24年ほど獣医師をやっていますが、きっとまだまだ分かっていない(分かってあげられない)病気があるのだと思います。
10年位前まで病院にやってくる血統書付きの猫といえば、せいぜいアメショ(アメリカンショートヘアー)くらいでした(いきなり猫の話でなんですが)。
特に富山県などは猫は貰うか拾うかするもので、ペットショップで猫を飼ってくる人なんてほとんどいなかった気がします。
ペットショップに行けば、9割がたが犬で、猫は隅っこのほうに2匹まとめて一つの部屋に入れられていた感じでした。
で、やってくるのはアメショくらい
ごくごくまれにチンチラが来てたくらいですか(エキゾチックアニマルでないチンチラ)。
で、そのたまにやってくるアメショで、結構先天性の心不全や先天性の腎不全の子がいました。
雑種の猫でもごくごくまれに先天性の心不全や腎不全の子はいましたが、明らかにアメショの先天性心不全や腎不全は多かったのです。
なので、当時僕たち獣医師は「アメショは先天性心不全や腎不全が多い種類」というような認識でいました。
アメショを見たら心不全(あるいは腎不全)を疑え、というくらい。
ところが時代が変わって、やたらと血統書付きの猫が病院に来るのです。
しかもノルウェージャンだの、マンチカンだの、足長マンチカンだと(どういう意味?)、スコティッシュだの、立ち耳スコティッシュだの(どういう意味??)とずいぶん多種多様な猫が来院するようになりました。
ペットショップもずいぶん様変わりして、ケージの半分くらいが猫のブースだったりするのです。
犬半分、猫半分。
別のスペースにうさぎたち、みたいな。
この血統書付き猫ブームが来て、おそらく6~7年くらいでしょうか(田舎なので、都会よりちょっと遅れているかもしれませんが)。
最近このスコティッシュやノルウェージャンやマンチカンなどいろんな種類の猫で、先天性の心不全や腎不全が見つかるようになったのです。
ちゃんとした統計を取ったわけではないのですが、僕の感覚だとどの種類もアメショと同じくらいの割合で先天性疾患を持っている気がします。
スコティッシュやマンチカンはそもそも関節疾患になることは有名でしたが、こんなにアメショ同様先天性心不全などが見つかるようになるとは思ってもいませんでした。
これが全世界共通のことなのか、日本だけなのか、それとも富山だけなのかはわかりませんが(富山だけってことはないでしょうが)、明らかに雑種の猫よりも先天性疾患の頻度は高いと思うのです。
この段になってようやく気付いたわけです。
「アメショだけが先天性心不全(腎不全)が多いんじゃない。
血統書付きの猫は先天性心不全(腎不全)が多い。」と
もちろん先天性疾患を持っていない血統書付きの猫もたくさんいますし(というか持っていない子のほうが多いですし)、雑種の猫だってたまに先天性疾患を持っている子もいます。
単に比率の違いです。
この比率の違いが「血統書付き」だから起きているのか(一つの種を維持するために起きてしまう不具合なのか)、急激な猫ブームのせいなのか(無理な大量生産?のひずみなのか)はわかりません。
ただ逆に、この比率の違いが、獣医師にとって大きなヒントになるわけです。
何か不調があるとき、麻酔をかけるとき、体重が増えにくい時、この比率の違いが脳裏をよぎるかどうかが重要になってくるのです。
『先天性の心不全なんてめったにないけど、血統書付きの猫だから…』と脳裏をよぎることによって早期発見早期治療できる子もいるのです。
そうなると、まだまだ犬猫ほど定着していない、
あるいは犬猫ほどちゃんと診療ができる獣医師が増えていないうさぎはどうでしょう。
ネザーランド、ロップイヤー、レッキス…今の猫ブームのようにたくさんのうさぎが巷にあふれ、ほとんどの獣医師が当たり前のように高レベルの診療をうさぎに行える時代が来たら、もしかしたらもっとたくさんの病気が見つかるのかもしれません。
それ自身は悲しいことですが、今は見逃していて、見つけてあげられていない病気が、たくさん発見されれば(病気なんてないに越したことはないですが)、それはうさぎさんの病気の早期発見につながるのかもしれません。
獣医師も当然万能ではありません。
経験が生み出す発見や知識はまだまだあるのです。
うさぎが日本のペットの中心になる日が来るかはわかりませんが、もしそんな時が来たら、もっとうさぎのことを知ることができるのかもしれません。
今よりもっともっとうさぎが動物病院に来院する時代。
…さぞかし僕のアレルギー性喘息も悪化していることでしょう。
なんかアレルギーのいい薬発明されないかなぁ。
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