30年前、まだ獣医学科の大学生だった時、うさぎの授業は実験動物学として学びました。
昔の獣医さんが「動物病院は犬を診るものだよ、猫は病院で診るものじゃなかったよ」とおっしゃっていたのが今は冗談のように聞こえますが、いずれうさぎもそうなってくれればと思います。
ありがたいことに今年も大学での【うさぎの講義】のお話をいただいて、現在東北新幹線に乗っています。
先週、今週と2週連続で青森に伺うのですが、なぜか2回とも大雨が一緒に北上してきます。
無事富山に帰れると良いのですが、帰れなかったら皆(スタッフ)ごめんね。
僕が大学生のころはまだうさぎの授業はほとんどなく、唯一解剖学と実験動物学でその体の構造や生態について学んだだけでした。
今の学生さんたちはちゃんとうさぎを診療対象として学ばせてもらっているのですから、時代は変わったものです。
まあ当時は授業の中心も大動物(牛や馬など)で、犬猫の授業すらちょっとウエイトは軽めだったくらいですから(当時はお国にとって大事なのは犬猫よりも家畜だったでしょうから)、しょうがないといえばしょうがなかったのかもしれません。
今回僕が担当するのはコンパニオンアニマルとしてのうさぎの診療についての講義ですので、今の獣医学部の学生さんたちは(僕の授業の良し悪しはともかく)かなり幅広い分野の勉強を学生時代にできるので、30年前大学生だった身としてはうらやましい限りです。
通常学会発表や講演ではゆっくり話すことを心掛けているのですが(それでも早くなっちゃうことが多いですが)、最近の若い方は動画やテレビ、映画さえも倍速などで視聴すると噂なので(ほんとに?)、あえてスピードは落とさず最後まで疾走。
速すぎたらごめんなさい、そしてあれでも遅すぎたらごめんなさい。
今年の講義でもお話をさせていただいたのですが、うさぎの3大疾病【消化管うっ滞】【不正咬合】【子宮癌】は努力次第で撲滅できると思うのです。
子宮癌はほとんどの飼い主さんが若いうちに避妊手術を希望し、うさぎの避妊手術を当たり前のように(犬や猫の避妊手術を受けるように)獣医師がこれに応え、そして安全性が極めて高い麻酔方法が確立されれば大げさでなく撲滅できると思います。
もちろん飼い主さんの価値観として避妊したくないというのは良いと思うのですが、現在多くの犬猫の飼い主さんたちが避妊去勢手術を望み、それが当たり前のように受けられるように、うさぎの飼い主さんが希望した時にはどの県でも安全に手術が受けられる日が来るべきだと思います。
不正咬合も先天性のものはなくならないかもしれませんが、牧草での飼育の重要性を飼い主さんも獣医師も正しく認識し、余計なおやつを極力排除し、ペレットをきちんとグラムで測り、牧草中心の食生活が当たり前のように行われれば、いつか撲滅できるはずの病気です。
消化管うっ滞はさすがに撲滅は無理かもしれませんが、うさぎが食欲不振になったときに飼い主さんが様子見を決め込まず、診療にあたる獣医師が正しい治療方法を習得していれば、死亡率は激減するはずです。
犬や猫の3大疾病【心疾患】【腎疾患】【悪性腫瘍】を撲滅することはなかなか難しいかもしれませんが、うさぎの3大疾病が撲滅されれば、うさぎの平均寿命は劇的に伸びるはずなのです。
僕は【うさぎの3大疾病を撲滅(は無理かもしれませんが、激減)する】という目標を一獣医師としてのライフワークと勝手に決めており、だれに頼まれたわけでもないのに趣味として活動しています。
これをうちの患者さんだけでなく日本全体で実現させようと思うと、次の3つが課題となります。
1.正しい飼い方を飼い主さんに啓蒙する:牧草中心の食生活、12時間以上食欲不振を放置しない、避妊手術の重要性
2.正しいうさぎの診療を一般獣医師に啓蒙する
3.不慣れな獣医師での失敗しない麻酔方法の確立:麻酔さえ安全にできれば、たくさんの僕より腕の良い獣医さんがたくさんうさぎの手術に参戦してくれるはず
1の実現のために始めたのがこの【あなたがウサギにできること】であり、Youtubeサイト【うさぎちゃんねる】であり、【本気でうさぎを飼いたい人の うさぎの飼い方 育て方】の出版です。
そして2の実現のために行ったのが獣医師向けのうさぎ獣医学書やDVDの出版、そして今回の大学での講義です。
3はまだまだ発展途上でこれもあと15年かけてどうにか形にしたいと思っています
気がつくとこの仕事も25年ほど続けており、いつの間にか50歳になりました。
定年退職までにどこまでできるかわかりませんが、大学を巣立つ前の獣医師の卵たちに、うさぎ診療の話をさせていただけるのは、すでに開業してしまった獣医師たちの意識を変えるよりもはるかに簡単で、効果的な気がします。
片道5時間の移動は信じられないほど退屈ですが、僕のライフワークにこれほど合致したお仕事はありません。
お仕事を振っていただける限りは、できるだけ積極的にお受けしていきたいと思っています。
そして定年退職時に「開業当初はうさぎの平均寿命は4歳にも満たなかったけど、今では平均寿命も10歳まで来てる。あのうち1年くらいは僕のおかげなんだよ」と奥さんに自慢して、褒められたいものです。
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