「うさぎは寂しいと死んじゃうんだよ」という都市伝説がずいぶん昔からあります。
この都市伝説が広がったのが○りピーのせいなのか、誰のせいなのかよくわかりませんが、患者さんから聞かれることもたまにありますし、ずいぶん昔にAERAの記事取材で聞かれたこともありました。
だいたい答える返答が、
「いくらなんでも寂しいからって、死んだりなんかしませんよ」というところなのですが、本当にそうなのでしょうか。
うさぎは何らかの原因で食欲が落ち、これを治療せずに放置すれば、24時間後にはウサギ消化器症候群(RGIS)に突入します。
犬や猫と違い、口から繊維質(主に牧草)を摂取しないと胃腸がまともに動かなくなります。
原因が熱中症だろうが、毛球症だろうが、牧草のあげ忘れだろうが、胃腸の運動が停止します。
そうすると胃や腸内の食べカスや糞が発酵し、胃腸内にガスが溜まり始めます。
ガスがたまるとお腹が痛い→お腹が痛いとますます食べられない→食べられないとますます胃腸は動かなくなる→さらにガスは貯まる…と負のスパイラルに突入するのです。
このような状態をRGISといい、犬猫の食欲不振と比べ、ウサギの食欲不振が治しにくく、死に至りやすい原因の一つです。
「うさぎは24時間食欲が落ちると死ぬ」という、もう一つのうさぎに関する都市伝説(?)は、このRGISに由来するのかもしれません。
ですから、うさぎの食欲不振は「様子見」が許されず、原因が何であれ食欲が落ちたらすぐに動物病院に飛んでいかなければいけないわけです。
すぐに治療を開始すればすぐに治ることも多いです。
しかし食欲不振が開始してから48時間、あるいは1週間と経過してしまうと、スタートの原因がたとえ単なる熱中症で、すでに暑さ対策を講じたあとでも、助けることが困難な状況に陥るのです。
ではもし飼い主さんが忙しくて、あるいはうさぎの食欲などに対する関心が乏しくて、食欲不振に気づいてあげられないくらい放置してしまったらどうでしょう。
あるいは食欲不振に気づいていても、飼い主さんが忙しくて、あるいはうさぎさんに対する思い入れが乏しくて、病院に連れて行かず、放置してしまったらどうでしょう。
この場合、うさぎの死亡率はどんと跳ね上がってしまいます。
つまり「寂しい」ではなく「忙しさ」「無関心」「放置」がうさぎを死に至らしめるのです。
うさぎの不調に気づいてあげられなかった飼い主さんが、あるいはうさぎの不調に行動を起こしてあげられなかった飼い主さんが、うさぎをRGISで死なせてしまったときに
「寂しい思いをさせたせいで、死んでしまったのでは?」
と思うのではないでしょうか。
そういう意味ではうさぎはたしかに寂しいと死ぬのかもしれません。
死んでしまったあとに「ずいぶん寂しい思いをさせちゃったから?」と後悔するくらい手抜きの飼い方をしていると、うさぎは死んでしまうのかもしれません。
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