うさぎの食欲不振 甘く見てませんか!?
このサイトの「うさぎの病気」や「うさぎの疑問質問」などでも折りに触れ記載はしているので、もうこのサイトに長く通われているかたがたにとっては、いたるところで「うさぎは24時間食欲が落ちると、もう危ない!」ということをご存知かもしれません。
あるいは雑誌や他のうさぎのサイトなどを閲覧して「いやいや、もう耳にタコですよ」と思っている方も多いでしょう。
それでもやはり毎日診療していると「3日前から食欲がなくて」とか、「1週前から食欲が落ちてきて・・・」と来院される方は跡を絶たないのです。
皆さん口を揃えておっしゃいます。
「前も一度こういうことはあったけど、次の日には普通に食べるようになったから・・・」と
言いたいことは分かりますし、気持ちはわからないでもないのですが、去年の食欲不振は翌日治ったから、今年の食欲不振もすぐ治る。
来年の食欲不振も、5年後の食欲不振も、翌日にはすぐ治る。
なんて、都合の良いことが続くのであれば、動物病院など必要ないわけで、食欲不振でお亡くなりになるうさぎさんももちろんいないわけです。
うさぎは骨折しても、開腹手術をしても、痛みをこらえて食事をとってくれる生き物です。
信じられますか?
足がプランプランしてても、食欲あるんですよ?
人間だったらちょっと考えられないですよね。
でもうさぎは食べるんです。
食べないと死んじゃうから。
そんなうさぎがもし24時間もご飯を食べないとしたら、それはよほどの事情なのです。
骨折や開腹手術以上の苦痛が会って、初めてうさぎの食欲不振が起きるのです。
それはもう、よほどの状態であり、人間の感覚で「たった1日食べないだけだし」なんて言ってていい状態ではないのです。
もし前の年に1日食欲不振になって次の日にそれが治ったとしても、それは単に運が良かっただけ。
毎回そんなに運の良いことが続くと思ってはいけません。
うさぎは口から繊維質(食事)を摂ると、それに刺激され手帳が動く生き物です。
人間や犬、猫のように常時長が動き続けている便利な体ではありません。
うさぎはちょっとのペレットを与え、24時間目が覚めているときは大量の牧草を食べ続けるという食生活があって始めて、うさぎの胃腸は24時間動き続けてくれるのです。
ですから一度何らかの原因で食欲が落ち、牧草を食べなくなると途端に胃腸の動きは停止します。
胃腸の動きが止まれば、胃や腸内の食べかすが発酵し、胃腸内にガスがパンパンに溜まります。
ガスが溜まると苦しくて食事が取れなくなります。
食事が取れないと胃腸の動きがもっと止まります。
胃腸の動きが止まると、もっともっとガスが溜まって・・・
あとはもうジリ貧。
24時間食べないとその場でころんと死ぬわけではなく、そのせいで食欲不振の負のスパイラルがスタートし、ジリジリ苦しみながら死んでいくのです。
この負のスパイラルを止めるのは大変です。
毎日病院に通って点滴をし、腸の動きを良くする薬や食欲増進剤、整腸剤などを毎日朝晩飲ませ、流動食を1日5〜6回飲ませという治療が、食欲が戻るまで、延々と続くのです。
流動食など飲ませる量が多いと、一回30分かかるうさぎさんもいます(しかも二人がかりで)。
これが3時間毎に1日5回。
数日で治る子もいますが、ヘタすると数ヶ月こんな生活が続くのです。
どうです?大変でしょ?
仕事や家事の合間にこんなことを2,3ヶ月も続ける自信はありますか?
でも、それがうさぎなのです。
うさぎの食欲不振を放置するというのはそういうことなのです。
今年の夏も、たくさんの食欲不振のうさぎさんがやって来ました。
10月になって、まだ本調子にならず、通い続けている飼い主さんもいます。
6月はじめに5日間食欲不振でやってきたうさぎさんが、先週ようやく治療がおわりました。
一体治療費どれだけかかったのでしょう(人事ながら明細書を見るのが怖い)。
うさぎの食欲不振を5日間も放置しておいたほうが悪いんだ!と言ってしまえばそれまでですが、それを悔い4ヶ月近くも病院に毎日通い続けるのは本当に尊敬に値します。
かなり生活を犠牲にしたことでしょう。
最後まで心折れず戦い続けることは、そんなに簡単なことではありません。
ほんとうによく頑張られました(うさぎさんも飼い主さんも)
中には私の力及ばず死なせてしまった子もいます。
毎年夏をすぎるたびに、自分の力不足を痛感します。
ただの暑さ負け、湿度負け、毛球症、ストレス・・・と侮ってはいけません。
うさぎの食欲不振は、大げさでなく「命取り」なのです。
Don't take a hole
「あなどるな」ということです。
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