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アレス動物医療センター

うさぎへの片思い2

 春になると増えるのが毛球症の患者さん。

 最近は毛球症とは言わないほうが良いと言われています。
 「毛球症」という表現はよろしくない、「消化管運動機能低下症候群」とか小難しい名前で呼ぶのが正しいとか正しくないとか。
 要は毛を飲み込んで胃に貯まるのが問題ではない、飲み込んだ胃を排泄できない胃腸の動きの悪さが問題なのだ!てな事みたいですが、そう言っても春、秋の換毛期に多く来るから、まあ一般的に患者さんにわかりやすく「毛球症」と言っちゃうことが多いです。
 
 毛球症の定義はともかく、毛が長い子や、ブラッシング嫌いの子、牧草嫌いの子(あるいはおやつ大好きな子)で、今のシーズン増えてくるのは確かです。
 
 そうすると、なりやすい子、あんまりならない子というのもあって、結構なりやすい子なんかだと(春、秋になるとコンスタントに食欲が落ちる子など)、毛球症用のお薬を予防的に飲ませてもらうことが多いです。
 
 ところがこの薬を嫌う子が時々いる。
 まあ薬なんだから、という気はするのですが、日頃うちの病院で出す食欲不振の薬は、結構うさぎさんが喜ぶ味らしくて、そんなに飲ませるのに苦労しないようで、それに慣れてしまっている飼い主さんからすると、嫌がるウサギに無理やり毛球症の薬を飲ますことが辛いようです。
 
 先日ちょいちょい毛球症で食欲がなくなって、ちょいちょい薬を出すんですが、ちょいちょい調子が良くなると薬が途切れてしまう飼い主さんがいて、
 「えー、もう飲ませてないのー?」てなお説教タイムが始まりました。
 
 「この子毛球症の薬すごく嫌がるんです。もう人間関係(うさぎ−人関係?)が悪くなっちゃうんで。すごくこの子に嫌われちゃうんです;x;」
 というような内容(だったかな?)
 まあ、気持ちはわからないでもないですね。
 県外の動物病院まで連れてくるくらい大事にしているうさぎさんに、健康のためとはいえ嫌がる薬を無理やり飲ませて、そのせいで嫌われちゃうんですもん。
 楽しいはずがない。
 
 親の心子知らず。
 わが子のことを思えばこその行動なのに、やればやるほど疎まれるわけです。
 完全なる片思い状態。
 
 で、飼い主さんにお願いしたのが
 「でも、飲ませましょう。この子の健康には変えられないです」
 きっびしー
 
 「いやまあ、価値観は人それぞれだから、この子との関係を重視して薬飲ませないのは自由だけど、それで死んじゃってもいいの?」
 「それは嫌」
 「この子の命とどっちが大事?」
 「命」
 「じゃあ、飲ませましょう」
 「えー(・_・;)」
 
 と、まあそんな感じのやり取り。
 気持ちは分かるんですよ、ほんと。
 
 僕らなんかもうその最たるもので、動物大好きでこの仕事について、動物大好きで一生懸命勉強して、夜を徹して看病して、休み潰して手術して、それでも患者さんからはまあ嫌われる。
ちなみに私なんて、うさぎの毛のアレルギーで、場合によっては呼吸困難になりながら診察してるのに、それでも嫌われちゃうわけですよ。
 何、このプレー!?

 撫でに行くと避けられ、診察台に上げれば震えが止まらず、体を触れば恐怖におののいた視線で「何する気!?」って感じで見られるわけです。
 ごくまれに何かを勘違いしたワンちゃんたちで、病院が大好きで、めっちゃ愛してくれる子たちもいるんですが、まあ9割がた嫌われてますね。
 
 そりゃまあ、注射するは、無理やり押さえつけてレントゲン撮るは、血採るは、歯削るは、患者さんたちからすると、痛いことと嫌なことしかしないひどい奴らの集団にしか思えないでしょう。
 愛せば愛すほど、頑張れば頑張るほど、それに反比例するかのように好感度下がっていきます。
 究極の片思い。
 
 でもまあ、いいんです。
 愛されるよりーもー、アーイーしたい、マージーでー
 って、とこなんです。
 
 君に嫌われてもいい、君が元気になってくれさえすれば・・・
 と、ちょっと酔ってみたりなんかして。
 
 でもホントは、やっぱり嫌われたくないです。
 人間の気持ちを動物に翻訳してくれる機械できないかなー。



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