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アレス動物医療センター

かOり カンタービレ

 今の獣医師という職業は自分で言うのもなんですが、なかなかやりがいのある良い仕事だとおもっています。
 このやりがいの中には、人の成長を見るという喜びもあります。
 人というのは短期間にこんなに変わる(成長する)のか、という瞬間を目にすることができるのです。

 今年の春入社した新人看護師かOり(仮名)は、ちょっとぽやーんとした天然娘です。
 よく働くのですが、何もないところでよく転ぶ(つまずく)。
 元気なのですが、週末にはガソリンが切れてきてエクトプラズムのようなものが口から出始める。
 明るくおしゃべりですが、ときどき話がずれている。

 そんな愉快な看護師です。
 うちの看護師1号、2号は就職時からすでにめちゃめちゃ仕事ができるスーパー看護師だったのですが、3号かOりは4,5月くらいはまだちょっと学生気分の抜けないのんびり屋さんという感じでした。

 それでも良く働き、ころころと笑う姿は病院を明るくし、スーパー看護師とまではいかなくとも、普通の看護師としては十分合格点を出せるのですが、それでもスーパー看護師1号、2号を見慣れていると、発展途上という感じは否めませんでした。

 彼女を見ていると「のだめカンタービレ」という漫画の主人公(?)のだめを思い出してしまうのですが(ご存じない方は本屋さんか、コミック喫茶へどうぞ)、時々ちょっとなにを考えているかわからないミステリアスな部分もあります。

 4月からスーパー看護師1号、2号の指導を受け(うちは基本的に看護師さんは看護師さんが育てるという形をとっているので)、徐々に成長し続けていた彼女ですが、この一月でびっくりするほどの成長を遂げました。 
 
 何があったかというと、実習生が来たのです。

 来年看護師さんを二人雇うことになり、8月に入ってから何人かの看護師見習いの方が、実習に来てくれました。

 この看護実習生の到来が、看護師3号をスーパー看護師3号へと変貌させたのです。

 スーパー看護師1号の実習は私しか当時病院にいませんでしたから、私が指導をしましたが、2号の実習指導は1号が、3号の実習指導は2号が受け持ってくれました。
 これは私がそうするように言ったつもりはないのですが、後輩を育成しようという気持ちなのか、雛を育てる母鳥の母性本能なのか自然とそうなっていました。
 
 看護師3号も同じように思ったのか、実習生が来ると、びっくりするほどビシッとし(別にそれまでふにゃふにゃしてたわけではないですが)、びっくりするほどよく働き(別にそれまで手を抜いていたわけではないのですが)、一生懸命実習生を育てようと頑張っているのです。

 あまり転ばなくなりました。
 あまり週末もエクトプラズムが出なくなりました。
 いまも話は時々ずれてます。

 人にものを教える(仕事を言葉にする)というのは意外と難しく、しかしその作業は飛躍的に3号を育てていきました。

 人は人を育てるんだなーと改めて実感しました。
 彼女たちは向上心あふれるまじめな子達なので、おそらく一人でも勝手に日々成長していける強さがあるのでしょうが、しかし刺激しあう人がいるとその成長は明らかです。

 スーパー看護師1号は患者さんへの接客(というのですかね)サービスが非常に優れていましたが、生真面目なスーパー看護師2号が来てからは、2号に良いところを見せようとさらに技術が向上し、院内のディスプレーなどの新しい仕事にも積極的に取り組んでいます。

 スーパー看護師2号は事務仕事や整理整頓などの正確さと、まじめさには他の追随を許さず、しかし病院に来た当初はちょっと緊張気味に患者さんと話していました。
 それが1号の良いところを一生懸命吸収し、この一年ですっかり表情も和らぎ、患者さんと自然に話しています。

 そして今回の3号の成長。
 もう立派なスーパー看護師3号です。

 彼女たちは自分たちが日々成長していることに気づいてないらしく、すごく成長したよねといっても、他の看護師さんたちの成長はよくわかるようですが、自分の成長についてはぜんぜんわからないようです(謙遜でなく)。

 でも案外そんなものなのかもしれませんね。
 私も自分が獣医師として成長しているのかどうか、自分ではやはりよくわかりません(成長してないだけだったりして)。

 うちの看護師さんの友達(こちらも看護師さんだそうです)が、最近働いていた病院を辞めてしまったそうです。
 「1年経っても成長してない」と、すっかり自信をなくしてしまっているそうです。
 うちの看護師さんいわく「まじめな良い子で」との話なので、本当にもったいないです。
 
 きっと自分の成長が自分でわからないだけなのです。
 きっと自分の成長を客観的に指摘してくれる人がまわりにいなかっただけなのです。

 スタッフの成長を見ているのは本当に楽しいのですが、見てるだけではだめで、時には口にしなければいけないのだなと、再認識しました。

 そう思うと、もうほめてくれる人がいなくなった、今のポジションがちょっと寂しいですね(注意:師匠はちゃんとまだ生きています。遠くにいるだけです)。

 今日もスーパー看護師3号は明るく、元気に、面白く働いております。

 かOり カンタービレ(歌うように)


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