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あなたがウサギに出来ることは 獣医師による うさぎ専門情報サイトです。

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アレス動物医療センター

専門医

 日本の獣医学もかなり進歩してきていると思うのですが、時々まだまだアメリカやヨーロッパには遠く及ばないなぁと思う瞬間があります。
 
 先日アメリカから眼科の専門医の方が病院に来られ、犬の白内障の手術や勉強会を開いて、その技術の高さと、知識の深さを拝見させていただきました。
 日本で白内障の手術を行っている先生方や、あるいはこれからそれを学ぼうとしている先生方が集まり、その手術を見学したのですが、皆一様にその信じられないような技術の高さに目を丸くしていました。

 このアメリカの先生は、もうひたすら一日中犬の目を見、猫の目を見、うさぎの目を見、手術をし、とあたかも人間の眼科のお医者さんのように、仕事をされているそうです。
 うさぎの目のことについて質問したときに、ウサギでの目の場合これこれこのような病気があって、このような可能性があって、大元には歯の問題などがあることなどがあり・・・とつらつらと説明され、その歯のことについてつっこんで聞いてみると、それはエキゾチックの専門医の範疇だから、とおっしゃるのです。

 このようにアメリカでは、一般の病院の他に、眼科専門、整形外科専門、内科専門、皮膚科専門、エキゾチックアニマル専門、とそれだけを突き詰めて研究し、診療している先生なり、病院なりがあり、そこで診てもらうためには車で何時間飛ばしてでも火曜のが当たり前であるという価値観がきちんと根付き始めているわけです。

 日本でもようやくウサギ専門でやってらっしゃる病院や、は虫類を中心に診療されている病院などが出来始めましたが、まだまだ各県に各専門分野の病院というわけにはいかないようで、その道のりはかなり遠そうです。

 ホームドクターとして、飼い主さんと常に向き合って広く浅く、しかし親密に診療する一般の病院と、ある分野にのみ深く精通し、その分野の問題の時のみ登場する専門の病院と、それを十分理解した飼い主さん。
 一般の病院はその病院で扱えない疾患が来たときには迷わず専門病院に引き継ぎ、専門病院はその役目を終えたら元の病院に飼い主を帰す。
 お互い出来ないことと出来ることを明確に飼い主さんに伝え、3者間での情報交換がきちんと行われている。
 こんなシステムが、日本でもきちんと構築されると、ますますたくさんのうさぎさん達が助かり、幸せに過ごせるのではないでしょうか。

 ただこれには飼い主さん達と、獣医師の意識の改革が必要なのかもしれません。

 個人の獣医師が出来る範囲のことなど限られているのはしょうがありません。
 だんだんあらゆる分野で進歩してきた獣医学において、眼科医であり、外科医であり、歯科医であり、内科医であり、なんて無理に決まっているのです。
 出来ない手術や診療を、無理矢理やってみたり、やる意義がないように説得してみたり、そのような無意味な見栄を捨て、正直にうちの病院はここまでは出来るがここからは出来ないと言う線引きをし、それを飼い主さんに示すべきでしょう。
 そして飼い主さんサイドも、その病院の出来ない部分だけを見て幻滅するのではなく、出来る部分だけそこに任し、出来ない部分はそれを得意とする病院を紹介してもらうと言うことを、当たり前と認識しなければいけないのかもしれないのです。

 いつだったか、うちの病院にセキセイインコを連れて通ってこられていた飼い主さんがいました。
 別の鳥に噛まれ、怪我をしたとのことで通院されていました。
 その怪我はうまく治療でき、しばらく病院に来られなくなっていたのですが、そのあと別のセキセイインコを連れてきて、お腹に大きなできものがあるから見て欲しいと行って来られたのです。
 見るとかなり大きいできものがお腹にあり、これはうちの病院では手術できないと考え、それを専門とされている病院に紹介しましょうと伝えました。
 車で1時間以上かかるところですが、この辺の地域ではそこが一番鳥の診療に長けていますから、と。
 すると飼い主さんは急に不審なものを見るような目で私を見、「この病院では鳥の診察は本当は出来ないのか、今までの治療は何だったのか」とおっしゃりました。
 
 この出来事は正直結構こたえました。
 実際鳥を診、これはうちでも出来るというものはそのまま診療し、出来ないと判断したものは例え遠くても専門の病院にいっていただくという姿勢を理解していただけなかったわけです。
 家のそばの病院で治療できるものを、何も遠くの病院に行ってもらわなくても良いだろうと言う気持ちだけなのですが、その飼い主さんにとっては詐欺にあったような気持ちになってしまったのかもしれません。
 そこから先は何を言っても不審な目を向けるだけで、生返事だけしながら病院を去っていき、それ以来その患者さんは来院されていません。
 
 こうやって、病院不審の患者さんと、見栄を張りたくなる獣医師が出来ちゃうのかもしれないな、とその時思いました。
 
 でもきっとここでめげてはいけないのですね。
 獣医師はいつか患者さんがこれを理解してくれる日が来ると信じ、啓蒙し続ける。
 飼い主さんはいつか各県にあらゆる専門分野の病院が一軒ずつくらいでき、ホームドクターとの協力体制が確立される日が来ると信じる。
 それだけでも少しずつ、アメリカなどのような専門医の定着が訪れる日が近づくのではないでしょうか。
 
 ホームドクターあっての専門医であり、専門医あっての獣医学の発展と、動物たちのさらなる幸福です。
 うちの実家の石川県で、いまうさぎの診療だけで食っていけるとは思えませんが、いつかそんな獣医さんが現れ、それが成り立つ土壌が出来る日が来るはずです。

 たぶん。 



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