本文へスキップ

あなたがウサギに出来ることは 獣医師による うさぎ専門情報サイトです。

MAIL alles@usagi.cn

アレス動物医療センター

好き嫌い言っちゃダメ、とは思うのですが

2022/12/15

 がちがちの田舎者ですので、正しいマナーというものはまったくわからないのですが、自分の中での精一杯の礼儀正しさで日頃は過ごそうと思っています。
 もしかしてそれが間違った所作で、はたで見ていると滑稽な場合もあるかもしれませんが、そのように努めていれば少しは伝わるのではないかと思っているのです。

 世の中には院長である僕には結構礼儀正しいのに、なぜか看護師には異様なくらいあたりが強い飼い主さんがいらっしゃいます。
 僕に対する礼儀正しさが本性なのか、受付での横柄な態度が本性なのかはわかりませんが、驚くくらいコロッと態度が変わる方がいるのです。
 それが年齢的な差別なのか、職業的な差別なのか、それとも性別的な差別なのかはわかりませんが、いずれにせよ今のご時世とは思えない差別感を感じる瞬間があります。

 うちみたいな小さい動物病院だと、待合室や受付の声や会話は結構診察室まで届きます。
 慇懃無礼な態度で、あるいは時に横柄に、ときに恫喝にも近い口ぶりで受付の看護師に当たる物言いは普通に筒抜けに聞こえてきます。
 
 もちろん僕や看護師や、あるいは待ち時間だったり、サービスの不備だったりと不満を持たれることはあるでしょう。
 ただそれは、看護師を指導した僕の力不足であり、待ち時間の長さやサービスの不備不足は経営者としての僕の未熟さであり、当たるのであれば二十歳そこそこの看護師ではなく、僕に当たり散らすべきではないのでしょうか。
 それでいて僕に対してはコロッと態度が変わってしまう。
 ひょっとして筒抜けであることに気づいてないのかもしれませんが、驚くほど普通の笑顔で診察室に入ってくるのです。

 もちろん命を助ける仕事ですし、そもそも動物には全く罪はないことですから、そのようなことがあろうとも全力で診療に取り組みますし、手を抜こうなんて思ったことはありません。
 動物は飼い主を選べないのです。
 その表現が正しいかわかりませんが、『飼い主ガチャ』というやつです。

 どんなに飼い主さんに腹が立とうとも、法に触れない限りは、全力で治療に取り組みます。

 でも、一生そのことを僕は忘れません。
 全力でその子を助けますし、その子のことを愛しますが、その飼い主さんの振る舞いを一生忘れません。

 僕にとってうちの病院のスタッフは家族です。
 気持ち悪いと思われるかもしれませんが(場合によってはスタッフからも気持ち悪がられているかもしれませんが)、家族です。

 40近くまで結婚もせずにぼんやり生きてくると、よく友人知人から「出会いがないとかいうけれど、職場になんぼでもかわいい看護師がいるじゃない」とか(これまたコンプライアンス的にあれなことを)言われたりしました。
 でも、そのようなことを考えたことは一度もありません。
 僕が育てた獣医師や看護師は弟や妹やあるいは娘のような感覚です。
 本当に家族なのです(…我ながら気持ち悪いな)。

 大切な家族を傷つける人を僕は普通に憎みます。
 嫌いです。
 僕は根が暗いので、本当に忘れません。
 
 いざ大病になって、入院した時に、誰よりも世話をしてくれるのは看護師です。
 僕ではなく、飼い主さんが横柄に汚い言葉を投げつけた看護師です。
 もちろんうちの看護師だってみなプロフェッショナルです。
 どんなにむかつく飼い主さんのペットだろうと、全力で助けようと努力します。
 そこで手を抜いたり、差をつけたりなんてことはしません。
 だって動物には罪はないですもん。

 僕はコップ1/4杯でも意識が混濁するほどの下戸中の下戸ですので、数少ない楽しみは美味しいお店探しです(お酒を飲まなくても許されそうな)。
 うちの妻と共通の趣味です。
 そして二人ともにお気に入りになったお店では、極力行儀良く、礼儀正しく、穏やかにお店の人と接するよう心がけています。

 まあ何を食べてもおいしいと感じる馬鹿舌なので、結果どこでも行儀よくする羽目になりますが、このお店だけは失いたくないと思うお店では全力で礼儀正しくふるまいます。
 そんなお店はたとえ僕が横柄な態度をとっても、全力で料理を作ってくれるようなお店でしょうが、それでも気持ちよく料理を作ってもらえるよう、「良い子」に徹します。
 大好きなお店のシェフやスタッフに嫌われて、何のメリットがあるのでしょう。
 僕がそのお店を愛するように、そのお店にも愛されるよう、不慣れながらも礼儀正しいジェントルマンとして立ち振る舞いたいと思っています。

 同じように気持ちよく診療をしたいと思います。
 接客業が何をわがままなことを、と言われるかもしれませんが、僕も人間です。
 感情くらいあります。
 「お客様は神様です」なんて言いますが、僕は嫌いな飼い主さんを神様だなんて思っていません。
 ただ、動物には罪がないからと、心に言い聞かせて頑張るのみです。
 願わくば、僕にだけ優しい飼い主さんではなく、うちのスタッフにも同様に(あるいは僕以上に)やさしく接してくれる飼い主さんであってほしいです。

 そういう好き嫌い言っちゃダメなんでしょうけどね

#獣医 #コラム #嫌い


アレス動物医療センター

〒933-0813
富山県高岡市下伏間江371

TEL 0766-25-2586
FAX 0766-25-2584