきているというお話でした。

 飼っているウサギが(あるいはその他の動物でも)一度でも病気にかかり、看病をしたことのある方は、たいがい経験があるのではないかと思うのですが、これは飼い主さんにとっては結構な苦痛と言えるでしょう。
 このような場合、あまり良いアドバイスが出来ず、非常に心苦しいのですが、気持ちだけは何となく分かるような気がします(気がするだけかもしれませんが)。

 私も誰の影響か、とにかく動物が好きで、小さい頃はムツゴロウさんのテレビはかかさず見、足繁くペットショップに通い、金沢ヘルスセンターと言う動物園にもしょっちゅう行き(今はもうありませんが)、小学校卒業文集の将来の夢は「獣医」と恥ずかしげもなく書いていたくらい、それはもうアホみたいに動物が好きでした。
 それが災いして、とうとうこんな仕事をしているわけですが、これほど動物に嫌われる職業もないでしょう。
 まずたいがいの子は親の敵を見るような眼で私たちを見ます。
 そしてまた多くの子は子羊のように震えます(犬、または猫、ウサギなのに)。
 当然かまれたり、引っかかれたりもします。
 手はぼろぼろで、おそらく一生消えないであろう傷跡もたくさんあります。
 
 それでもこんな因果な商売を辞められないでいるのは、何でなのでしょう。
 いまだによく分からないと言えばよく分からないのですが、やっぱり治って元気になってくれたら、単に嬉しいと言うだけなのかもしれません。
 瀕死の状態の動物が担ぎこまれてきて、注射や手術で散々痛い目にあわせ、元気になって帰っていくとき、たとえ唸り声を上げながら帰っていったとしても(そして次ぎ来るときも、おそらく唸り声を上げながら来るとしても)、元気にどこかで生活してくれていればと思うのです。
 もはや自己犠牲というより、自己満足の世界です。

 私はそれっきりの関係ですが、飼い主さんはその後も一緒に生活していかなければならないのですから、さすがに飼い主さんにそう考えろと言うのは無理な話です。
 飼い主さんが愛しい我が子に嫌われる苦痛と言ったら、獣医師の苦悩など些細な問題です。
 ただ、とりあえず生きててくれないと関係の回復もへったくれもないので、たとえまた抱っこをさせてくれるのに1、2年かかったとしても、まずは治療を、としか言いようがないのかもしれません。

 生きててくれないと話にならない、嫌われるも好かれるも生きてて何ぼのことなのです。
 どうです、少しは肩の荷が下りました?
 ・・・そんなわけありませんね。 


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