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アレス動物医療センター

大丈夫でしょうか?

 日頃診療をしていて、電話で病気の質問を受けることが多々あるのですが(あるいは質問メールを受けていてもあるのですが)、そのときに「大丈夫でしょうか?」というような質問をされることがあります。
 こんなときいつも「こればっかりは診てみないとわかりません」と言うしかないのです。

 たとえば
「昨日から下痢をしているのですが、このまま様子を見ていて大丈夫でしょうか?」
「足を引きずっているのですが、大丈夫でしょうか?」
「目やにが最近多いのですが、このままでも大丈夫でしょうか?」
と、いったご質問です。

 これは本当に返答に困ってしまいます。
 動物はただでさえ言葉を話さず(話しているのかもしれませんが、私にはよく理解できないですし)、本能的に病気を隠そうとするものですから、検査や診察をしてもなお大丈夫かどうか明言できないことが多いのですから、まして診ても触ってもいなければ「大丈夫」なんて口が裂けても言えません。

 電話でお話ししていて、おそらく大丈夫だろうなと思うことがあっても、その安全性が100%確信できたとき以外は「大丈夫かどうかは診てみないとわかりません」と言わざるをえないのです。
 病院や獣医師によっては違うのかもしれませんが、私はよほどのことがない限り「大丈夫です」とは言いませんし、確信もないのにそれを口にすることはえらく無責任な気がして仕方がないのです。

 ただ、電話をされてきている方の気持ちも分からないでもないのです。
 そんな深い意味でおっしゃっているわけではなく、単に大切なペットが大丈夫という安心が得たいだけなのだというのはわかるのです。
 わかるのですが・・・、やはりそれを口にするわけにはいかないのです。

 もし、電話だけのやりとりで、実は聞き逃している(あるいは見逃している)情報があり、飼い主さんが私の「大丈夫です」という言葉を信じて、病院に来なかったら、命に関わる大惨事を招いてしまうのです。
 もしかしたら、病院に苦労して来られるほどのことではないのかもしれない、「大丈夫」と一言いえば飼い主さんに安心と満足を与えることができる、それはわかっているのですが・・・というジレンマがあるのです。

 自分の仕事は動物の命を守り(あるいは快適な生活を守り)、それによって飼い主さんにも幸せと満足を届けるということと理解しております。
 基本的には、飼い主さんの満足を優先させて、動物を危険にさらす行為はすべきではないと思っているのです。
 それが正しいのかどうかはいまだによくわからないのですが・・・。

 どこかの本(雑誌でしたか?)で、良い病院の見分け方、みたいな特集があって、 「電話での問い合わせで『診ないとわからない』という病院は良くない」というようなことが書いてあったのですが、そうでもないよん!と思うのです。
 どこの病院も、別に儲けたくて言ってるわけではないのです(多分)。

 テレビドラマの人間のお医者さんって、結構「大丈夫です」とか「絶対助けます」なんて言ってますけど、あれって実際のお医者さんも言ってるんですかね? 
 私も一回くらい言ってみたいですね「この子は絶対私が助けます」なんて。 


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