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アレス動物医療センター

動物にCTを使う意味

2015/12/3

 早いもので、もう12月です。
 先生も走る師走ですよ。

 ぼんやりしていたら、もう12月も3日。
 「11月のひとりごとがまだ掲載されないのですが、体調を崩されてますか?」というメールをたくさんいただき
「あ、もう12月なの!?」と気づく始末です。

 体調崩してません。
 ぼんやりしてただけです。

 早いものでというと、もう今の動物病院に移転してから4年たちました。
 あっというまです。
 大げさでなく、ほんとに去年か一昨年に移転したばかりのような気がします。

 移転とともにCTを使い始め、年間200件弱の患者さんが利用されています。
 実際使ってみるまで、こんなに便利な機械だとは思っていませんでした。

 何分私が学生の頃は大学でCTのことを学ぶ機会がなかったですし(今はあるんですかね?)、当時は動物用のCTに関する獣医学書もありませんでした。
 しょうがないので人間のお医者さんのCT書籍を読み倒し、大学で働く友人にわざわざ富山まで来てもらってレクチャーを受け、という見切り発車。
 うん千万もの借金をしてまで購入したものの、ほんとうに使えるのかしらん?とやや不安な気持ちで運用をはじめましたが、まあ便利便利。

 今まで自力では診断がきちんとできてなかった脳腫瘍や肝臓腫瘍、脾臓腫瘍、肺転移など次々とわかるようになりました。

 少しだけ肝臓の数値が高く、軽度の肝不全かと思ってCTを撮ったら、肝臓腫瘍の初期で、手術で取り除くことができた子。
 薬を飲んでも発作が続き、CTを撮ったら脳腫瘍が見つかった子。
 レントゲンでは肺に大きな腫瘍が1つあるだけで、手術できるかも、と思ったらCTの結果すでに転移が多数あり、手術をしなくて済んだ子(手術をしても寿命が変わらないのに、メスを入れなくて済んだ、というような意味です)。 
 今まで手術に長時間を要していた門脈体循環シャントという病気の手術が、1時間かからずに終えることが出来るようになったりというメリットなどもあります。
 試験的開腹(病気の原因を突き止めるための検査としての開腹手術)も極端に減りました。
 発見が難しい病気も、お腹を開かなくとも診断できるケースが増えたのです。

 CTを使っての診断をするようになってつくづく思うのが、今までの自分の診断がいかに不完全であったかということです。
 触診や視診、血液検査、レントゲン、神経学的検査など、様々な知識を駆使して診断していた疾患が、CTを撮ってみて、間違っていたことに気づきました(自分を弁護するわけではないのですが、診断があってたものももちろんあるのですが)。

 首の椎間板ヘルニアと思っていたら、CTの結果脳腫瘍だったり、特発性のてんかん発作だと思っていたら水頭症だったり(脳に水が溜まる病気です)、腰の椎間板ヘルニアだと思っていたら脊髄の腫瘍だったり。

 恥ずかしい話ですが、CTを撮るようになってから、自分の診断の不完全さに気付かされるようになりました。

 当たり前ですが、人間と異なり言葉が通じません。
 人間だったら、どこが痛いの?苦しいの?気持ち悪いの?と聞けばよいのかもしれませんが、動物は答えてくれません。
 本当は答えてくれてないわけではないのかもしれませんが、私にはそれを完全に汲み取ることができません。

 あるいは動物は痛みに強く、なかなか症状を示しません。
 「痛みに強い」と言っても、私達と同じように痛いはずなのですが、それを我慢できる根性があるのです。
 うさぎは骨折したくらいでは食欲が落ちない子がほとんどです。
 手をプランプランさせながら、普通に牧草をボリボリ食べてたりするのです。
 うちのはにわさんも、昨年避妊手術をしたのですが、手術した日の夜には普通に笑いながら走り回って、普通にドッグフードを完食してました。

 くどいようですが、痛くないわけないのです。
 我慢しちゃうだけなのです。

 ただだからこそ、多くの病気が発見しにくかったり、あるいは発見が遅れてしまったりするのです。

 モノ言わぬ生き物だからこそ、そして我慢強い生き物だからこそ、動物にとってCTは大きな意味があるのかもしれません。

 誤解があると困るのですが、CTがなければダメというわけではないのです。
 誰かが言ってました。
「レントゲンは設計図のようなもの、CTは立体模型のようなもの」と

 腕の良い大工さんは設計図を見ただけで、正確に建物をイメージすることが出来るのでしょうが、一般人は設計図を見ただけでは完成した建物を想像することはできません。
 設計士さんが作ってくれた立体模型を診て始めて、ああこんな家なのかとイメージすることが出来るわけです。

 本当に腕の良い獣医師はCTなどなくともレントゲンや血液検査でほとんどの病気を診断することができます。
 どうしてもCTでなければ診断できない病気というのは、あらゆる病気の中でごく一部なのです。

 そのごく一部の病気の診断にとって、そして腕利きの大工ではない私のような凡庸な獣医師にとって、CTはとても大きな武器になるのです。
 ましてやスーパードクターがCTを使ったら、もっともっとたくさんの子を助けられるのかもしれません。

 昔何かのCMであったじゃないですか
「美しい人はより美しく、そうでない方もそれなりに・・・」
 つまりはそういう機械なのです。


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