本文へスキップ

あなたがウサギに出来ることは 獣医師による うさぎ専門情報サイトです。

MAIL alles@usagi.cn

アレス動物医療センター

手術をすべきか?

 よくいただく質問の中に
「うちのうさぎは6才で、大きな病気を持っている。手術を受けさせるべきか、そのまま見送るべきか」という質問をいただきます。
 で、答えと言うより私の個人的な意見を送らせていただくのですが、あくまで私見であり、その意見が正しいのかも分からず、「疑問あれこれ」に掲載していません。

 ただ、ちょっとみなさんにも考えてみて欲しくて、このような場所に取りあげてみることにしました。

 ご存じの方も多いかもしれませんが、うさぎさんは子宮の病気が多いです。
 子宮癌や子宮蓄膿症など、どちらも放置すれば命を落とすが、発見が早ければ手術で治療も可能です。
 ただ、どちらも大概6歳以上の高齢で(早いこは4才くらいで)、見つかるものですから、大いに飼い主さんを悩ませるわけです。
 子宮の病気に限らずですが、腫瘍と名のつく病気は大概高齢で起きるもので、手術すべきかどうか悩むものです。
 これはウサギに限らず、犬、猫、ハムスター何でもいえることでしょう。
 ちょっと話の幅を広げすぎるとわかりにくくなっちゃうので、ここでは子宮の腫瘍の話だけにしてみましょう。

 手術に成功すれば、残りの数年なりの寿命を全うできる。
 しかし、もう高齢だから、残りの寿命は3年もあるか分からない。
 しかも高齢のうさぎの手術は麻酔自体に危険を伴う。
 麻酔でそのまま死んでしまうことだってある。
 治療をせずにもしかしたら数ヶ月生きられるかもしれないのに、手術をして痛い思いをし、その結果死んでしまったら、その場で命が終わってしまう。
 もしこのまま放置してて痛みがないのなら、手術をさせずに残りの数カ月を過ごさせてあげたい。
 そのように考えられる方も結構いらっしゃいます。

 誤解しないでいただきたいのですが、その考え方が間違っているとは思いません。
 それも一つの考え方と思います。
 ただ、次のような考え方もあります。

 確かに手術で死んでしまう可能性は高いかもしれない。
 しかし手術をしなければ残りの数ヶ月(あるいは数週間)、うさぎはこの病気と戦い続けていかなければいけない。
 子宮の腫瘍は比較的転移しにくく(発見が遅ければ別ですが)、肺へ転移してくれれば早く死ねるのでしょうが(早く死ねるというのも変な話ですが)、良くも悪くもそう簡単には死ぬことができない。
 出血が徐々に進んで貧血死するか、お腹の中で腸などを圧迫するくらい大きくなってご飯が食べたくても食べられず、餓死していくかのどちらかということが多い。
 うさぎは1日食べなければ死ぬ生き物ですから、死ぬ数日前くらいまでは痛さを顔に出さず、賢明に生きていく。
 腫瘍の出血だから、抗生剤や止血剤で完全に止まるはずもなく、これから先、何ヶ月(なのか何週間なのかわかりませんが)もの間、うさぎさんは痛みに我慢しながら生きていく。
 痛みに耐え、空腹に耐えながら餓死するくらいなら、いっそ麻酔で死ぬ方が楽かもしれない。
 しかもこれで完治できたら残りの寿命を苦痛なく過ごすことができる。
 何もせずに後悔するくらいなら、出来ることをやるだけやって後悔したい。

 まあこれは、先の考え方と対比するために、極端に書いたものですが、正直これに近い考え方を私はします。

 何匹もの動物たちがそのように死んでいく姿を職業柄見てきましたが、その壮絶な最後に多くの人は手術しなかったことを後になって後悔します。
 すべては結果論であり、手術中にお亡くなりになって、「何で手術をさせてしまったのだろう」と後悔される方も当然います。

 人間でも、治療困難な病気に直面し、とことんまで戦い続ける人もいれば、これを天命と治療を拒否する方もいらっしゃるでしょう。
 そのどちらが正しいかなどわかるはずもなく、それはその人の価値観なり、人生観なり、宗教観なりから選択されるもので、良い悪いの問題ではないでしょう。
 人間にはそれを自分で選択する自由があるのです。
 しかし残念なことに私たちはうさぎの声を聞けません。
 ウサギが本当はどちらを希望しているのか理解してあげられないのです。
 ですから、これは飼い主さんの価値観にゆだねられてしまうわけです。
 
 もし今このようなことで悩んでらっしゃる方がいたら(このような手段が正しいかどうかはわかりませんが)、次のように想像してみてはどうでしょうか。
 ご自身が60才だとしましょう(無理矢理人間に当てはめて、ですが)。
 で、子宮癌になってしまい、手術しか治療法がないとします。
 手術の成功率は50%(これはうさぎさんの状態によりけりでしょうが)、うまくいけば残りの人生20年くらいを苦痛なく過ごせるが、失敗すればそのまま手術中にお亡くなりになってしまう。
 手術後1週間くらい手術の痛みに耐えなければいけないでしょう。
 逆に手術をしなければ、4、5年くらい生きられるが、その間痛みと戦い続けていかなければいけない。

 ここでどちらを選ぶかはその人次第です。
 くどいようですがどちらが正しいという答えはありません。
 ただ獣医師という職業柄のものなのかは分かりませんが、私だったら戦ってみたいと思うのです。
  
 くどいようですが、これはあくまで私見であり、これが正しいとも、すべてにあてはまるとも思っていません。
 参考にすらならないかもしれませんが、こういう考え方もあるという程度にご理解いただければと思います。 



アレス動物医療センター

〒933-0813
富山県高岡市下伏間江371

TEL 0766-25-2586
FAX 0766-25-2584