大学を卒業し、大阪の病院に修行に出てから、なんだかんだともう8年経ちました。
この8年、ただの一度もクリスマスを自宅で楽しく過ごしたことがないというのが、私のジンクスでした。
毎年かわいい彼女とクリスマスを過ごし、自宅に帰らない、なんて自慢ではなく、クリスマスはなぜか自宅に帰れない、というジンクスなのです。
大阪での修行時代は、なぜか毎年クリスマスと、大晦日は当直にあたり、病院に泊り込みで夜間救急対応に明け暮れていました。
紅白歌合戦もほとんど見れません。
夜間診療が一息ついたら、もう行く年来る年の除夜の鐘が流れていて・・・というのがほとんどでした。
こっちで開業したあとも、なぜか毎年クリスマスのは緊急手術が飛び込みます。
やれ骨折だー、やれ腸に異物が詰まったー、やれ帝王切開だー(何で年末に生まれるようにかけるの;;)と、毎年さまざまな手術が飛び込みます。
イオンの(病院がテナントに入っているショッピングセンターなのですが)クリスマス曲をメインとした放送も、途中から蛍の光みたいな悲しげな曲に変わり、23時を過ぎると放送すらとまって、静まり返った手術室で、スタッフとまったくクリスマス感のない夜を過ごします。
そして手術を終え、くたくたになって、車に乗り込むと
「メリークリスマス。本日は12月24日です」
とかいう、冷め切ったお姉さんの声で、カーナビが知らせなくて良いことを知らせます。
あの機能はいらない・・・といつも思うのです。
ところが今年はそのクリスマスに、緊急手術が飛び込んでこなかったのです。
ジンクスの崩壊です。
人並みのクリスマスが私にも8年ぶりにめぐってきたのです。
診療が終わり急いで帰りました。
時間はまだ21時。
外は雪が降っています。
そろそろ食べないと危険な鶏肉が冷蔵庫にあるんで、夕ご飯は鶏肉のトマトソースパスタ。
コタツに入り、テレビをつけると普通にバラエティー番組。
富山は寒く、隙間風すら感じる安アパートに1人、寒さに耐えるためパジャマの上にちゃんちゃんこ。
・・・普通じゃーん。
って言うか、むしろ寂しいじゃーん。
普通に食事を終え、食後の運動をし、普通にお風呂に入り、またテレビをつける。
このあたりから、むしろ夜間救急の電話が来ないかと、若干待っている節のある自分に気づきます(不謹慎な)。
今まで宿直や、夜間手術があったおかげで気づかずにすんでいた(あるいは、あえて気づかないように細心の注意を払っていた)寂しいクリスマスに、とうとう気づいてしまったのです。
かといって、下戸中の下戸なので、シャンパンも飲めません。
ケーキを一人で買いに行く勇気はありません。
獣医学書を開き、黙々と読みながら、そろそろ寝よっかなーと思っていたところに、夜間救急の電話。
膀胱結石でおしっこが出なくなった猫がぐったりしているとのこと。
「ああ、今年も仕事が忙しくて、人並みのクリスマスが送れなかった・・・」
そうあくまで
「仕事のせいで」
と言い聞かせ、車に飛び乗ると
「メリークリスマス。本日は12月25日です」
と冷め切ったお姉さんの声が、カーナビから聞こえてくるのでした。
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