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アレス動物医療センター

医療機器の発達

 医療機器の高度成長なんつって、大層な題名だとまあ硬い感じのまくらになってしまいますが、人間の医療同様動物病院の医療機器の進捗もめざましく、追いかけ続けるのもしんどければ、購入し続けるのもしんどい。

 先日DRという機械を購入しました。
 一般の方からすると、なんじゃそら、と思われるかもしれませんが、要はデジタルのレントゲンです。
 一枚一枚フィルムを現像するのではなく、レントゲンをパシャッと取るともう2,3秒でパソコン画面にパッと出てくるわけです。

 ちなみにこの機械を購入する前に使っていた機械がCR(パチスロじゃないよ)という似たような名前の似たような機械。
 
 これもデジタルのレントゲンなのですが、撮影してからモニターに表示されるのに2,3分かかるものでした。

 開業時に前に使っていた機械は単純に現像機。
 これは普通に現像室で5,6分かけて現像するというもので、本当に写真です。

 ちなみにこのCRもDRもそれぞれ全部ひっくるめると700万ほどします(各診察室にデーター転送して見るシステムとか何とか色々含めると)。

 まじか!?
 まどか☆マ○カ!?

 ってな金額ですが、マジなのです。
 6分が2分、2分が2秒
 その差ってそんな金額かけるほどのものなの?と思われるかもしれませんが、医療においてはスピードは力です。

 特に人間と違い、撮影の瞬間にうさぎが動いて写真がぶれた、なんてときは何度も撮影しなおさなければいけないわけで、2,3秒でレントゲンが確認できれば、ダメなら何度でも納得のいく写真が撮れるまでやり直すことができるわけです。

 少しでも早く診断をくだし、少しでも早く治療を開始し、少しでも生存率を挙げ、少しでも患者さんの待ち時間を減らすためには、2分か2秒かという差は、積み重ねれば大きな違いとなってきます。

 例えば数年前に導入した機械で、ソノサージという機会があります。
 どのサージ?
 いやソノサージ

 ってな機械ですが(ナンノコッチャ)、超音波凝固切開装置というもので、要は手術の時に血管をじゅっと焼いて、止血して、そのまま切るという機械です。

 避妊手術にかぎらず、ほとんどの手術で血管を切る作業が必要なのですが、太い血管を切るときなどは、何もせずにハサミでチョンと切れば、ピューと出血して、あっという間にさようならです。

 で、そうならないように、糸で血管を丁寧にくくり(場合によっては2箇所、3箇所くくり)、しっかり止血してから血管を切るわけです。
 そうすると脾臓癌や肝臓癌などで、たくさん血管を止血、切断しなければいけない場合は、ひたすらこの作業を延々と繰り返すわけで、大型犬に至っては凄まじい時間の手術になります。
 またちょっとの出血も許されないうさぎの手術などでは、少しの止血ミスも許されず、丁寧に丁寧に血管の止血、切断作業を行う必要があるのです。

 ところがこのソノサージ、結構な太さの血管もじゅっと焼いたらもう勝手に血管をシーリングして(シールのように血管を貼り付けて)、切断してくれる優れもの。
 今まで長時間かかっていた脾臓癌、肝臓癌の手術なんかもかなり短い時間で終わってしまいますし、出血もめちゃめちゃ少なくてすみます。

 うさぎの避妊手術なども手術時間は3分の1くらいに短縮され、あっという間。
 それでもリスクが高いのがうさぎの手術ですが、やはり手術時間の長さはそのままリスクの高さにつながるわけで、早く手術を終えることができるというのはすごい利点です。

 この機械導入してからというもの、もうほとんどの手術をこの機械で行い、もう以前はどうやって手術してたっけ、というくらい使いたおしています。

 ほんとうに便利です。

 ただそれとともにちょっと不安になったりもします。
 なんかもう、昔の地道に糸で血管を止血してっていう手術に戻れなくなってしまいそうです。

 腕が鈍ってしまわないか、とか本気で不安になることがあります。

 もちろんすべての手術でそのサージを使うわけではなく、今まで通り糸で止血しなければいけないシチュエーションもあるのですが、格段にその機会は減ってしまいました。

 これだけ便利な医療機械が次々と出てきて、この機械がないと出来ない手術だったり、あるいはこの機械があるとないとでは手術の安全性がぜんぜん違うということになってくると、今後開業する先生とかって、全部これらの機械を開業当初から導入しなければいけないのでしょうか。
 そうすると、一体どれだけの借金をしなければいけないのでしょう(まあ人事なのですが)。

 僕らのように便利な機械がなかった頃から手術をしている人間からすると、まだなにか停電なりの不測の事態があっても、戦いようがあるのですが、こういう機械があるのが当たり前の時代に育った先生たちって、そいういうときどうするんでしょうか。

 ま、ないならないなりに、どうにかするのかな?

 そんなことばかり考えてもしょうがないのでしょうが、心配症なのでついつい余計なことを考えてしまいます。

 先日自宅を建てたのですが、トイレの扉を開けると自動でトイレの電気がつき、自動でトイレの蓋が開き、事がすむと自動で流して、自動で洗浄して、自動て蓋を閉じてくれる仕様になってました。
 トイレの神様もびっくり、ほとんどトイレ掃除いらず。
 その名もアラウーノ(べた)

 奥さんと話してたんですが、将来子供ができて、生まれた時からそのトイレを使っていたら、小学校に行って初めてトイレにいくと、便所の前に立ち尽くしてるんじゃなかろうかと。

 なんかちょっと怖くないです?
 でも、その頃には小学校のトイレも自動で蓋が開くようになってたりして・・・



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