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アレス動物医療センター

移動ペットショップ

2016/9/2

 移動ペットショップってご存知でしょうか?
 
 ホームセンター等のイベントで「ワンちゃん、猫さん100匹大集合!!」的な感じで、どこかしらの遠くの県からわざわざやってきて、2-3日ほど犬や猫を販売して、帰っていくというペットショップさんです。

 あれって、他の県でもやってるんですかね?
 年に数回富山にもやって来るんですが、すごいなーって思うんです。

 うちの病院には今私を含めてスタッフが毎日10人位出勤しているのですが、入院患者さんが10匹もいれば、もうてんてこ舞いです。
 一匹の犬がうんこをしたら、隣のケージに移し、タオルを消毒薬に漬け込み、手を洗い、消毒し、とか思ったら他の猫がおしっこをして、また別のケージに移して、消毒し・・・
 当たり前ですが、何かしらの病気をもってると、うつったりすると大変ですから、一人触ったら手を洗い、消毒し、また一人触ったら手を洗い・・・
 もちろん食器を介して何か病気がうつっても困りますから、食器も全て消毒したものを使い…
 ともう、大変。
 洗濯に消毒に掃除にエサやりにと、どれだけ人出があっても、足りないです。

 それを「ワンちゃん、猫さん100匹大集合」とかやるときに、スタッフが5人?10人?いるのかわかりませんが、その労力たるやすさまじいと思うのです。
 おそらくすごい馬車馬のように働いているんでしょうね。
 それともひょっとしてスタッフ100人位でやってらっしゃるんでしょうか。
 
 それに生後2ヶ月程度の赤ん坊の犬、猫を関西や関東から何百キロも離れたところに体調を崩さないように運ぶというのもすごい労力だと思うのです。
 トラック1台や2台で50匹とか100匹の動物を運ぶとなると、誰か一人でも伝染病や寄生虫を持っていれば、あっという間に全員に行き渡るでしょうから、あれは一体何十台のトラックに分けて運んでいるんでしょうね。
 10台?もしかしたら動物の健康を考えて20台位で運んでいるのかもしれません。

 しかも運ぶのは生後2ヶ月とかの赤ちゃんなわけですから、おそらく1時間運転しては休憩し、1時間運転しては休憩し、と相当気を使って運搬されているに違いないのです。
 そうでもなければ、とんでもないストレスを加える事になるわけで、そんなことを動物大好きなペットショップさんがやっているはずがありません。

 広告なんかも新聞の折込チラシなんかで大々的にやってらっしゃいますから、運搬料と広告費なんかを合わせると、一体どれほどのコストがかかっているのか計り知れません。

 本来であれば実店舗のある関東なり関西なりのお店で販売していれば、それらのコストがかからないわけですから、あれで利益を出すというのはよほどのテクニックと、マンパワーと、他の県の動物好きの方に犬猫を届けようという情熱の賜物なのではないでしょうか。
 おそらくいずれ、がっちり○ンデーか何かで取り上げられるのではないかと思います。

 ただもしかしたら、それほどのノウハウも熱意もモラルもスタッフも揃っていないのに移動ペットショップを運営している人もひょっとしたらいるのかもしれません。

 先日とある移動ペットショップで犬を買ってきたという飼い主さんが何件か来られ、そのうち3匹の犬で寄生虫が見つかり、2匹の犬でパルボウイルスという伝染病が見つかりました。
 そしてその2匹のパルボウイルスの犬はどちらも死んでしまいました。
 まだ家に来て1周間程度という短い期間で天に召されてしまいました。

 私の力量不足で、助けてあげられず、本当に申し訳なく思っています。
 どちらも小さいお子さんがいらっしゃる家庭で、入院でお預かりするときに、その小さい女の子に「どうか助けてあげてください」と丁寧にお願いされたのに、それに答えてあげることが出来ませんでした。
 小さい方の犬はまだ1kgにも満たない状態で、これから飼い主さんに愛され、楽しいことがたくさんあるはずのワンちゃんでした。
 その未来を繋いであげることが出来ませんでした。

 いやいやこれは単なる責任転嫁ですね。
 移動ペットショップさんは一生懸命消毒や世話をされていたにもかかわらず、運悪くなっちゃっただけなのかもしれません。
 うつったのではなく、たまたまパルボウイルスを持っていた犬を二匹、偶然仕入れてきてしまっただけなのかもしれません。

 やっぱりあの子たちを助けられなかったのは、移動ペットショップさんのせいではなく、私の力量不足だったのだと思います。
 素晴らしいテクニックと情熱とモラルをもって運営されている移動ペットショップさんのせいであるはずがありません。
 自分の腕の未熟さを棚に上げて、馬鹿なこと、恥ずかしいことを書いてしまいました。
 申し訳ありません。

 こんどこそパルボウイルスの犬が来ても、どうにか助けられるように精進したいと思います。 


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