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アレス動物医療センター

カルテの開示

 前回のひとりごとでカルテの開示(コピー)について書いたら、意外と反響が大きかったので、ちょっと今回はそのお話をと思います。

 本当かどうかは知りませんが、昔は人間のお医者さんも飼い主さんにカルテの内容がわからないよう、ドイツ語でカルテを書いたなどという噂がありますが(ほんとはどうなんでしょうね)、意外とカルテの内容を開示することに抵抗がある先生は多いのかもしれません。

 なぜカルテの開示に抵抗を感じる先生がいるのかは、ちょっとよくわかりませんが、私が修行していた病院も、診断書などの発行は受け付けていましたが、カルテ自身のコピーは断っていました。
 その理由は、病院の料金設定なりを他の病院などに知られたくない、というようなものだったと思うのですが、他にも病院における薬の調合なりの技術を知られたくないとか、万一医療ミスがあったときにその証拠となってしまうとか、病院によって理由はさまざまなのかもしれません。

 これは考え方、価値観によりけりで、カルテの開示をしないのが間違っているとか、どうとかというものではないと思うのですが、うちの病院ではカルテの開示は積極的に行うことにしています。
 
 いつだったかテレビを見ていたら、人間の大きい病院で、電子カルテが完全に徹底されているところがあり、患者さんはインターネットでパスワードを入力することにより自分のカルテをいつでも見ることができるという話がありました(インターネットじゃなくて、病院の待合室のパソコンだったかな?)。
 
 それを見たときに、「あっ、あれいいなー!!」と思ったのです。
 
 で、開業のときにそんな感じの電子カルテにできるかと調べてみたのですが、なかなかまだ動物病院向けの電子カルテで、ペーパーレスにまでできるもの(パソコン入力のみで、紙のカルテに記入する必要のないほどのもの)というのはないらしく、人間のお医者さん用のものを改良して作ると、うん百万では済まなくなるような話を聞いて挫折してしまいました。

 そこで、せめて飼い主さんが希望されたときや、あるいは引越しなり、他の病院への転院なりで、うちの病院を出て行かれるときは、お出しするようにしてます。

 カルテの開示にはデメリットもあるかと思うのですが、それでもやはりカルテの開示を希望される患者さんもいますので、要望があり、かつ動物の幸せにつながることと思い、続けています。

 カルテの開示は、もし医療ミスが万一あったときには、すぐにそれが明るみに出てしまうでしょう。
 時代遅れの古い治療をしていると、自分の不勉強が他の先生にばれてしまうでしょう。
 あるいは何年もかけて培った薬の処方技術や治療技術が他の先生にあっさり伝わってしまうということもあるでしょう。
 処方している薬やワクチン、手術などの料金が他の先生にばれてしまうということもあるでしょう。
 他の病院の先生や、患者さんが見ても内容がわかるように、細かく書き込まなければいけないという手間も増えてしまうでしょう。
 しかしそれで良いと思うのです。

 医療ミスは許されない。
 万一起こしてしまったときは、言い逃れができない。
 意味のない治療や不適切な診療価格があってはいけない。
 そういうプレッシャーは、どんなに忙しくても、飼い主さんにあらゆる治療に関するリスクを十分説明する必要性を自分に負わせます。
 常に勉強を怠らないよう、そして自分にできる最大限の検査、治療を常に目指すよう獣医師をそだてます。
 無駄のない治療と、それに見合った診療費の請求を心がけるようにもなります。
 細かく書き込んだカルテは、新人の先生を育てるためにも役立ちます。

 それって、すごく大きなメリットだと思うのです。
 
 でも、カルテの開示を要求し、主治医の先生がそれを拒んでも、悪し様には言わないでください。 
 病院には病院の都合があるのです。

 カルテの開示ができるくらいカルテを書き込むということは、非常に大きな労力を伴います。
 汚い字で書きなぐっている私ですら、一日の来院数が30件を越えてくると、夜中の11時を回っても、まだカルテが書き終わらないのです。
 中には一日100件を越えるような、すさまじい病院もあるのです。
 そんな先生が、全部カルテを細かく書ききっていたら、間違いなく過労死するでしょう。
 そんな先生方に無理を言ってはいけません。

 でもいつか、何十年先かわかりませんが、あらゆる病院が電子カルテになって、病院同士のカルテの開示や、飼い主さんへのカルテの開示がスムーズにできるようになり、より病院への行き来が自由にできる日が来ると、本当に良いんですけどね。

 そうなれば、私の汚く、筆圧の弱い文字で書きなぐられたカルテを、飼い主さんや他の病院の先生にさらさなくてすむようになるのですから。


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