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アレス動物医療センター

本当に最期まで

2017/10/4

 当たり前ですが、動物を飼うということはとても大変です。
 何しろ小さくとも一つの大切な命ですし、その生命を長く健康に維持できるかどうかは飼い主さんにかかっているわけです。

 飼い主さん次第ではうさぎだって12歳まで生きる子もいれば、3,4歳で終わってしまうことだってあるわけです。
 大げさでなく、とてもとても責任は重大であり、命はけして衝動買いで買って良いものではありません。

 うちの輸血犬ハニワさんは4年前に買いました。
 開業して11年経ってからですから、動物病院の輸血犬としてはおそすぎるくらいです。
 本当は開業当初からいるべきだったのですが、なかなか飼う決心がつきませんでした。
 子供の頃飼っていた愛犬シーターに対する思い入れもあったのですが、もう一つ
 「本当に自分に大型犬を最後まで面倒が見られるだろうか?」という心配もありました。

 輸血犬ですからもちろん大型犬でなければ十分な血液が取れません。
 しかし当時結婚していなかった(そして結婚できる予兆がまったくなかった)私にとって、あるいは朝早くから夜遅くまで家に帰れない私にとって、大型犬を飼うというのはあまりにハードルが高かったのです。

 大型犬ですから、しつけを失敗すれば、人様に迷惑をかけかねません。
 自分に犬のしつけにさくだけの時間を作れるだろうか?
 
 あるいは20〜30kgもある大型犬が、将来当然ですが病気になり、場合によっては寝たきりになったときに、独り身で本当に世話ができるだろうか?
 寝返りもうてなくなり、床ずれができ始めたときに、一人で介護できるだろうか?

 仕事ばかりしている自分では、随分寂しい思いをさせるのではないか?

 輸血犬なのだから、そんなことを考えても仕方ないだろうと言われるかもしれませんが、そうは言っても何かしらの縁でやってくる命なわけで、あまり無責任なことをするわけにもいきません。

 結果自分がよしこれで大型犬の一匹くらい、どうにか最後まで面倒見れるぜ!!と思えるのに11年もかかってしまったわけです。

 先日結構なお年の男性が、オウムを飼いたいんだが、診察してもらえるか、と電話をかけてこられました。
 将来は海賊の肩に乗るのでは、という結構大きくなる鳥です。
 お声の雰囲気からかなりのお年と思い「失礼ですが、飼い主様はおいくつくらいの方ですか?」と聞くと
「70半ば」とのお返事。
「他にも世話をするご家族はいらっしゃるんですか?」と聞くと
「いや、息子は県外に就職して、自分ひとりだ」と
「オウムって、頑張ると30年とか40年とか生きるんですが、大丈夫ですか?」
「え?オウムってそんなに生きるの?」
「・・・」
「・・・」

 結局色々話し合った結果、最後まで面倒を見きるのは難しそうだから、諦める、というお話になりました。
 職業柄、ペットを飼う人がいてなんぼの商売なので、飼うのを止めるというのも何なのですが、やっぱり最期まで幸せに飼ってもらいたいじゃないですか。
 
 ウサギはめちゃめちゃ可愛いです。
 私もアレルギーがなければきっと飼っていたことでしょう(今飼うと喘息で死ぬでしょうが)。
 ただ、うさぎを飼うのはめちゃめちゃ大変です。

 たった24時間の食欲不振を放置しておくと、一気に状態は悪化していきますので、「様子見」が許されません。
 仕事があろうが授業参観があろうが、動物病院に飛んでいかなければいけないのです。
 まかり間違って高齢のウサギさんを食欲不振の状態で3,4日も放置しておけば、完治させるまでに数週間とか下手すると数ヶ月病院に毎日通って点滴をし続け、毎日流動食を飲ませ、毎日薬を飲ませ、すごい治療費を払う羽目になります。
 メスは避妊手術をしないと子宮癌になる可能性が高く、犬や猫よりも手術のリスクはずっと高いです。
 骨折しやすく、ケージの中でパニックを起こすだけで骨折することもあります。
 適当に大量のペレットを与えていると、不正咬合になって、毎月歯の処置で麻酔をかける羽目になります。
 面倒でもペレットはグラム単位で測ります。
 「正しい飼い方」も年々更新され、飼い主さんにも飼い方の勉強をして貰う必要があります。
 おやつも基本あげられないので、つまんないです。

 …こんなこと書くとうさぎを飼う人がいなくなって、おまんま食い上げになっちゃうかもしれませんが、それでも知っていてほしいのです。

 こんなに大変だけど、それでも飼うだけの価値があるのがウサギです。
 うさぎに限らず、モルモットだって、チンチラだって、犬だって、猫だって、みんなきちんと飼うのは大変なのです。
 その大変さをよくよく知った上で、飼ってあげてほしいのです。
 その大変さを十分覚悟の上で、飼ってあげてほしいのです。

 口が裂けても「こんなに大変だとは知らなかった」とは言わないであげてほしいのです。

 お家で人間の赤ちゃんが生まれるとき、きっと生まれる前に育児書の一冊や二冊は読むのではないでしょうか。
 動物も一緒です。
 まず飼い方の本を読み、本当に自分の家庭でその動物を飼えるだけの時間と、労力と、お金を用意できるのか、家族と話し合ってほしいのです。
 薬や流動食を飲ませるときは、家族の協力も必要です。
 うさぎは一人で飼うのはとても難しいのです。

 よくよく考え、よくよく悩み、その上で飼ってあげてほしいのです。
 手間がかかる分かわいいのです。
 愛情を注ぐからこそ、返してくれるのです。

 すごく大変、でもすごくかわいい、それがうさぎです。 


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