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アレス動物医療センター

今年の目標


 年が明け、今年の目標を決めました。
 今年の目標は
「何で、もうちょっと早く連れてきてあげなかったの」と言わない。
 です。

 診療していると、ガリガリに痩せきって、瀕死の状態の動物が連れてこられることがあります。
 「いつから食欲がなくなってきましたか?」と聞くと
 「まったく食べなくなったのは3日前からです」
 「まったく食べなくなったのは3日前として、食欲が落ちてきたなーと思うのはいつからですか?」と続けると
 「それはもう一月か二月前くらいでしょうか・・・、もともとこの子、あまり食べないんですよ」
 と飼い主さんは首をかしげます。
 そんな時つい
 「何で、もうちょっと早く連れてきてあげなかったの」と口から出てしまうことがあります。

 またあるときは、夜中の2時に電話がかかってきて
 「今から診てもらえますか?」と緊急の問い合わせ
 「それはかまいませんが、いつから調子が悪いのですか?」と聞くと
 「3日くらい前から、足を痛がって・・・」とばつが悪そうに言葉を濁す。
 今日も、昨日も、一昨日もずっと病院は開いていたのに、なんで夜中の2時に!と と口から出てしまうことがあります。 

 この「何で、もうちょっと早く連れてきてあげなかったの」という言葉は、言うたびに後悔してしまいます。
 いまさら言っても時間が戻るわけでもないですし、飼い主さんの心を傷つけるなり、ムッとさせるなりするだけですし、言ってもしょうがないのにと、後からひどく自己嫌悪に陥ります。

 以前どこかのひとりごとでも書きましたが、基本的には飼い主さんを叱らないようにしようと、常に気をつけています。
 叱って飼い主さんを萎縮させてしまっても、病院への恐怖心が増してしまい、あまり飼い主さんや動物のためになるとは思えません。

 飼い主さんを病院嫌いにさせてしまうと、病院の敷居が高くなってしまい、動物の調子が落ちてしまっても病院へ来るのが遅れてしまうかもしれません。
 飼い主さんの病院嫌いは、早期発見早期治療が重要な動物にとっても不幸なことだと思うのです。
 気軽に何でも質問できて、ちょっとした用でも病院に入ってこれるような、そんな動物病院が理想なのです(わたしにとっては)。

 しかし、まだまだ人間ができておらず、ついお説教が過ぎてしまったり、「何で、もうちょっと早く連れてきてあげなかったの」と口にしてしまうときがあるのです。

 もう一日早く来ていれば、助かったかもとか、
 1週間前に来ていれば、こんなに大きな病気にならなかったかもとか、
いまさら言ってもしょうがない「たら」「れば」を想像してしまうと、どうしてもカッと来てしまうことがあるのです。
 で、青いなーと後悔してしまいます。

 同じ言うにしても
 「今度から、もうちょっと早めに連れてきてあげてくださいね」とか言えば、角も立たないのに。
 カーッと来てると、その言葉が出てこなかったりします。

 で、今年の目標は
「何で、もうちょっと早く連れてきてあげなかったの」と言わない。
なのです。

 とか言いながらも、今年に入って、すでに何回か言っちゃったような気がします。
 
 今までも、このセリフが出たときは、よほど夜間診療が続いて体力的にいっぱいいっぱいのときか、あまりに常識はずれなくらい連れてくるのが遅かったときかのどちらかだったと思うのですが。
 せめて前者だけはなくし、夜中の電話も目にクマを作りながらでも「すぐに連れてきてあげてください」とにっこり言えるようになりたいです。

 できれば
 「飼い主さんがこんなに早く連れてきてくれたので、こんなに早く治りましたね」なんていえると、もっと良いですよね。

 ホームページの決まり文句ですが、
 行動が遅れて後で後悔するより、早めに行動して笑い話で済ませたほうが良いのかもしれませんね。


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