世の中の患者さんは遠慮深い方が多く、病院に電話をすることを「申し訳ない」と思うようです。
でも、ちょっとした質問で、病院に電話をするのは、そんなに悪いことだとは思いません。
先日深夜に電話があり、次のような質問でした。
「10歳のメスのウサギなのですが、今回の生理が長く、1月たっても出血が止まらず、今呼吸が苦しそうで、ぐったりしています。」
電話で確定するのは不可能ですが、すぐに子宮疾患(おそらく子宮ガン)で、それが肺転移したのでは、と思いました。
詳しく聞いてみたら、4歳のころから月1回尿に血が混じっていたので、それを生理と思っていたとのこと。
いつも自然に血が止まっていたので、今回も止まるだろうと思っていたら、いつまでもとまらない。
で、今日急にぐったりした、というのです。
「ウサギに毎月出血するような生理はないんです」と説明すると、本気で驚いてらっしゃいました。
今までそのことで病院に連れて行ったこともなければ、電話での相談もしたことがなかったそうです。
完全に生理と思って疑わなかったようです。
その方は結局病院にはこられなかったのですが、もし4歳の出血のときにどこかの(うさぎの診療になれた)病院に電話すれば、きっと子宮疾患の疑いがあることが告げられ、そのとき手術をしていれば助かったのではないかと思うのです。
確かにそのあと6年も生きたのですから、大往生といえば大往生ですが、この間うさぎさんは子宮疾患の苦痛と一人戦い続けていたわけです。
治せたはずの病気で苦しむことも、死ぬこともやはり、本来あるべきことではないのかもしれません。
もちろん電話での問い合わせでは、わからないことも多く、必ずしも飼い主さんの期待できる答えが返せることはまれかもしれません。
本当は病院に連れて行ってあげるのが一番でしょう。
しかし、「それは診てみないとわからないですし、検査した方が良いと思います。連れてきてあげてください。」という答えでも、十分意味があると思うのです。
飼い主さんに、なぜ電話だけでもしなかったのですか?と聞くと
「お金も払わずに、お忙しい先生の手を止めるのは、いけないことかと思って」とうなだれたような声が返ってきました。
しかし、この会話は意外とよく交わされるもので、多くの患者さんが病院へ電話をすることに何らかの抵抗を持っているようです。
また診療時間に電話をして良いのか、診療時間外に電話をした方が良いのかも、とても悩むといわれます。
もちろん病院によっては、電話での質問を受け付けてない病院もあるでしょうから、断られて、病院につれてくるよう指示されることもあるでしょうが、電話での相談に答えてくれる病院もたくさんあります。
で、一度主治医の先生に、勇気をもって次の2点を聞いてみてはいかがでしょう。
1.電話での質問は受けてもらえるのかどうか
2.電話をするとしたら診療時間が良いのか、それ以外の時間が良いのか
電話での質問に受けてもらえないからといって、それがそく悪い病院と考えるべきではありません。
病院の混雑具合や、病院のシステム上、電話での受け答えに診療が妨げられ、診療中の患者さんに迷惑をかけたくないために、断腸の思いで受け付けてない病院もあるはずです。
また、うちの病院では昼休みなどに手術をしていることが多いので、診療時間外の電話は受けられないことが多いですが、病院によっては診療時間外に電話を貰った方が良いという病院もあるでしょう。
主治医の先生が電話での質問はだめ、というようでしたら、食い下がってその先生を困らせても仕方がないことですので、異常かなと思ったらすぐ連れて行くという方向に変えてあげてください。
また、この時間なら電話での質問も受け付けられるよ、という時間があったら、それを守ってあげましょう。
主治医の先生が電話での質問もオッケーといってくれても、それでも気兼ねをしてかけづらいという方は、次のことに気をつければ、さほど迷惑にならないと思います。
1.電話での質問は短めにして、長時間獣医さんを拘束しない
診療の合間なり、休憩時間なりを裂いていることに変わりはないので、長時間に及びそうな問題だったら、それはやはり病院へ連れて行かなければいけない内容ということです。
2.非常識な時間に電話をかけない
救急疾患などの場合はしょうがないですが、ちょっとした質問を深夜の2時などにかけるとさすがに嫌がられます(というか、私は嫌です)。
真夜中の電話で「1週間前から下痢が・・・」とか言われると、涙が出そうになります。
3.連れて行ける範囲の病院へ電話をかける
時々、真夜中に電話がかかってきて、「それはすぐ診せてもらったほうが良いです、私もすぐ病院へ行きますから、今すぐ連れてきてあげてください」と伝えると
「今鹿児島なんで連れて行けません」とか「今東京なんで連れて行けません」とか言われることがあります。
一度「今香港なんで連れて行けません」といわれて、思いっきり脱力してしまったことがあります。 「すぐ連れてきてください」といわれて、本当に連れて行ける病院でなければ、診療や獣医師の睡眠を妨げるだけの単なる迷惑電話になります。
4.「大丈夫ですか?」とは聞かない
よく「様子を見たほうが良いですか?」とか「明日まで様子をみても大丈夫ですか?」とか電話で聞かれることがあります。
そんなときは素直に「大丈夫かどうかは、診ないとわかりません」と応えています。
安心の言葉を得たい気持ちはわかりますが、獣医師は超能力者ではありません。
電話で答えられる範囲には限界がありますので、それは理解してあげてください。
病院に電話をかけるというのは、意外と勇気がいることなのかもしれません。
でも大事な我が子(我がウサギ)のためを思えば、できないことではないはずです。
電話で解決することはまれかもしれません。
結局病院に連れて行く羽目になるかもしれません。
それでも、迷ったときはまず病院へ電話を、という習慣をつけるのは悪いことではありません。
時々「ペットショップさんに聞いたら、もう少し様子を診てみたら?って言われたんです」とペットショップの責任にする飼い主さんがいらっしゃいます。
ペットショップに電話で病気の質問をすること自体、発想としておかしいです。
ペットショップの店員さんも、困ってしまうでしょう。
人間の赤ちゃんが体調を崩して、床屋さんやスーパーマーケットに電話をする人はいないのです。
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