恥ずかしながら僕は爬虫類の診療ができない。
アレルギーとかそういう話ではなく、単純に勉強不足、知識不足で対応できないのです。
僕のキャパとしては犬、猫、うさぎ、小型げっ歯類、小鳥が精一杯で、それらすらスペシャルな知識、技術とは言えませんが、おそらくそれらの分野を一定レベルにする(あるいはそれをキープする)ことで、僕の獣医師人生は手いっぱいだと思います。
世の中には犬も猫もうさぎも爬虫類も、何なら金魚だってちゃんと診察できる先生もいるわけですから、それに比べるとなんと不出来な獣医師かと思いますが、まあ凡才は凡才なりにできることをコツコツ増やしていくしかないのだと思います。
僕に努力の才がないのは仕方ないとして(仕方なくもないはずなのですが)、おそらく富山県には爬虫類をきちんと診察、治療、手術できる動物病院はないのではと思います。
県庁所在地である富山市ですら人口40万人程度ですから、そんなところで爬虫類の診療に主軸をおいて倒産せずに食っていけるのかというと、動物病院運営もそこまで気楽な業種ではないのです。
そんな生々しい話はともかく、爬虫類の診療にきちんと対応できないのが富山県の現状です。
おそらく同様の地方はたくさんあるのではないでしょうか。
先日県内のショッピングモールをうろうろしていたところ、ずいぶん立派なペットショップさんを見つけました。
なかなかの敷地に犬や猫、小鳥にうさぎ、ハムスターに、爬虫類、たくさんの種類の動物たちが所狭しと…
爬虫類？
そう、そのお店では様々な種類の爬虫類が販売されていたのです。
別に法に触れるわけでもありませんし、それを咎めるいわれはないのですが、あの子たちは病気になったとき誰が治してくれるのでしょう。
東京とか神奈川のエキゾチックアニマル専門の病院に行くのでしょうか。
たしか隣の金沢市に爬虫類を対応している動物病院さんがあったと思うので(違ったかな？)、そこに通うのでしょうか。
食欲がなくなって、毎日点滴が必要になったときも、金沢市に毎日通うのでしょうか。
もちろん買う方がその覚悟を持っているのであれば問題ありません。
私はイグアナちゃんのためなら1月くらい会社を休んで、往復4時間かかる動物病院に通院するくらいへっちゃらよ！という人はもちろん構いません。
当然ペットショップの方も、爬虫類を販売するときに「富山県には爬虫類をちゃんと診察できる動物病院はありませんよ」と説明してくれているのでしょう。
「万一体調が崩れたら、往復4時間通院にかかるでしょうが、大丈夫ですよね？」と確認されているのでしょう。
ただもし覚悟ができてないのであれば、病気になったときに諦めずに戦い続けられるのか。
本当に自分たちが最後まで面倒を見ることができるのか。
自分たちにはその時間とお金とマンパワーがあるのか。
よくよく考えてから家に迎いいれてあげてください。
家に迎え入れてから「え？近くに対応してくれる動物病院ないの！？」と慌ててももう遅いのです。
そしてこれはウサギの飼い主さんにも言えることです。
残念ながら日本にはまだまだうさぎの診療に特化した動物病院は少なく、地域によっては県外に行かなければ適切な治療が受けられないというところも珍しくありません。
よくメールの質問で「近くにうさぎをちゃんと見てくれる動物病院がなくて、専門の病院に行くには片道2時間はかかるんです。でもそんな長時間移動してストレスじゃないですかね？」なんて質問が来ます。
正直何をいまさらと思います。
「近くにうさぎがちゃんと診られる動物病院がないって、知らなかったんです」とか言ってももう遅いのです。
購入する前に、知ること、調べることも大事なのです。
黙っていても、何でもかんでも教えてもらえるのは中学生まででおしまいなのです。
どんな地方に住んでいても、適切な治療がウサギも爬虫類も受けられる日が来るのが理想ですが、おそらく思いのほか遠いその未来までは【買う前に調べる】ことが重要なのかもしれません。
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