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アレス動物医療センター

一番のご褒美

2016/10/1

 ありがたいことに、どうにか今月無事ウサギの本が出版されました。
 
 ちなみに飼育書などではなく、獣医師向けの本ですので、一般の人は買わないでください。
 高いですし、エグい写真が結構載っていますので、目の毒です。

 まあ、売れるかどうかは別として、6年間ちまちま連載してきた内容に、書き下ろしの原稿を80数ページつけて、気が狂うほど校正を重ねての出版ですので、なかなか感慨深いものはあります。

 たくさんの患者さんや、症例を紹介してくださった石川、富山、岐阜の動物病院の先生方の協力と、執筆時間を作ってくれたスタッフ、編集作業に根気よく付き合ってくださった出版社の方々、そしてここ1年自宅で内職作業をしていても、怒らずに見守ってくれた奥さんのおかげです。

 そして何より、自分をこの仕事で食べられるまでに育ててくださった、師匠たちのおかげです。

 度々ひとりごとで書いていますが、私はとある大阪の犬猫中心の普通の動物病院で修行した獣医師です。
 外科専門の師匠と、内科専門の師匠と、眼科専門の兄弟子さんに育てていただいた一般の獣医師です。
 こんなホームページを作っていますが、本職は犬猫の獣医師です。

 ですから私のウサギの診療方法は、師匠たちに教えていただいた外科、内科、眼科の知識をそのままウサギに当てはめたものであり、師匠たちに教えていただいた技術、知識がなければ、そもそも成り立っていないものです。

 ウサギに力を入れ始めたのは、ウサギが好きでというのももちろんありますが、修行していた動物病院にやってきたウサギやフェレットなどのエキゾチックアニマルの診療を、師匠たちがあまりやりたがらなかったので(そもそも専門外ですし)、結果私が多く診ることが多かったことに由来するのかもしれません。
 たくさんウサギやフェレット、ハムスター、モルモット、チンチラなどの診療を担当していると、必然的に勉強をせざるを得なくなり、勉強しているうちにさらに興味が出てきて、気がつくとエキゾチックアニマル診療に没頭し始めていたように思います。
 何処かで師匠に認められたい、「あいつ役に立つな。」と思われたいという、非常に幼稚な願望もあったかもしれません。

 それを今更気づいたのは、ほんの数日前でした。

 2週間ほど前、本ができ、出版社のご行為で3冊ほど贈呈本をいただきました。
 一冊は自分の病院用に、一冊は実家の両親用に、そして最後の一冊は師匠の病院に送りました。

 送って1週間ほど立った頃でしょうか、見知らぬ携帯番号から電話がかかってきました。
 
 何故か名前を名乗らず「もしもし沖田先生の携帯電話でしょうか?」と切り出された瞬間、4,5年ぶりに耳にするお声でしたが、すぐに師匠だとわかりました。

 「○○先生ですよね?」とお聞きしても、何故か認めず(笑)。

 「良い本を送っていただきまして、ありがとうございました」とおっしゃいました。

 その後「元気にしてますか?」としばらく世間話をしていただき、何故か最後まで師匠であることは認めずに電話を終えられましたが、自分でもびっくりするくらい嬉しかったのです。

 本を出版することになり、両親も、妻も、友達も皆声を揃えて喜んでくれ、褒め称えてくれたのですが、本当に何よりも師匠からの電話が嬉しかったのです。

 そして「ああ、自分はこんなに師匠に褒めてもらいたかったんだ、師匠に認めてもらいたかったんだ」と初めて気づきました。
 もちろん獣医師としても外科医としても、到底師匠には遠く及ばず、間違いなく永遠に師匠を超えることなど出来ない不器用で、努力不足の私ですが、めちゃめちゃ嬉しかったのです。
 あの言葉をもって「獣医師として認められた」といえるのかは疑問ですが、それでも天に舞い上がるほど嬉しかったのです。
 
 わかりやすく言うと、ガンダムに憧れていたボールが、ジムに昇格したくらいの感じでしょうか(わかりにくい)。

 父親見認められたくて一生懸命あがいている子供のようが、「お前も一人前になったな」と言ってもらえたような喜びがあったのです。

 本が出版できてよかったなと改めて思いました。
 たとえ印税がびっくりするほど安く、一冊売れてもガンプラが1つ買える程度しか実入りがないとしても、本当に良かったと思います。
 この数年間の努力が全て報われたと思います。

 師匠の声を数年ぶりにお聞き出来て、本当に良かったと思うのです。
 


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