まだまだ世の中には治せない病気(不治の病)がありますが、必ずしも医学的な理由だけとは限らないのです。
先日骨折のコが病院に来ました。
手術か、それが(金銭的に無理なら)せめてギブスを、というお話をしたのですが、飼い主さんには治療の許可をいただくことが出来ませんでした。
飼い主さん曰く「買ってきたコじゃなくて、元々拾ってきたコだから、そんなつもりで飼ったわけではないので、予防とかもしたことがないんです」とのことでした。
生まれてまだ1年ちょっとくらいしか経っていないコでしたが、そのこの治療はそこで終わってしまいました。
おそらく一生にわたって、元のように走り回ることは出来ないのかも、と思うと我が身のふがいなさに腹立たしくさえ思えました。
そんな話が本当に!?ここのホームページに来られる方は思われるかもしれませんが、けして珍しい話ではないのです。
ウサギに限らず、犬でも猫でもハムスターでも結構あるお話です。
獣医学はまだまだ無力で(というか私自身が無力で)、助けてあげられないこともたくさんあります。
治療が困難な伝染病、不正咬合、末期の腫瘍などなど、力及ばず苦い思いをすることが多いです。
断腸の思いで患者さんを見送ることも多々あります。
喜びの多い仕事である反面、つらい思いも多いのかもしれません(これは獣医師に限らずでしょうが)。
ただ、どんなに力尽くしても治せない病気はまだ心の整理がつくのですが、治せる可能性のある病気が目前にあって、それが治せないとき、どうしても自分を納得させることが出来ないのです。
たとえば手術の危険性がべらぼうに高く、手術をしても再発をして、結局寿命を延ばせないかも、というような病気の子が来たときに、飼い主さんがとことんまでの治療を求められるか、残りの人生をちょっとでも苦痛が少なくメスを入れずに生かせてやりたいと希望されるか、それは飼い主さんの価値観の違いであり、とことんやるのが間違いとも、手術をしないのが間違いとも言えないとは思っております。
うさぎさんがどちらを望んでいるか私たちが耳に出来ない以上、飼い主さんの価値感を尊重し、獣医師の価値感を押しつけないようにと心がけております。
しかし、金銭的な理由で治療を拒まれると、本当にやりきれないのです。
当然飼い主さんの経済状況や、やむにやまれぬ事情もあるでしょう。
飼い主さんだって出来ることなら治療してあげたいと思っているのに出来ないこともある、それも頭では理解しているのです。
わかってはいるのですが、納得できないのです。
私は動物を飼うという行為は、その子の一生を背負う行為と思っております。
動物だって風邪をひきます。
年だってとります。
人間よりも早く寿命が来る生き物ですから、いつまでも小さい頃のかわいさだけではなく、だんだん老けてきて、いろんな病気がついてくるでしょう。
心不全になって、生涯薬が必要になるかもしれません
腎不全になって、点滴に通うようになるかもしれません。
骨折や脱臼をすることもあるでしょう。
癌になって手術が必要になることもあるでしょう。
もしかしたら痴呆症になり、一晩中走り回ったり、いろんなところにおしっこをして回るようになるかもしれません。
でも、動物を飼うというのはそれらの病気もひっくるめて、「飼う」と言うことだと思っているのです。
お金を出して動物を飼うにしろ、捨てられていた子を拾うにしろ、飼う前に一瞬でも良いので考えて欲しいのです。
「この子はいずれ年をとる。かわいさが消え、大病を患う日が来るかもしれない、そのとき最後まで責任を全うできるだろうか」と。
動物を飼うと言うことは、とてつもなく大きな責任を負うと言うことだと思います。
動物は自分で働いて食事代を稼いだりしません。
自分で治療費を払うはずもなく、自分で病院に通うこともありません。
つまり動物を飼うと言うときは、飼い主さんがその動物のために食費を稼ぎ、治療費を稼ぎ、病院に付き添ってあげる、ということではないでしょうか。
乱暴な言い方かもしれませんが、その覚悟がないのなら、飼うべきではないのかもしれません。
とはいえ、これももしかしたら、私の勝手な独りよがりの価値感なのかもしれません。
これを飼い主さんに押しつけること自体、価値感の押し売りになってしまうのかもしれません。
一生の病気をケアする覚悟がないから、じゃあ捨てられている動物をほっとけばいいのか、とお叱りを受けるかもしれません。
そもそも「そんなに言うなら、ただで治療をしたらいいじゃないか」と言われるかもしれません(一応書いておきますが、無理です)。
まあ、このひとりごとはちょっとした愚痴のようなものです。
飼い主さんを治療する方向に勇気づけられなかった、ふがいなさを解消するための愚痴です。
アパートに帰っても嫁さんどころか、金魚一匹いないので、ホームページで愚痴ってみました。
・・・ちょっとすっきりしました。
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