飼っている動物によって、飼い主さんのカラーも変わるもので、シェルティーを飼う飼い主さんはこんな感じの人とか、トイプーを飼う飼い主さんはこんな感じの人とか、パグを飼う飼い主さんはこんな人とか、診療をしているとなんとなくその偏りに気づくものです(偏見かもしれませんが)。
そんな中でよく思うのがウサギを飼っているお父さんと犬を飼っているお父さんの違いです。
動物病院に来る飼い主さんは90%以上が女性のかたです。
お父さんたちは仕事が忙しいのか、やはり病院についてこられる方は少なく、待合室はほぼ女性。
そんな中でも時々動物病院に来てくれるお父さんがたは、ウサギと犬で大きく異なります。
ウサギを飼っている飼い主さんの中で、動物病院にやってくるお父さん(あるいは男の人)たちは、みな診察に積極的に参加してきてくれます。
奥さんと一緒によく話を聞き、点滴中など頭をなでてあげてくださいというと、積極的に頭をなでてくれます。
積極的に質問をしてきて、一生懸命治療内容を理解しようと努力してくれます。
うさぎさんに対する愛情が外に溢れでているのです。
これに対して犬の飼い主さんの中で、動物病院にやってくるお父さんは、あまり診察に参加してくれない方が多いです。
そもそも診察室に入ってこない方も多いです。
せっかく病院まで来ているのに、車の中で待っていたり、『俺かんけーないから』みたいな顔して待合室に座ってたりします。
で、かなりの重病で、「手術が必要です」とこれこれこんなリスクがあって、手術しないとこうなって、と長々と診察室でお母さんに説明し、
「どうされます?手術しますか?」と聞くと
「ちょっと私一人では決められないので、お父さんに相談します」と
『お父さんに電話でもするのかな?』と思ってみていると、おもむろに診察室の扉を開いて、待合室の方に向かって「おとーさーん、ちょっと来てー」
って、
いるんかい!
もう一回同じ話するんかい!!
最初っから診察室にいろよっ!!!
ということがしばしばあります。
他にも「この子、飼い主のことすら噛むんです」と申し訳なさそうに犬を連れてこられる飼い主さんがいたとします。
犬はいかにもな感じで、ウーとか唸って、戦う気まんまん。
それでも診察しないわけにもいかないですから、「じゃあ肩のあたりをしっかり持ってあげてくださいねー」と正面に立つお父さんに言うと
『俺は関係ない』と言わんばかりに後ずさって、奥さんや娘さんに持たせます。
飼い主すら噛む犬を、娘や嫁さんに保定させるんかいっ!!
と正直ドン引きしますが、ほとんどのパターンがこれで、けして珍しいことではないのです。
夜間救急診療などで飛び込んで来られるときも、だいたいお母さんが抱っこして病院に入ってきて、診察中もお母さんが支えてくれます。
まあ車の運転はお父さんだろうから、お母さんが抱っこして入ってくるのは分からないでもないですが、明らかに立ち位置からしてちょっと遠目です。
時間外診療ですからスタッフがいないので飼い主さんに支えてもらうしかないわけで、手がふさがっているお母さんを避けて、「カルテにお名前、ご住所をご記入ください」とお父さんにカルテとボールペンを差し出すと、『お前書け』と言わんばかりにそのカルテをお母さんの方に押しやるのです。
じゃあ、カルテを書いている間、犬を支えてくれるのかというと、そうでもない。
犬も持たないし、カルテも書かないし。
『あんた何しに来たん?』と内心思います。
口には出したことはありません(顔に出てるかもしれませんが)。
何でしょうね、動物病院で積極的に動くっていうのが、カッコ悪いとか思ってたりするんでしょうかね。
私から見ると、凶暴な犬を奥さんに支えさせたり、救急の現場で他人ごとのような顔して眺めている方が、よっぽどかっこ悪いと思うんですが。
まあ、ざっくり言うと「役立たず」なお父さんが多いのです(ペットの飼育に関しては、ですが)。
余計なもの食べさせて太らせたり、変なもの食べさせて中毒を起こさせるのもだいたいお父さんですし、役に立たないどころか、診療の足を引っ張る人すらいるのです。
もちろんすべてのお父さんがそうというわけではないのでしょうが、やっぱり女性のほうがしっかりしていたり、強かったりするのかもしれません。
人間の育児はどうか知りませんが、もっとペットの育児にもお父さんたちには真剣に取り組んで欲しいです。
物言わぬ生き物ですから、飼い主さんからの本当の証言がなければ、正しい診断に辿りつけないことも多々あります。
自主的に治療が受けられない生き物ですから、飼い主さんが病院に連れてきて、薬を飲ませて、看病してくれないと治らない病気ばかりなのです。
すべてのお父さんがうさぎの飼い主さんのように、積極的に診察に参加してくれるようになると、もっともっとたくさんの動物たちが健康に、幸せに暮らせるのではないでしょうか。
動物病院に一生懸命通ってきてくれて、頑張って動物を支えてくれるお父さんは、最高にかっこいいと思うのです。
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