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アレス動物医療センター

お子さんに例えてみてください

 大切な大切な家族として共同生活をしている動物たちは、確かに年をとるのは人間より早いのですが、永遠の子供でもあるのです。

 診療をしていて、よく飼い主さんに飼い方の指導や、予防のお話、しつけのお話をします。
 大事な家族という意識がやや誤った方向に進み、ひたすら甘やかすだけに至ってしまう方が結構多いようです。

 たとえばかわいがる方法を若干間違って、太らせすぎてしまうことがあります。
 ポッチャリ系というには無理があるくらいに太らせすぎてしまった動物を前に
 「この子ラビットフード(ドッグフード)以外に、何か食べるものがありますか?」
とたずねると、そのような飼い主さんは決まってこう言います。
 「この子なんでも食べるんです」と。
 
 何でも食べるのではなく、なんでも与えているだけなのに、まるで動物に非があるような表現です。

 「何でも食べるからといって、なんでもあげちゃだめですよ」と続けると
 「でも欲しがるんです」と、やはり動物側に非があるようないいわけ。

 しかしそれは動物に非があるのではなく、飼い主さんに非があるのではないでしょうか。

 欲しがるだけなら、どこのウサギも犬も猫も、皆欲しがります。
 うちの実家のコーギーだって、なんでも欲しがります。

 ただ、欲しがったからといって、そこで与えるか、どうかでその動物たちの運命が変わるのではないでしょうか。

 あるいはきちんとしつけもせず、一緒に同じ布団で寝て、飼い主さんよりも地位が高くなってしまった動物が来ます。
 診察しようとすると噛みにきて、きちんとした診察もできない。

 「しつけも飼い主さんの責任のうち。怒るべきときには怒る。ケージに入れるべきときには入れる。褒めることももちろん必要ですが、時には叱ってあげるのも愛情ですよ。」
 そうお説教すると、
「でもかわいそうで・・・」とのこと。

 この手の飼い主さんたちを説得するのは、並大抵の努力ではすみません。
 で、いろいろ説得の仕方を変えてみたのですが、一番効果的なのが 人間のお子さんにたとえて説明することのようです。

 たとえば本来1.5kgくらいがベストであるべきうさぎさんが、2.5kgになってしまったとします。
 とすると、本来その子が45kgの人間のお子さんだとすると(30倍として)、今のそのうさぎさんは75kgになってしまっているということです。
 ということは、30kgオーバーのかなりの肥満児、ということになります。
 ちなみに大人の体重で表現すると、本来60kgの大人の方が、100kgになってしまっているという計算になります。

 その現実を認識していただいた上で、次のようにお話します。
 
 たとえばデパートのおやつ売り場で、ぶくぶくに太った小学生がお母さんと一緒におやつを物色しているとします。
 「ママ、チョコレート欲しいー」なんて寝ぼけたことを言ったとして、そこでチョコレートを買ってあげるのは、はたして母親の愛情なのでしょうか。

 子供がおやつを欲しがるのは当たり前。
 しかし子供は自分がおやつの食べすぎで太ってしまうと、健康上良くないとは考えていません。
 ただ欲求の赴くまま欲しいから「欲しい」といっているだけなのです。
 それはどこの子供も同じはず。

 それに対して、これ以上のおやつはこの子のためにならない、と判断し
「もうすぐ晩御飯なんだから、我慢しなさい」と心を鬼にして子供の欲求を戒めるのが、本当に愛情ではないでしょうか。

 動物に対する愛情もそうであるべきかもしれません。

 あるいは電車の中で土足で椅子に立って、騒ぎまくっている子供がいるとします。
 お母さんは横で本でも読みながら、子供に注意をしようとしません。
 叱るのがかわいそうと、しつけを放棄するというのは、それと同じなのではないでしょうか。

 そのような現場に実際居合わせると「あのお母さん、子供があんなに騒いでいるのに、注意ひとつもしないで・・・」と腹を立てる方が多いでしょう。
 その感覚を、ご自身の大事なペットにも向けてあげて欲しいのです。

 年はとっても、動物たちの心は少年少女のまま。
 物事の善悪、健康に関する良し悪しは飼い主さんが判断し、フォローしてあげなければ、一番不幸になってしまうのは動物たち自身です。
 
 「あの子賢い子ねー」、「あの子スレンダーでかっこいい子ねー」と、羨望のまなざしを集めるような、カリスマペットを目指してあげてください(今時「カリスマ」って、という気もしますが)。

 大阪で修行していたころ、病院で飼っていたレトリバーを公園に連れて行くと、同様にレトリバーを連れた大阪のおばちゃんたちが群れをなして集まってきて、
 「あんた、そりゃ痩せすぎ。きっと病気かなんかよ。すぐ病院に行ったほうが良いんじゃない?」
 なんて、アドバイスしてくれました。

 「こっちが痩せすぎなんじゃなくて、そっちが太りすぎなんだよ」と内心思いながらも、おばちゃんの集団に恐れをなして、公園を立ち去ることもしばしばでした。

 まかり間違っても
 「お宅のうさぎさん痩せすぎじゃないの?」と、自分のペットの肥満に目が慣れて、知ったかぶったことを言わないようにしましょう。

 分かっている人が聞くと、とても恥ずかしいです。



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