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アレス動物医療センター

捻挫は3日で完治・・・ンなわけない

2018/2/2

 跛行(歩き方の異常)を理由に来院された患者さん(飼い主さん)にいつも言う台詞があります。
 それは
「捻挫なら3日で完治します」
というものです。

 先に言っておくと、これは嘘です。方便です。
 3日で完治する訳ありません。
 私が段差を踏み外して捻挫をしたときは1月上痛かったですし、捻挫して3日目の痛みなんて、結構ピークな痛みでした。
 うちの嫁さんなんか数年前に捻挫した足が未だに時々痛い(病院に行くべきだ)くらいで、それが本当に捻挫かどうかも疑わしいですが、少なくとも捻挫をして3日後に完治しているはずはないのです。

 ではなぜそんな嘘をつくかというと、わかりやすく説明するための方便なのです。

 例えばフローリングで転んで跛行するようになったうさぎや犬が来ます。
 で、触診するとどうも骨折や捻挫もない。
 診察室を歩かせてみても、骨に問題はなさそうなレベルの歩き方をする。
 で、飼い主さんが心配症な方だったら、レントゲンを撮ってはっきりさせるのですが、コスト的にちょっと厳しそうな方の場合
「少なくともこの歩き方だと骨折とか脱臼という緊急の手術を要する状態ではおそらくないと思います。
 ケージで3日間安静にしてもらって、それで完治するようなら、おそらく捻挫か打撲なので再診は必要ありません。
 ただ、うさぎ(あるいは犬、猫)の捻挫は必ず3日で完治するので、もし3日たっても治りきらないなら、たとえ症状が改善していても必ず何か大きな問題があるはずです。
 ですから3日後に多少なりとも症状が残っていたら、朝ごはんを与えずに、必ず病院に連れてきてください」
 てな感じのインフォームドコンセントをするわけです。

 この「捻挫は3日で完治」という方便には2つの意味があります。

 一つは動物は人間の捻挫3日目くらいの痛みは、痛くないふりをして、元気に走れてしまうことです。
 
 痛くないはずはないのです。
 動物が痛みに強いなんて迷信です。
 痛みに我慢強いだけなのです。

 うちの輸血犬ハニワさんも4年前に避妊手術をした日の夜には、アホな顔をして普通に庭を駆け巡り、普通にドッグフードを完食していました。
 痛くないわけではもちろんありません。
 痛くないふりをするだけです。
 人間が盲腸の手術か何かで開腹手術をして、その日の夜に運動場を全力疾走していたら、ちょっとあれな人です。

 そしてもう一つは、それだけ我慢強いうさぎや犬が、発症から3日たっても完治したように見えない(痛みを隠せない)ほどの痛みというのは、とんでもない痛みであり、それは必ず大きな問題を隠し持っているということです。
 超絶重病です。
 絶対治療が必要な病気です。

 ですから3日経って「ああ、まだちょっと歩き方不自然だけど、だいぶ改善してきたから様子見よっかな」
 なんてことは言ってはいけないのです。

 基本的には跛行が出たときには必ず動物病院で診てもらったほうが良いです。
 少なくとも動物が隠せないくらいの痛みがあるのは、だいぶまずい状態なのです。

 百歩譲って病院に行かずに様子を見たとしても(様子見ちゃだめですけど)、3日経って完治してなければ超特急で病院に行かなければいけないシチュエーションということです。

 くどいようですけど3日様子見てよいというひとりごとではありません。

 中には椎間板ヘルニアのようにスピード勝負で、治療が遅れると後遺症が残ってしまったり、完治にべらぼうに時間がかかるようになってしまったりする跛行の病気もあるのです。
 骨盤骨折なんか、1週間放置すると私みたいに大した技術のない獣医師は手術に信じられないくらい長時間要するようになってしまい、手術のリスクがめちゃめちゃ跳ね上がってしまったりするのです。
 様子を見ていいか、レントゲンをすぐさま取るべきかの判断は飼い主さんではなく、獣医さんがするべきです。

 ただうさぎや犬、猫は信じられないくらい我慢強く、その我慢強い動物が症状を隠しきれないのでハンパない状態なんだぜ!というお話でした。

 

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