今私は病院通いしてます。
いわゆる医者の不養生というやつでしょうか、プレーリードッグに利き手の甲を噛まれてドラ○モンの手のように腫れております。
点滴を打たれ、ときに失敗され、傷口に鉗子をつっこまれてと、自分が日頃動物たちにしていることをされる側に回り、動物たちの気持ちがほんの少し見えてきたような気がします。
動物に噛まれるのはしょっちゅうですが、物もつかめないほどの痛手を負ったのは初めてで、数年ぶりに病院に行きました。
利き手が使えないと言うのはなかなか不便な物で、箸もうまく使えない状態です。
「痛いですけど我慢してくださいねー」と言われながら傷口に鉗子をつっこまれて処置されると、何の罪もないお医者さんに向かって恨み言の一つも言いたくなります。
さぞかし動物たちは私たち獣医師を恨んでいることでしょう。
診察台の上に立つ動物たちは皆一様におびえた目で私を見ます(時々例外もいますが)。
がたがたと震え、あるいは毛を逆立て、隙あらば噛みついてやろうと睨んでくる子達もいます。
よくよく考えるとなんと因果な商売でしょう。
大好きな動物たちに嫌われ、怪我をし、睡眠時間はごくわずか。
生活は不定期で、盆も正月も全くない。
大晦日も病院で越して、実家に変えるのは年に一回くらい。
給料はびっくりするほど安くて、ようやく先月買った車も中古の軽四。
・・・なんだか書いてるうちに愚痴っぽくなってきましたね。
とにかくドラマや小説で出てくる獣医さんほど華々しい物はなく、よくよく考えるとつらい商売です。
まあ、どんな仕事にもつらいことはたくさんあるのは当然なのですが、動物好きには何ともきつい職業なのかもしれません。
では、この獣医師という仕事を辞められるか、といわれると、これはなかなか止められるものではありません。
就職難だからか、というとそういうわけではなく、やっぱり楽しいのです。
有り体に言えばやりがいがあるのです。
自分(あるいは他の獣医師)がいなければ、治らなかったであろう病気が治り、放置していれば命を落としたであろう動物たちが、元気に尻尾を振りながら帰っていく。
たとえ自分に対して尻尾を振られることが滅多になくても、その尻尾を見て飼い主さんが「ありがとうございました」と感謝の言葉を言ってくれる。
なんだかんだ言いながら、獣医師やっててよかったーと思う瞬間が確かにあるのです。
つらいなーと思う瞬間の方が、回数としては間違いなく多いのですが、それでもこの喜びは止められない魅力があるのです。
みなさんが思っているよりもずっと獣医師はみなさんの感謝の言葉に喜びを感じているのです(そんなに顔には出しませんが)。
みなさんが思っているよりもずっと獣医師は動物たちを早く助けてあげたいと思っているのです(すべての獣医師がそうかは知りませんが)。
かなり前に骨折の治療中の犬がいて、飼い主さんから「わざと治療を長引かせてもうけようとしてるんじゃないのか!」と怒られたことがありますが、滅相もない(長引かせても私の給料には違いがありませんし)。
いつくっつくか、まだくっつかないか、ちゃんとくっついてくれるのか、とレントゲンを見るたびに一喜一憂しているのです。
こうして休日に自宅でホームページの更新をしていても、自分が担当している患者さんの治療経過が気になって病院に電話することもあるのです(それはそれで難儀な仕事ですが)。
「ありがとう」という単純な言葉でがんばれる、単純な仕事なのです。
どこかで誰かが自分の仕事や作品を喜んでくれているという物ではなく、面と向かって感謝の言葉を聞けるありがたい仕事なのです。
こんなホームページを見に来てくださっている方々の中に、獣医師を志してらっしゃる方がはたしているかどうかわかりませんが、この駄文が将来を決める一助となれば幸いです。
これほど動物好きにはつらく、楽しい仕事はないと私は思うのです。
こんなに手が腫れあがっていても、それでもこの仕事しか自分にはないと思えるのです。
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