動物の我慢強さ、半端ないです。
特にうさぎやモルモットなど「捕まえられる側の生き物」の我慢強さ半端ないです。
よく飼い主さんは「時々軟便は出るんですが食欲はあります」とか
「食欲はあまりないんですが、めっちゃ元気です」とかおっしゃいます。
そういう時僕は心の中でいつもこう思います。
『うさぎの我慢強さなめんなよ』と
一応サービス業でもあるのでそこまで直球なことは言いませんが、とりあえず
「うさぎの元気がなくなるのは死ぬ日です。うさぎの食欲がなくなるのは死ぬ3日前です。」
と柔らかめな表現をしています(全然柔らかくない)。
以前乳がんの手術をしたうさぎさんが、1年ぶりに再診で来院されました。
「元気も食欲もあるが、乳がんが再発したかも」という内容でした。
1年前の手術では3pくらいの大きさの乳腺腫瘍を摘出したのですが、病理検査の結果は悪性の腺癌で「転移しないと良いですね」という会話を飼い主さんと交わしていました。
それが1年たってわきのあたりの乳腺に1pにも満たない小さなしこりができていました。
よくこの大きさのしこりに気づいたなというくらいのサイズ間で、飼い主さんがいかにまめにチェックしていたのかがうかがえます。
ただ確かに新しいしこりができているのは確かにそうなのですが、やたらと呼吸が早いのです。
飼い主さんに「家でもこれくらいのペースで呼吸をしていますか?」と聞くと、たぶん同じくらいだと思うとのお話。
まさかと思い胸のレントゲンを撮ると、肺全体が真っ白になるくらい肺癌が広がっていました。
乳がんは別の乳腺だけではなく、肺にも転移していたのです。
肺全体が癌に侵され、これでどうやって息をしているのだろう。さぞかし苦しかろう。と思って飼い主さんに
「本当に食欲は落ちていないですか?」と聞いても、全然落ちてないし、今日の朝も与えたらすぐにたいらげた、というのです。
非常に心苦しかったのですが「今ごはんが食べられているのが不思議なくらいで、1月はおそらくもたないと思います。1週間以内に急変しても、僕は驚かないくらい状態は悪いです」とお伝えしました。
飼い主さんは「でも今朝も普通に食べていましたし」と信じられないという顔をされていましたが、「それでも覚悟が必要な状況だと思います」とお見送りしました。
その3日後飼い主さんより電話があり「今朝息を引き取りました」と泣いてらっしゃいました。
これは飼い主さんが嘘をついていたというお話ではなく、うさぎや犬、猫はそれくらい我慢強いというだけの話です。
人間だったらどう考えても食べられない、あるいは立つことすら厳しい状況でもうさぎは我慢して食べますし、食べられなくても走ります。
逆にいうとうさぎが食欲が落ちたというときはかなりのピンチですし、元気がないというときは土俵際ということです。
ここでいう食欲がないというのは【ペレットを半分以上残した】というものではなく【いつも5分で食べるペレットを2時間かけて完食した】というものです。
牧草を何g食べたかというのを定量的に判断するのは難しいですから(いつも100g食べているのが90gに減ってもよくわかりませんから)、ペレットの食べ具合で判断するしかありません。
ペレットを食べ残すのはもう初動としては遅く、いつもより食べるのが遅いという段階で飼い主さんは気づき、行動に移さなければいけないのです。
うちのハニワ(輸血犬)はいつも1分でドッグフードを食べますが、稀に5分かかって完食するときがあります。
その時は激しい下痢便をしたり、真っ赤の血尿が出たりと、結構ド派手な体調不良が毎回伴います。
言葉を発さず、生き抜くためにとにかく我慢強い動物の体調不良に気づくには飼い主さんのたゆまぬ観察と、敏感な感度が必要なのです。
たまにガリガリにやせ細ったうさぎが連れてこられて、3日前から食欲がないとか言われる飼い主さんがいます。
3日でこんなに痩せるはずがないだろうと思うのですが、飼い主さん曰く「うちの子は生まれて8年病気一つしたことがないから病院に来る機会がなくて…」とのこと。
でも大体こういう場合病気をしたことがないのではなく、飼い主さんが病気に気づけない鈍感な方だったり、あるいは対処しなくても翌日に(うさぎが自力で頑張って)調子が戻ったものを「病気」とカウントしていないかだと思います。
犬や猫ももちろんですが、特に体調不良を必死に隠すうさぎは、飼い主さんの感度の高さが重要になってくるのかもしれません。
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