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アレス動物医療センター

給水ボトルからお皿へ

2017/5/3

 私が獣医師になりたての頃は(20年ほど前)うさぎが下痢をしたらヨーグルトを食わせろと言われていたと思いますし,パパイヤなどのタンパク分解酵素も毛球症に効くと言われていましたし,水は給水ボトルのほうが衛生的で良いと言われていたと思います(多分).

 それがいつの頃からかうさぎにヨーグルトはあまり意味が無いと言われ始め,毛球症予防には牧草が大事と言われ始め,水は給水ボトルよりもお皿(あるいはケージ取り付け型の食器)が良いと言われ始めました.

 ひとりごとで何度も書いているかもしれませんが,うさぎの分野は3年経てば常識が変わってしまう日進月歩の分野です.

 もう半年ほど前になりますが,朝起きたときに首に鈍い痛みが走りました.
 あれ?寝違いにしてはちと痛い,ということですぐに整形外科へ.
 お薬と湿布を出していただいて1週間.
 この間首を動かすどころかベッドから起き上がったり,寝返りをうつことも難儀する状態.

 1週間経ったあたりで,首の痛みが引いてきた代わりに,左腕のあたりに軽いしびれが…
 あ,これはいかんやつだ
 さんざん私が診断してきたやつだと思って,再度病院へ

 早くMRI撮りに行ってくださいとか言ってくれないかなーとか思いながらおとなしく1月通院し,それでも治りきらないので,とうとう主治医の先生が「MRI撮ってきて」,と大きい病院を紹介してくださいました.
 診断名はやっぱり「頚椎椎間板ヘルニア」でした.

 病院にやって来る首の椎間板ヘルニアの子も結構前足を上げてやってくることが多いので(そして飼い主さんは骨折したとか,捻挫したとかおっしゃってやってくるのですが),ああ この首の痛みや手のしびれがあの子達の気持なのかと変な実感を覚えました.

 私の場合は何もできないほどの痛みというわけではなかったのですが,それでもやはりどこかかばったような生活をしているのか,あるいは痛くないように無意識に首や手の可動範囲を自制しているのか,どこか不自由な生活という印象がありました.
 先日ようやく通院を終え,今はほとんど痛くない(つもり)なのですが,まあ飛び出た椎間板が減っこむわけでもないので,多分うまく付き合っていかなければいけないのだと思います.

 首の椎間板ヘルニアは私のように人間にも出ますが,ダックスフンドやトイプードル,チワワなどの小型犬種でもよく診ます.
 そして最近では高齢のウサギさんでも多いのではないかと言われてきています.

 実際うちの患者さんにもCTで首の椎間板ヘルニアが見つかった子がいて,高齢のウサギさんたちを片っ端からCT撮ってみないとわからないのですが,もしかしたら結構な率で隠し持っているのかもしれません.
 今のところ,私や犬のように前足を上げてやってくるウサギさんはあまり見かけませんが,私同様上を向くのを苦痛に思っているウサギさんはひっそりといるのかもしれません.

 ちなみに給水ボトルよりもお皿などでの補給が良いと言われ始めた理由の一つにこれがあるそうです.
 例えば1kgのうさぎさんが本来約100ccのお水を1日に飲まなければいけないとすると,ここで上を向いて給水ボトルから水を飲むのが苦痛になってくると60ccくらいしか飲まなくなる(必要最低限ギリギリの量しか飲まなくなる).
 そうすると慢性的に脱水状態が続いて,尿結石や腎不全の原因になってしまう.
 という危険性があるそうなのです.

 たしかに知り合いの獣医さんで水分をあまり取らない方がいて(3時間の飲み会を1杯のウーロン茶だけで過ごすツワモノ),尿道結石になったことがあるとおっしゃっていました.
 まあ水の問題だけではないでしょうが,水分を取らないということは色々と弊害が出てくるものです.

 私のような根性無しは首が痛いとベッドから起き上がることもできずに,ゴロゴロゴロゴロ転がってしまうのですが,チョー我慢強いウサギさんなんかは,我慢してしまって気づいてあげることがなかなかできません.

 痛けりゃ痛いと言ってくれれば良いのに,「弱みを見せたら負け」と言わんばかりに我慢してしまうのです.

 うさぎも年々高齢化が進み,最近では10歳超えのウサギさんも結構来院するようになりました.

 それは飼い主さんたちが頑張って正しい飼い方をしてくれているおかげであり,あるいはたくさんのうさぎの診療に情熱を燃やしている獣医さんが増えてきたお陰でありと,とても良いことなのですが,今まであまり見なかった高齢のウサギさん特有の病気が増えてくるのかもしれません.

 少しでも長く生きてほしいですし,少しでも苦痛少なく過ごしてほしいです.
 些細な事かもしれませんが,給水ボトルをお皿に変えるということは,もしかしたらとても大きな意味を持つのかもしれません.

 ただ,今までずっと給水ボトルだったのに,いきなりお皿に変えては危険です.
 まずは今までの給水ボトルをつけたまま,お皿のお水も取り付けてみて,お皿からも飲んでいることを確認してから給水ボトルを片付けてあげてください.
 うさぎは我慢強いけれども,デリケートな生き物です.

 慌てず,ゆっくり切り替えてあげてください.

 


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