世の中にはたくさんの格言がありますが、うさぎ診療の分野にも一つ大事な格言があります。
それは「ネザーランドは預かるな」です。
将棋の分野だとさまざまな格言がありますが「桂馬の高飛び歩の餌食」とか「歩のない将棋は負け将棋」なんて言葉もあります。
投資の世界だと「落ちるナイフはつかむな」とか「下手なナンピン スカンピン」なんて言葉もあります。
漫画の世界だと「集〇社の漫画は最終話を見るまでは買うな」という格言があるかどうかは知りません(少なくとも僕はそう思っています)。
まあそんな感じで、それぞれの分野にそれぞれの深い意味を持った格言があるわけですが、うさぎ診療の分野では先ほどの「ネザーランドは預かるな」というのが一つの格言だと思っています。
誰が言っていたのか覚えていませんが、確かにその通りと思うわけです。
犬は入院させても9割がたの子はご飯を食べてくれます。
これに対して猫は6〜7割くらいの子が食べてくれて、逆に言えば3〜4割の猫は別に体調が悪いわけでもないのに病院だとご飯を食べてくれません。
おそらく病院にいるストレスなのか、他の動物がいるストレスなのか、とにかく猫は安易に預かれないのです。
そしてうさぎはこれのさらにシビアな感じです。
かなりの率で入院すると途端に食べなくなります。
特にネザーランドドワーフはその典型で、入院させると食べなくなってしまう子がめちゃめちゃ多いです。
ネザーランドはあのかわいい見た目とは裏腹に、自宅ではジャ〇アンな子が多く、そのくせ繊細で、内弁慶、自分のテリトリーから出てしまうと途端にストレスをため込んでしまうタイプの子が多いのです。
その性質が「ネザーランドドワーフを入院させるとまったく食べなくなってしまう」という厄介な問題を起こすのです。
もちろん例外の子もいますが、多くのネザーさんが入院すると食べなくなってしまいます。
入院させると食べなくなるというのはかなり厄介な問題です。
本当は入院させれば毎日点滴をして(場合によっては静脈点滴もできて)、流動食の強制給餌も手慣れたスタッフが誤嚥させることなく十分な量、十分な回数行うことができます。
流動食の量や点滴の章も、その日の状態、体重などから適切に判断でき、ベストの治療ができます。
これが入院させると逆に食べなくなってしまうとなると、どうしても飼い主さんに毎日点滴に通ってもらわなければいけなくなってしまいますし、強制給餌に不慣れな飼い主さんに頑張って1日何回も実施してもらう必要があります。
飼い主さんと電話でやり取りをして流動食を決めたり、飼い主さんの技量によってはそもそも思うような量の流動食を与えられない場合もあります。
まあ、こればかりはしょうがないので、それはその条件で戦うしかないのですが、どうしても犬や猫よりも戦いづらくなってしまうことは否めません。
それにその内弁慶で、飼い主さんにだけかわいい部分を見せるツンデレなところが魅力ともいえるのです。
うさぎに対して「飼っていても本当に懐くの?」なんて言う人がいますが、少なくともネザーランドドワーフは懐いてくれます。
病院では食べないけど自宅ではモリモリ食べる。
それが人に対してなのか、家に対してなのかはわかりませんが、ちゃんとその区別はできているということなのだと思います。
「ネザーランドは預かるな」という格言はその愛すべきキャラクターをあらわしているのかもしれません。
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