北陸新幹線ができ1年、随分人の流れが変わったように思います。
うちの動物病院も随分変わったことがあり、なるほどこれが新幹線効果か、と思います。
何が変わったかというと、うちの病院は北陸新幹線の新高岡駅から歩いて5分程度のところに立っているので、新幹線に乗って遠くから患者さんがやってくるようになった。
…というお話ではなく(新幹線って、動物は乗っけてくれるのかな?)、私を含めスタッフが良く東京に出向くようになったということです。
まあ、速い。
長野まで1時間かからない。
東京でも2時間半くらい。
今までは学会やセミナーというと大概関西に向かっていたのが、完全に東京に向かうようになってしまいました。
ちなみに大阪まではサンダーバードという電車一本で乗り換え無しで行けたのが、新幹線ができたお陰で?何故か金沢で乗り換えなければいけなくなってしまい、大阪出張が不便不便。
東京まで片道3時間かからないと、ちょっとした小旅行もできるようになり、先日は嫁さんと上野動物園とスカイツリーに日帰りで行ってきたくらいです(チョーお上りさん)。
3月から獣医師がもう一人増えて、獣医師5人体制になったこともあり、今までは諦めていた関東圏での勉強会も、結構気軽に行けるようになりました。
とは言え往復5時間かけて、患者さんを1日ほったらかしにし、体力を消耗してまで勉強会に行く価値なんてあるの!?と思われるかもしれませんが、やはり学会や勉強会は大きな力になるのです。
獣医学はなんだかんだ言ってもまだまだ発展途上の学問です。
たとえ同じテーマの勉強会でも2,3年いかないと、それまで常識だと思っていた検査法や治療法が、ガラッと変わっていたりするのです。
そして勉強会に行くたびに自分の知識の不十分さに気づくのです。
先日東京大学で行われた脳神経外科の勉強会に参加し、目からウロコが落ちるような思いを何度もしました。
ありがたい講演を聞きながら、そういえば今通ってるあの患者さんの症状と、今話されている内容が酷似している、とか。
5年前助けてあげられなかったあの子はもしかしたら今発表されている治療方法で助けてあげられたんじゃないのか、とか。
発表内容と重なる症状の患者さんが、次々と脳裏をよぎっていくのです。
そして、帰ったら早速その患者さんにこの治療法を薦めてみよう、という思いとともに、この知識がもっと早く獲得できていれば、あの子もあの子も助けられてたんじゃ、という後悔が次々と押し寄せてくるのです。
色々な勉強会に参加すると、「すごくためになった!!」という喜びと、「自分の未熟さで助けられなかった命があった」という憂鬱な思いを同時にすることになります。
もしかしたら憂鬱な部分のほうが、ちょっと多いのかも?
それでもやはりこの職業は歩みを止めるわけにはいかず、どんなに自分が不甲斐ないと思っても、可能なかぎり成長し続けるしかないのでしょう。
きっとこの職業を引退する歳になっても、同じ思いをするのでしょうね。
治療が停滞していたあの子を助けられるかもという喜びと、あの時こうしていればあの子を助けられたのかもという苦悩を、引退(予定)の65歳まで享受し続けるのでしょう。
ずっと悔しい思いをしながら、乏しい体力に鞭打って、勉強会に参加し続ける。
自分がやっていたことに誤りがあった、自分のやってきた治療法よりもっと良い治療法があったという事実を知るために新幹線に乗って東京へ行くのです。
ちょードMですね。
でも学会や勉強会に行くと、何十人、何百人という獣医さんが同じように仕事を休んで全国からやってきているのです。
きっとみなさん同じ思いで参加されているのではないでしょうか。
全国選りすぐりのドMの集団です。
でもそのドMの集団が、地域の獣医療を支えているのかもしれません。
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