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アレス動物医療センター

うさぎの保険ってお得?

2021/4/8

 たまにうさぎの飼い主さんに聞かれるのですが「動物の保険ってうさぎも入ったほうが良いのですか?」という質問。
 なかなかに難しいところなのです。

 最近は犬や猫も動物の保険に入っている方が多く、メジャーどころのアニ〇ムやアイ〇ットだと対応している動物病院では窓口清算可能で、結構便利なシステムだと思います。
 窓口清算というと、人間の病院みたいに保険証を持っていくと、治療費の3割病院の窓口で支払って、残りは保険会社から病院に振り込まれる形になります(何割かは保険の種類によりますが)。
 例えば子宮がんの手術をして、入院、検査、手術、点滴、投薬など含めて10万円かかったとすると、退院時に3割の3万円を病院に払うというものなので、形的には人間の国民健康保険とよく似たシステムになります。

 まあ動物病院サイドには手間や負担が多く、不評なことも多いですが(保険会社によって、ルールや書式が違うので、本当に面倒くさい)、飼い主さんにとっては結構良いシステムだと思います(ちゃんとした保険会社であれば)。

 僕も8年前に輸血犬のハニワ(注意:名前、女の子)を飼ったときに、ア〇コムさんに電話をして「獣医師の飼っている犬も保険に入れますか?」と問い合わせしたくらいです。
 ちなみに獣医師の飼っている犬が保険に加入することはできるそうですが、自分で診療治療してしまうと保険が下りないそうで、自分で治療できないならやだなーと思って、保険には入りませんでした。
 確かに僕が治療して、保険会社に「下痢で治療費100万かかりました!」って申告できちゃまずいですもんね。
 そらそーだ。
 でも僕が一般人で、犬を飼うとしたら、たぶん保険に加入すると思います。

 ではうさぎの場合は保険に入ったほうがお得か?という問題ですが
 微妙です。

 まあそもそも保険で損だ徳だと言ってもしょうがないわけで、得するために保険に入るわけではなく、何か緊急時に、いざというときに、というものですが、それでもまあ気になるところだとは思うのです。

 うちの病院でもうさぎで保険に入っている人は何人かいて、有効活用できている人もいれば、めちゃめちゃ健康で全然保険を使う機会がない(保険料だけ払い続けている)という方もいます(良いことですけど)。

 骨折とかして、手術で15万かかった!っていうときは「保険に入っててよかった〜」という話になるのですが、何が微妙かというと不正咬合の治療費がどの保険会社も適応外なのです。
 
 うさぎで一番ずっとお金がかかり続ける(しかも結構よくなる)病気が不正咬合で、この治療費が出ないとなると「いったいいつ保険を使うのさ!」という気がしないでもないです。
 麻酔下で歯の処置をするとすると1回1万くらいするわけで、それが下手すると毎月一生続くとなると年間12万、5年で60万とかかかっちゃうわけで、これが保険適応外というとなかなかシビアな話です。

 まあ保険会社さんからすると
「いや、牧草中心の食生活をしていれば、そもそも不正咬合なんかにはならないでしょ?
 飼い方で予防できるはずの病気で保険は出せませんよ。
 だってそれ飼い主さんの責任でしょ!?」

 というニュアンスなのかどうかはわかりませんが、
 じゃあぶくぶく太らせて猫を飼っている人が、猫を糖尿病にしちゃって、その治療費は保険を出さないの?とか
 ラブラドールをぶくぶく太らせて股関節形成不全にしちゃったら、その治療費は保険を出さないの?とか
 トイプードルをぶくぶく太らせて関節炎にしちゃったら、その治療費は保険を出さないの?とか
 ミニチュアシュナウザーをぶくぶく太らせて胆嚢粘液嚢腫にしちゃったら、、その治療費は保険を出さないの?とか
 その辺は保険下りるなら、うさぎの不正咬合だっていいじゃない
 きちんと飼ってたってなることもあるんだし…
 とちょっとぶつぶつ言いたくなっちゃう気がしないでもないです。

 まあルールはルールですし、不正咬合が対象外というのはしょうがないと思うのですが、そうなると保険の使いどころってどこだろう、と思うのです。
 ちなみに何も症状がない時の健康診断も保険対象外になります。

 もちろん不慮の骨折や、すごく食欲うっ滞をしょっちゅう起こす子なんかは「保険に入っててよかったね」というシチュエーションもあると思うのですが、これも
【うさぎの骨折級の高額治療費がかかる治療ができる獣医さんが近所にある】
というのが大前提になります。

 うさぎが骨折しようが、子宮がんになろうが、膀胱結石になろうが治療できる獣医さんが近所になくて、治療したくてもできないのであれば保険に入る意味ってあるの?という話になります。
 それなら保険に入った「つもり」貯金を毎月5,000円とか貯蓄していってもいいんじゃないの?とか

 でも逆にうっ滞や骨折、腫瘍などできちんと検査、治療、ができる獣医さんが通える範囲内にあるのであれば、保険に入っておくのは十分ありなのかもしれません。

 確かに保険料をただ払い続け、病気一つせず、まったく「得」にはならないシチュエーションもあるかもしれません。
 でも、いざというとき金銭的な理由であきらめなくてすむのはとても大きいことかもしれません。
 いいじゃないですか、保険を使わなくてすむくらい健康で、保険料をただ保険会社に納めるだけになるのは幸せなことです。

 僕も以前鼠経ヘルニアの手術を受けることになり、あとから保険が5万ほど下りましたが「やったー!得した!!」とは思いませんでした。
 できることなら鼠経ヘルニアになんかなりたくなかった。

 でも不正咬合は保険が出るように改正されるとうれしいんですけどね。

 

 

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