根っからの調子者なのか、末っ子として甘やかされて育ったせいか、褒めて育てる両親の教育方針のせいか、私はきわめておだてに弱いです。
人間には褒められて、調子に乗って、どこまでもがんばってしまうタイプの人間と、しかられて「こんちくしょー!」とそれをエネルギーに変えてがんばれるタイプの人間といると思うのですが、私は間違いなく前者です。
とにかく褒められる、感謝される、喜ばれるのが大好きで、しかられるとかなりへこんでしまう人間です。
大学時代は友人達に試験前にノートのコピーや試験問題のまとめを求められると、なんだか頼られているような気がして、うれしくてがんばって資料を作ったり(単に利用されているだけ)。
気がつくとテスト対策よりも、試験対策の資料作りに熱中する始末(本末転倒)。
別にその資料のおかげで友人が試験に通ったわけでもないのでしょうが、それでも感謝の言葉を貰うとめちゃめちゃうれしかったり、友人の成績に一喜一憂有したり、いまにして思うと、かなり間抜けな話です。
小さい頃も、テストの点数などで褒められると、それがうれしくて、無意味にその分野に熱中したりという、非常にご褒美に弱い犬的な人間でした。
昔からテレビのヒーロー、ヒロインはたたかれて育つ人達ばかりでしたから(エースをねらえとか)、私はこの体質(性質?)を、非常に軟弱な体質のような気がしてあまり好きではないのですが、まあこればかりはいまさら変えようがありません。。
この性質でいつか、悪徳商法か何かに引っかかってしまうのではと危惧しているのですが、これもまあしょうがないでしょう。
この性格がよいかどうかは別として、獣医師としてはまあまあ向いている性格ではないかと思うのです。
・・・そう思いこもうとしているだけかもしれませんが。
いろいろな仕事はあるでしょうが、患者さん(お客さん)からこれほどダイレクトに感謝の言葉を言ってもらえる仕事はあまりないでしょう。
たとえば農家の人が美味しい野菜を作り、これをどこかの誰かが食べてそのおいしさに幸せを感じている、という思いを胸に、仕事に打ち込める。
これはすごく尊いことであり、すばらしいことだと思うのです。
獣医師にせよ、農業に打ち込んでる方にせよ、魚屋さんにせよ、スポーツ選手にせよ、みな当然尊く、どこかで誰かに喜びなり、感動なりを与えることにかわりはないとは思うのです。
ただ、私のような想像力の貧困で、かつおだてに弱い人間は、「ありがとうございます」と面と向かっていわれると、本当にこの上もない喜びを感じられるのです。
初めて来院したときは調子が悪そうにしていた子達が、来るたびに元気になっていくのを見るのも当然うれしくてしかたがないのですが、それを見た飼い主さんが喜びや感謝の言葉を言ってくれるとさらに輪をかけてうれしくなるのです。
もっと元気にしてあげよう、もっと患者さんと飼い主さんの喜ぶ顔を見たい、とない知恵を絞ってよりよい治療を考えるのです。
体力的にかなりつらくても、なかなか夜間救急診療がやめられないのは、その辺に理由があるのかもしれません。
夜中に電話で呼び出されて病院に行き診療をすると、かなりの確率で感謝の言葉を聞くことが出来るのです。
当然、病気で苦しんでいる動物達が心配でというのが一番大きい理由でしょうが、感謝の言葉を聞くと、眠気も疲れも忘れることが出来るというのも事実です。
まあ、いずれ体力的に無理な時期が来てしまうのかもしれませんが、しばらくは止められそうにありません。
感謝の言葉を言ってもらえないから、仕事の手を抜くというわけではないのですが、獣医師も人間ですので、やはりうれしいと通常以上の力を発揮できることがありますし、一生懸命治療していても疑いの目で見られるとこの上もなく力が萎えていくのです。
このホームページがなんだかんだと止められずに、ずるずると3年目に近づいているのも、そのあたりに理由があるのでしょう。
いつもお世話になっている担当の獣医さんに、試しに感謝の言葉を言ってみてあげてください。
顔に出さなくても、悪い気がする獣医などいないはずです。
私のような、たいして頭がいいわけでも、めちゃめちゃ器用なわけでも、莫大な資産があるわけでもない人間が、この仕事を続けていられるのは、ひとえにこの性格によるものと言えるでしょう。
おだてに弱いというのが人として優れているかどうかは別として、獣医師に向いているちょっとした特性なのかもしれません。
・・・でもきっと、悪徳商法か何かに、いつか引っかかるような気がするのですが。
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