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アレス動物医療センター

動物アレルギーの獣医師

2016/8/4

 随分遅れてのひとりごとですが、別に病気でもなんでもありません。
 気がついたらこんな日になっていたというだけです。

 この仕事を初めてかれこれ20年近くになりますが、睡眠時間も短いし、ストレスも多いし、体力勝負だし、少なからず頭も使うしとまあぼちぼち大変な仕事です(どの職業も大変でしょうけど)。

 歳も43になり、風邪も傷も治りにくいし、疲れも取れにくいお年ごろですから、そろそろ体の不具合も出始めます。

 とか言いながら、意外と血液検査などはなんともないのですが、まあもともと持病のアレルギーが先日ド派手に出てしまいました。

 もともと皮膚がまっとうな時期は一年にわずかの期間しかないのですが、一時両手と顔が湿疹だらけになり、汁が出てジュクジュク、顔はかさぶただらけで、ジョ○ョの奇妙な冒険に出てくる石仮面のような風貌になってしまったのです。

 もともと子供の頃からアトピー持ちで、ホコリを大量に吸うと喘息も出るくらいですから、まあ動物のアレルギーもあるだろうなぁとは思っていたのですが、特にアレルギー検査もせずに生きてきました。

 特に数年前から猫と、うさぎに関しては、アレルギーが出てしまう子(すべての猫やウサギさんで症状がハデに出るわけではなく)に関しては診察室で喋っているだけで(触らなくとも)呼吸が苦しくなってくることがあるくらいで、調べるまでもなく…というところでした。

 今まで病院の先生にも薦められたことがなかったですし、調べたいと思ったこともありませんでした。

 きっとアレルギーがあるだろうなと思っていながらも、血液検査の結果ド派手な陽性の数字を見てしまうと凹むじゃないですか。
 わかったからといって、この仕事をやめるわけにもいかないし、やめる気もないし、やめたくなっちゃったらどうしようっていうのもありましたし・・・

 ところがまあ、そんな石仮面みたいな顔になってしまうと、さすがに「知りたくない」とか言ってられないわけで、お医者さんに薦められてアレルギー検査を受けることになりました。

 で、まあ想像通りです。
 IgEは測定不能なくらいのぶっちぎり具合
 0〜6のクラス分けでハウスダストが5,犬4,猫4,うさぎ3,ハムスター4,モルモット2,セキセイインコ1
 だったかな?
 まあ、でるわでるわ
 予想通りというか、予想を上回るアレルギーっぷり
 とほほ、というところです。

 お医者さんにも「ハムスターには噛まれないようにしてくださいね。アナフィラキシーショックとか起こすと命に関わりますよ」と言われるします。

 「はい気をつけます」
 とか言いながら、前日噛まれたハムスターの咬み傷をそっと隠したりなんかして

 今はもう薬で随分人らしい風貌には戻っているのですが、まあここまで悪化したのは初めてだったのではないでしょうか。

 我ながら意外だなと思ったのが、結構ショックをうけるかなと思っていたのですが、鈍いのか案外なんとも思わないというところで、「この仕事続けられるだろうか!?」とかいうような深刻な悩みは生まれませんでした。

 やっぱりというかなんというか、私の中では「獣医師をやめる」という選択肢はどうもこれっぽっちも無いようで、せいぜい「困った困った」と苦笑いをする程度のようです。
 医者の不養生といいますか、お医者さん泣かせの迷惑な患者だなあとは思うのですが、やっぱりこの仕事が好きでしょうがないんでしょうね。

 65歳位まではたぶんこの仕事を続けるでしょうから、あと22年位ですか。
 どうにか誤魔化し誤魔化しやっていくしかないのかなぁと思います。

 アレルギーはともかく、なかなか良い経験をしたなと思うことが一つありました。

 それはお医者さんに「怒られる」ということです。

 「怒られる」と言っても、本当にお医者さんが目くじら立てて起こっているわけではなく、おそらく先生自身は怒っているつもりすらなくだと思うのですが、最初の診療時に4回ほど
「もうちょっと早く来てもらわないと」と言われてしまいました。

 種類は違うとはいえ、気持ちはとても良くわかります。
 だって、私もしょっちゅういいますもん。

 今まで私も診察で「せめて1週間前に来ないと」と飼い主さんにグチグチ言うことがありました。
 それを受けて飼い主さんが受付の看護師さんなんかに「先生に怒られちゃった」とか言っているのをよく耳にしていました。

 『いやいや怒ってないから、あんなに優しく話したじゃないか』とかその時は思っていたのですが、いざ自分が言われてみると、あれは「怒られた」という表現になるんでしょうね。

 自分のなけなしの愛想を振って話しているつもりでも、あれはやっぱり聞いている側からすると「怒られた」になるんだと思います。

 言われて初めて分かる患者さんの気持ちといいますか、ああ患者さんは私にお説教を受けるとあんな気持ちになるんだなぁと思いました。

 いや、だからといって、お説教をやめるつもりはないですけどね。

 「来るのが遅い」と思ったら、やっぱり「もうちょっと早く来てくれないと・・・」と変わらずいうでしょう。

 ただ『この言葉できっと飼い主さんは少なからず傷つくんだろうなぁ」と思いながら言い続けます。
 傷つけてゴメンねと思いながら、お説教し続けます。

 いえいえ別にSッケがあるわけではありません(たぶん)。
 飼い主さんを傷つけてでも、命を護るためには言わなければいけないことがあるのです。

 あの皮膚科の先生も、きっとそんな思いだったに違いありません。 


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