ときどき診察室にうさぎの飼い方の本や、雑誌、インターネットのコピーを持ってくる人がいます。で、病気の説明や飼い方の説明などをしていると、ときどきこの雑誌を開いて「でも、先生、ここにはこう書いてあるんです」というふうに、横槍を入れるというわけです。
獣医師に質問や疑問をぶつけるというのは別に悪いことでも何でもありません。分からないことは聞くべきです。
ただ何が言いたいかといいますと、雑誌などの情報を鵜呑みにするのはどうかということです。
まだ歴史の浅いうさぎの獣医学においては、まだまだわからないことはたくさんあり、その知識は日々更新され、まさに日進月歩の世界です。で、その最新の知識というのは主に(というかほぼすべて)アメリカなどの海外から入ってきます。
アメリカで新しい情報が報告されてから、それがアメリカで浸透し、英文のまま日本に持ち込まれるのに約1、2年はかかります(これだけインターネットなりが発達しても)。
それから、日本での出版許可がおりて、日本語に翻訳され、出版されるのにまた2年ほどかかるのです。
これが日本の獣医師に浸透するのにまた1年、これを知った獣医師が雑誌社などに最新の情報として伝え、雑誌などの形として飼い主さんたちの手に届くのにまた1年。
こうなると最新の情報が雑誌なりの形になるには3、4年の月日が経っており、その間にまたアメリカの獣医学は、ずっと先へと進んでいるということになるわけです。
勉強熱心な獣医師が、アメリカの専門医が参加するセミナーに参加したり、英文を直接読んだりすれば、アメリカとの情報の差はかなり少なくなります。ただそうすると、勉強熱心な獣医師と雑誌などの差が広がってきます。
私がこうやってホームページを毎日更新していても、それでも最新の獣医学からは何年も遅れているのです。
このアメリカとの差は、日本でのうさぎの地位の向上と、アメリカのような専門医制度(人間のお医者さんのように、内科、外科、泌尿器科というふうに、完全に分業化される制度)ができ、日がな1日うさぎのことばかり考えていられるような、研究機関なり、大学の研究室なりが発達しないと、まだまだ埋まることはないでしょう。
これは、当面しかたのないことと受け止めなければなりません。
だからといって、雑誌や本を読んでうさぎの勉強をすることが、無駄なことかというと、そんなことはぜんぜんありません。
情報が日々更新されていくなら、ひたすらそれにくらいついて行くまでです。
少なくとも獣医師は、この情報の更新を喜び、受け入れつづけなければいけません。
つまり、最新の情報が飼い主さんの手に届くのに時間がかかることも、別に問題ない(というかしょうがない)ことであり、これはいいのですが。お手元にある雑誌なり、このホームページなり、本なり、それを信じすぎないでくださいということです。
ウサギを一生懸命診療している先生は、必ずより最先端の情報へ近づこうと、日々精進しています。
雑誌や本、インターネットなどよりは信用しても良いのではないでしょうか。
なにしろ、治療というのは飼い主さんと獣医師の信頼関係があって、はじめて成り立つものなのですから。
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