本文へスキップ

あなたがウサギに出来ることは 獣医師による うさぎ専門情報サイトです。

MAIL alles@usagi.cn

アレス動物医療センター

時をかけるうさぎ

2015/8/1

 時をかけるうさぎ

 と言っても、タイムリープずるウサギの話ではありません。
 先日「バケ○ノの子」を観にいって、あっさり感化されたわけでも・・・。

 要は「うさぎは24時間過ごすと、6日間過ごしている気分になるらしいですよ」というお話です。

 うさぎの年齢の数え方は諸説ありますが、ざっくりと最初の1年で人間でいうところの22歳になり、そのあと6歳ずつ年をとっていく。
 つまり生後1年で22歳。
 2年たつと28歳。
 3年で34歳、4年で40歳、5年で46歳…12年で88歳、てな感じです。
 
 つまり私が24時間ぼへーっと過ごして、「あ、もう1日たっちゃった」と感じていると、その横でウサギさんは「あ、もう6日たっちゃった」とか思っているわけです。
 
 ちなみに同じ考え方でいくと、犬、猫は24時間で4日間過ごしている(気になっている)ということになるわけです。

 だから私たちが、ウサギってたった12年しか生きないの!?かわいそー!!とか思っていても、ウサギさんサイドとしては「はぁ!?全然短いとか思ってないし!長生きだし!!」と思っているかもしれないわけです。

 逆にこちらが「昨日から食欲ないけど、元気だからもう少し様子見ようかな?」なんて考えてたら、ウサギさんサイドとしては「おい、お腹痛くてもうまる6日メシ食ってないんだけど、まだ病院連れてってくんないのかよ!」とか思ってるかもしれません。

 まあ、本当にうさぎがそのように思っているかはわかりませんが、うさぎの病気を考えるうえで、この発想は結構大事です。
 病院に連れていくべきかどうかの判断基準としても、多少お役に立てるのではないでしょうか。

 炎天下の中車の中に1時間入れておいたらぐったりしていた=炎天下の中車の中に6時間いたら熱中症になった(当たり前)。
 お腹の中の腫瘍をとるために2時間の全身麻酔手術を受けた=全身麻酔12時間の大手術を受けた。
 昨日から水を飲まなくなって、朝見たら急死していた=6日前から水を飲まなくなり、とうとう息を引き取った(急でも何でもない)。
 3日前から食欲がない=18日前から食欲がない
 ケージのすのこは週に1回洗う=トイレを6週に1回流す
 主治医の先生に乳癌の手術を勧められたが、たった半年様子を見ていただけで肺転移した=乳癌になって3年治療せず放置していたら肺転移した。
 手術をしても寿命が4年くらいしか伸びないならしない=手術をしたら24年寿命が延びるけどしない。
 もう6歳なので、手術はちょっと…=まだ52歳だけど、手術はしない…。

 まあ、後半の2つは価値観の問題でもあるので、必ずしもこの表現が適切かは微妙ですが、前半の部分は心当たりがある方もいるのではないでしょうか。

 うさぎに限らず、犬や猫でもよく飼い主さんに言われることがあって
「おとついまでは何ともなかったのに、昨日から急に食欲が落ちてきたなーと思ってたら、今朝にはぐったりしていて…。
 こんなに急に悪化するものなのでしょうか?」というものです。

 でもこれって、さっきの例のように変換すると
「うちの子2週間前までは何ともなかったけど、6日前から食欲がなくなって、とうとう今朝にはぐったりしてしまって…。
 そりゃ6日も食欲がなけりゃ、そうなりますよね」という感じになります。
 うさぎからすると、急でも何でもなく、当たり前なのかもしれません。

 私にとってうさぎの寿命を1年伸ばすということは、人間でいうところの寿命を6年伸ばすことであり、治療によって寿命が4年伸びるなら、24年寿命が伸びるということになるのです。
 だから飼い主さんにたった1年!?と言われても、内心「たったじゃない!」と思っていたりします。

 ただこれはあくまで私の価値観であり、飼い主さんもそのように思ってください、というわけではありません。
 大切なご家族という意味では人もうさぎもないわけで、その方が「たった1年」と思えば、それは傍らで私が理屈をこねても「たった」は「たった」なのです。
 
 ただ、せめてうさぎの状態を見るときに、まだ食欲が落ちてたった1日だから・・・とは思わないでください。
 というお話です。

 うさぎさんが半日食欲がなかったら、「もう3日も食欲が無い!!」と慌てふためいて欲しいのです。
 その感覚が、大切なうさぎさんの命をつなぎとめる大きな違いを産んでくれるはずです。


アレス動物医療センター

〒933-0813
富山県高岡市下伏間江371

TEL 0766-25-2586
FAX 0766-25-2584