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アレス動物医療センター

口が開かない猫

2024/6/6

 8年前から口の開かないネコさんがいます。
 今年で16歳になりました。
 飼い主さんに支えられ16歳になりました。

 今回はうさぎさんではなく、ネコさんのお話です。
 うさぎ以外は守備範囲外だぜという方は別のページに飛んでください。

 ミーちゃん(仮名)は2度の交通事故を経て、アゴがまったく動かなくなりました。
 元気に歩けるし、飼い主さんに嬉しそうにすりすりしていきますが、口がまったく開きません。
 フードが食べられないだけでなく、水も飲めません。
 でもそれ以外はまったくもって元気です。

 今どうやって生きているかというと経鼻食道カテーテルという細い栄養チューブがついています。
 飼い主さんはこの8年間毎日毎日休むことなくこの栄養チューブを使って流動食をミーちゃんに飲ませています。
 流動食の投与は必ず二人必要で、3時間以上間隔をあけて1日5回。
 チューブは2〜3カ月で劣化して、また付け直す必要があります。
 2週間に1回注射も打っています。
 これも8年間ずっとです。
 
 これがどれほど大変で、どれほどお金がかかっているかわかるでしょうか。
 流動食代だけでも1日1200円くらいかかっています。
 おそらくこの8年間飼い主さんは遠出の旅行をされてないのではと思います。
 ちなみにみーちゃん以外にあと3人猫を飼ってらっしゃいます。
 全員毎年ワクチンを打ち、フィラリアの予防も欠かしません。

 別に高級外車を乗り回しているような超富裕層には見えません(失礼)。
 ごくごく普通の方です。
 もしかしたらすごい資産家なのかもしれませんが、もしそうだったらごめんなさい(しらんけど)。

 まあお金周りは知りませんが、毎日毎日休むことなく介護することの大変さは想像に難くありません。 
 僕の記憶が美化されているのかもしれませんが、おそらく「つらい」とか「やめたい」とか「いつまで続くの」といった弱音を一度も聞いたことがなかったと思います。
 体調が悪いときはすぐに飛んできてくれます。

 このひとりごとを読んで「チューブをつけて生かす」ということに反感を持つ方ももしかしたらいるのかもしれません。
 それはその方の価値観ですから、別にそれが悪いとは全く思いませんが、ただこのミーちゃんの飼い主さんたちを非難する言葉は一切受け付けません。
 ミーちゃんは間違いなく飼い主さんのことが大好きで、飼い主さんも間違いなくミーちゃんが大好きで。
 僕はミーちゃんも飼い主さんも大好きです。
 だからそれで良いのです。

 なかなか体力的にも精神的にもしんどい商売ですが、やはりこういう患者さん(あるいは飼い主さん)に出会えると、やっぱりこの仕事はやめられないと思います。
 ミーちゃんと飼い主さんが少しでも笑顔で過ごせる時間をお手伝いしたいと思います。


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