1%でも高く、1日でも長く。
私が思う獣医診療のベースとなる考え方です。
ウサギにかぎらず、犬や猫でも、1%でも改善率の高い選択肢を模索し、1日でも長く生きられる道を考えることが、この仕事の本文だと思っています。
もちろん寿命をのばすことだけが重要ではないのは当然で、なかには寿命よりも苦痛の軽減を優先すべき病気もあります。
あるいは、たくさんの注射や嫌がる薬を使って寿命をのばすことよりも、何もしないことを選択する飼い主さんもいるでしょう。
それが悪いとは全く思いません。
ちょっとでも長く生かしてあげたいという飼い主さんの気持ちも愛ですし、ちょっとでも苦痛につながることはしたくないという気持ちも愛です。
ただ獣医師は1%でも改善率の高い治療法があるのであれば、その知識、技術を修得するための努力は絶やしてはいけないと思いますし、1日でも寿命を延ばせる手段を考え続ける必要があると思います。
そして少しでも多くの選択肢を飼い主さんに提供し、どれを選ぶかは飼い主さんの価値観で決めて良いことだと思うのです(虐待に近い選択肢は許容できませんが)。
「そんな治療をしても、せいぜい伸びる寿命が半年なんでしょう!?」と飼い主さんがいうのは自由です。
それはその人の価値観で、私の価値観とは違うかもしれませんが、価値観に良いも悪いもないと思います。
ただ獣医師はその台詞を口にしてしまったらおしまいだと思っております。
「それを言っちゃあおしまいよ」です。
動物の苦痛をちょっとでも楽にしてあげられる選択肢、少しでも改善率高くする選択肢、その中間の選択肢、少しでも多くの選択肢を提供できる立場でなければいけないと思っております。
「1%でも助かる見込があるのなら、どんなにつらい治療でも耐えなきゃダメだ!」と言ってはいけないですが、「手術をしても30%の子しか助からないんだから、やめておいたら?」とも言ってはいけない職業だと思っています。
その辺りは飼い主さんの価値観で決めること。
獣医師は飼い主さんの選択肢を広げるために、1%の改善率を高めるためのたゆまぬ努力をただひたすら黙々と続けるだけです。
ただこれは私の獣医師としての価値観であり、「それは違う!」と思われる獣医さんもいるでしょうから、この価値観を他の獣医さんに押し付けるつもりはありません。
ただ自分の弟子たちにはこの価値観を押し付けてます(というかずっと一緒にいると、どうしても伝染してしまいます)。
先月のひとりごとで書いたエキゾチック研究会のセミナーに行ってきました。
今回のテーマはズバリ「うさぎの不正咬合」
この人テーマだけのために朝から夜までセミナーをし、北は北海道から南は九州まで(沖縄の先生もいたのかな?)、たくさんの獣医さんが集まって勉強するのです。
中には「どうせ何をやっても完治しないんでしょう!?」とおっしゃる方もいるかもしれません。
でも1%でも治る子が増えるのではないか、1日でも歯の処置の間隔を伸ばせる方法があるのではないかと、諦めきれない獣医師たちがこんなに日本にいるのだと実感しました。
「医療行為での死は耐えられない」という飼い主さんや「どうせ完治しないなら、痛い思いはさせたくない」という飼い主さんには無用な知識、技術かもしれません(くどいようですが、それが悪いとは思いません)。
でも「少しでも助かる可能性が高い方法を選んでください」という飼い主さんが病院に来た時に、きちんと全力でお応えできるよう、これからも頑張り続けなければと、あらためて強く思いました。
大阪の師匠は分野は違いますが今もその精神で戦い続けてらっしゃいます。
忙しい身と時間を削って、国内外を問わず一生懸命勉強し、新しい手術方法と真摯に向き合い続けています。
少なくとも師匠の今のお年までは私もそうでありたいと思いますし、願わくば私が65歳あたりで引退する(予定)まで、この思いを持ち続けていたいと思います。
あれ、オチも笑いどころもない!?
どうでもよいことですが、新居を構えました。
書斎という名の漫画部屋を作ってもらいました。
デスク以外部屋360度すべて本棚です(漫画の)。
おそらくそこには獣医学書は並びません(本棚の奥行きが大判漫画のサイズ分しかないので)。
…説得力がないかもしれませんが、この仕事を続けている限り、勉強し続けたいと思います。
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