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アレス動物医療センター

過去の栄光

2026/8/12



   人間だれしも過去の栄光にとらわれて、判断を誤ることはあるものです。
 あの時こうしたらうまくいった。
 今まで車で事故を起こしたことはないから。
 富山県は立山さんに守られているから、大きな災害は来ない。
 よくよく考えると大した根拠でもないのでしょうが、過去の経験は人の判断に少なからず影響を与えます。
 もちろんそれは命にかかわることであっても。

 今年もまた暑い夏がやってきました。
 例年通りうさぎの食欲不振が大挙してやってきています。
 うさぎにとってまさに鬼門のシーズンです。
 
 特に中高齢のうさぎさんは体調不良を起こしやすいです。
 まあ人間でも熱中症で命にかかわる事態になるのは年配の方が多いのかもしれません。
 自分の体もそうなのかもしれませんが、年々暑さに対して鈍感になっていくのに、年々代謝が落ちて暑さに弱くなっていく。
 本人的には耐えられる暑さと思っても、気がつくと限界を超えていたりします。
 なんだかんだ言って、若いうちは結構耐えるものです。

 今の時期、食欲不振のうさぎさんがやってくると、診察室でまず聞くことは「お部屋の温度と湿度は昼と夜、どうなってます?」というやり取りです。
 ここで「エアコンの設定温度は25度ですが、実際の温度はわかりません」とか「湿度はわかりません」と帰ってきたら、もう危ういなぁと思うわけです。
 さらに言うと「1週間前から、少しずつ食欲が落ちてきたかも…」みたいなのんきなことを言う飼い主さんの場合は、もうピンチです(うさぎが)。
 「夜は結構涼しいんで、窓を開けて、エアコンなしです」とか言い出したら、もうグーパンです。

「設定温度をあと〇〇度下げてください」とか「もっと早く連れてきてあげないとだめですよ」みたいなことを伝えると、飼い主さんは言うわけです。
「でも去年の夏は大丈夫だった」と。
 あるいは「毎年夏になるとちょっと食欲落ちるけど、すぐに元に戻るんです」と。

 で、僕は思うわけです。
『ちゃうねん』と。
『去年のこのうさぎさんは今より(人間年齢でいうと)6歳若かっただけで、去年と条件は違うねん』と。
『人間だって64歳で耐えられる環境も、70歳になれば大丈夫とは限らんねん。』と。

 それを、一応説明してみるのですが、どうも飼い主さんはピンと来ない顔をするのです。
 そもそもその説明でピンとこない飼い主さんが、そのような雑な飼い方をしてしまうのかもしれません。

 以前動かなくなったパソコンを、コンセント引っこ抜いて再起動したら、普通に動き出したんです。と言っているようなものです。
 コンセントの抜き差しで直ることはあるかもしれませんが、いきなりコンセントを引き抜いて壊れることもあるはずです。
 何よりうさぎは家電ではないです。


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