最近病院に訪れる患者さんの数はどんどん増えていくのに、カルテの数はそれほど増えていかないという現象をみます。
これは何かというと、おそらく飼い主さん一人が複数の動物を飼うシチュエーションが増えているということだと思います。
いわゆる多頭飼育というやつです。
いいか悪いかは別として、そういうブームなのだと思います。
多頭飼育という言葉を聞くと、多頭飼育崩壊を連想してしまい、あまり良いイメージに聞こえないかもしれませんが、一人の人がうさぎ2匹とか、猫3匹とか飼う分にはさほど問題はないと思います。
避妊去勢せずに何十匹と増え続けるという多頭飼育崩壊とは分けて考える必要があります。
ちなみに僕も輸血犬のハニワさん(ラブラドールレトリバー)と輸血猫のしげるさん(黒猫雑種)の2匹を飼っているので、多頭飼育です。
ユーチューブなどを見ていると、犬や猫、うさぎがくんずほぐれつ仲良さそうに過ごす動画があふれており、それはもう動物好きにはたまらない映像です。
そういう私も子供のころはムツゴロウさんを心のバイブルに育った世代ですから、「将来は獣医師になって、実家のすぐそばに小さい家を建て、そこでたくさんの犬や猫、うさぎ、小鳥に囲まれて過ごしたい」というメルヘンなことを本気で考えていた小学生でしたから、その気持ちはよくわかります。
ただたくさんの動物を飼うことの大変さもよくよく考えたうえで、というのが前提になります。
特にうさぎなどはいったん食欲が落ちると、24時間以内に病院に飛び込まないと重病に転げ落ちてしまうことが多々あります。
食欲が落ちた状態で数日放置してから動物病院に行くと、何週間も(場合によっては何カ月も)病院に毎日通院する羽目になります。
場合によっては3時間ごとに流動食を1日5回(しかも一回の流動食に大人二人係で30分かけて)与えてもらう、という治療が必要になることもあります。
そんな時に、「うちは一人暮らしだから」とか「仕事が休めない」とか「そんなにお金が続かない」とかそんな言い訳は通りません。
僕からするとうさぎを1匹飼うのはとてもとても大変なことです。
ましてやそれが2匹、3匹と増えると当然その苦労と手間とお金は2〜3倍です。
それを乗り越えられる人は全然かまわないと思うのですが、動物を飼う前に本当に自分にその能力があるかを考える必要があると思うのです。
「4匹も飼っているんで、この子にばっかり時間をかけてられない」とか「お金をかけてられない」とか言われても、【知らんがな】です。
たくさんの動物に囲まれる幸せを享受するためには、それに伴った責任が伴うのだと思います。
当院にAさんという犬好きの飼い主さんがいらっしゃいます。
現在ダルメシアン、フレンチブル、ダックスフンドの3匹を飼ってらっしゃいますが、歴代の子たちを含めても常時3匹以上飼育されています。
一見頑丈そうな3犬種ですが、実は結構病気がちな犬種で、常時誰かしらが何かしらの治療をしています。
魔が悪いときは2匹同時に調子を崩してこられることもあるので、そういう時はなんだかしょっちゅう病院でお会いする気がします。
ダルメシアンは結構体が大きいですから、治療費もその都度かなりかかりますし、フレンチブルも同様です。
よくそんなに同時に飼えるなと思うのですが、一度も値を上げたところを見たことがありません。
明日また来てくださいと言えば、わかりましたと答えてくれますし、明日から5日間毎日点滴ですと伝えれば、わかりましたと答えてくれます。
1週後を指示しようが、10日後を指示しようが、1月後を指示しようが、いつもわかりましたと即答してくれます。
いったい何の仕事をしているのだろうと、思わなくもないですが、確かにこのご家庭なら3匹同時進行は可能なのだろうと思います。
世の中にはAさんのような方はもちろんいらっしゃるのですが、おそらくレアケース、レアキャラです。
多くの多頭飼育の飼い主さんは、引数が増えるに従い、治療途中で泣き言を言い始めることが多いです。
泣き言を口にするなとは言いませんが、泣き言を口にしなくてもよいご自身(あるいはご家族)のキャパを把握することが大事なのだと思います。
うちは単身生活だからうさぎは無理。
うちは二人暮らしだけど共働きだから1匹が限度。
うちは家族4人で世話できるし、お金の余力も十分あるから2匹はいける。
みたいなことを考えてからペットをおうちに迎え入れなければいけないのだと思います。
うちは妻と二人暮らしで、僕に至っては朝から晩まで自宅にいないので、ハニワとしげるの二匹で手一杯。
退職したらうさぎ飼えるかなぁ…
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