もうすぐ年も明け、また新しい年を迎えようとしています。
来年の4月から、うちの病院で働いてくれる予定の獣医さんと、看護師さんも決まり、春からは獣医師3人、看護師3人の中所帯となります。
二人とも、実習のときからやる気がみなぎり、一生懸命さが微笑ましいくらいで、春が待ち遠しいのです。
・・・が、ちょっと心配なこともあります。
それは病院の狭さです。
非常に生々しい話ですが、うちはショッピングモールにテナントとして入っており、その坪数は20坪。
大阪で2ヶ月開業立ち上げに携わった病院は13坪でしたから、それに比べれば大きいといえば大きいのですが、動物病院としては、比較的小さいほうでしょう。
開業当初は看護師さんもおらず、私一人でこの20坪を思いのままに使っていたわけで、昼寝をするスペースもあれば、ロシア民謡を歌いながらコサックダンスを踊れるくらいのスペースもありました。
それがいつの間にか人が増え、次第にコサックダンスどころか、タップダンスすら踊るスペースがなくなってしまいました。
マンパワーというのは非常にすばらしいもので、スーパー看護師1号が来てからは私の負担は半分以下に、スーパー看護師2号、スーパー獣医師1号が来てくれるようになってからは、私の負担は4分の1どころか、8分の1くらいまで減ってしまいました(ということは、おそらくスタッフ各々の負担は4分の1以上ということなのでしょう)。
来院数は昨年に比べ、2倍に増えているというのに、私の負担は減る一方。
この幸せ、一度知ったら、もう二度と一人ぼっちで開業していたあのころには、戻ることはできません。
一人で掃除、一人で消毒、一人で検査、一人で治療、一人で手術、一人で会計、そんな一人ぼっちの病院にはもう戻れるはずがありません。
しかし病院のスペースは成長しないのです(当たり前)。
開業から二年、荷物もとても増えてしまいました。
エコー、血球計算機、生化学検査機器、眼科検査器具、電気メス、ガス滅菌器、超音波スケーラー、ネブライザー・・・。
薬や医療食も年々改良され、病院内でひたすら増え続け、うちのアパートは人間の食べ物ではなく動物たちの食事で台所が占領され、病院の倉庫の様になってきてしまいました。
夜中にのどが渇いても、冷蔵庫にたどり着くのが困難なくらいです。
必死に収納スペースのやりくりをしてきましたが、もう限界です。
獣医学書を開くかたわら、セシールの[すてきに収納]を熟読する毎日ですが、もうこれ以上は物を増やすことは困難でしょう。
開業当初のすっきりさっぱりの病院は、もう物置のようになってしまっています。
そんなところに6人のスタッフ。
単純計算で一人あたり3.3坪。
・・・無理?
無理でもやるのです。
患者さんがたくさん来てくれるのは非常にありがたいのですが、私一人で一日に診察できる件数には限りがあります。
おざなりな診察をすれば、一日70件くらいは診れる気もするのですが、自分の納得のいく診察をしようと思うと、おそらく一日35件くらいまでが限界ではないかと思っています。
また自分ひとりだけで診察していると、診療の得手不得手が偏ってしまい、治療が行き届かない可能性も出てきてしまいます。
一人で診ていると気づかなかった病気や発想を、別の獣医師が別の視点で観察したときに、新たに見つけることができるかもしれません。
私はカルテをしっかり書き込んで、スタッフ同士の連絡がきちんと行き届いていれば、一人の獣医師が一人の患者さんを担当し続けるよりも、複数の獣医師で一人の患者さんを診察したほうが、誤診が減るのではないかと思っているのです。
「ぷちセカンドオピニオン」というわけではないのですが、同じ病院内でも、時には違った「目」で見る必要性を感じるのです。
もちろん、ずっとその子を診つづけて来て、しっかりと信頼関係ができた担当の(というより、メインで診る)獣医師がいたほうが良いと思うのですが、診療がマンネリ化せず、あるいは毎回診ているがために気づきにくくなっている変化を、指摘する監査システムとして、同病院にも各々得意分野の異なった獣医師がいても良いのではないかと思うのです。
だから、ちょっと無理そうでも、可能な限り(税理士さんが許してくれる限り)スタッフを増やしていきたいのです。
スタッフが増えればまた、その人が立派な獣医師や看護師に育っていくという、非常に興味深い成長の過程を、間近に見ることもできます。
これはまた、本当に見ていて楽しいのです。
来年は6人で一人あたり3.3坪。
再来年には7人か8人で、一人あたり2.5坪。
なーんだ、3.3坪も2.5坪も大差ないじゃん。
・・・なんて強がって見せる31歳の獣医師でした。
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