今年一年ももうすぐ終わろうとしています。
終わる年あれば、新たに訪れる年もあります。
また新たに生まれる命もあれば、消えて行く命もあります。
この職業についてそろそろ15年になります。
獣医師としてはそれでもまだまだですが、それでもたくさんの命を見守って来ました。
いくらかの命を「守れる」ことはできたかもしれませんが、単に「見守る」だけの事のほうが多いのかもしれません。
いろいろな医療機器を買い揃え、勉強し、すこしずつでも技術を伸ばし(ているつもり)、それでも私達ができることは、生きようとする動物たちと、それを助けようとする飼い主さんの応援をすることだけなのかもしれません。
今月12年12月12日、当院に長らく通われていたうさぎのミントちゃん(仮名)が天に召されました。
11月に誕生日を迎え15歳でした。
人間で言うところの104歳です。
当院のウサギ長寿歴代ダントツの1位でした。
12歳の時腫瘍の手術をしました。
目の病気もしました。
骨折もしました。
斜頸にもなりました。
何度も何度も食欲不振になりました。
その都度飼い主さんは、あきらめず、一生懸命治療に付き合ってくれました。
病院から60km以上離れた場所にお住まいでしたが、頑張って通院治療を続けられました。
時に小さいお子さんを背負い、来院されていたこともあります。
とても大変だったと思います。
私は10年富山にいて、そのかたのお住まい近くに(ラーメンを食べに)車に行ったのは、たった一回だけでしたが、高速で行きました。
そのかたはその距離を、何度も何度も通われたのです。
思い返してみても病気のミントちゃんの頭を撫でながら「かわいそう」という言葉は聞いたことがあっても、「大変」という言葉は一度も言われなかった気がします。
大変でないはずがありません。
このミントちゃんに私ができたことというと、たいしたことはありません。
確かに手術などもしましたが、腫瘍の時にせよ、骨折の時にせよ、斜頸の時にせよ、何度もあった食欲不振の時にせよ、いつ飼い主様の心が途切れても、そこでミントちゃんの命は終わっていたでしょう。
そして、ミントちゃんもまた飼い主さんの期待に答えて、その都度復活を遂げました。
薬もなぜか大好きで、最後までペレットを食べ、薬を飲み、寝たきりになることなく自宅で息を引き取られました。
飼い主さんとお子さんたちの帰りを待っていたかのように夕方横たわり、そこから1時間も立たずに静かに息を引き取ったそうです。
「死」に良いも悪いもないとは思いますし、たとえご長寿No1だったとしても、飼い主さんの悲しみはたとえようもないものでしょうが、それでも素晴らしい「死」の迎え方ができたのではないでしょうか。
生あるものいつかはかならず死が来るのは当然であり、この仕事をしている限り、これからもたくさんの死を飼い主さんの傍らで見守り続けることになるのでしょうが、願わくは一人でも多く、ミントちゃんのような素晴らしい死を迎えられるよう努めていきたいと思います。
辛いことも、嫌なことも、しんどいこともたくさんある仕事ですが(まあどんな仕事でもそうでしょうが)、ミントちゃんや、ミントちゃんのご家族のような方と出会うたび、「この仕事をやっていてよかった」と思います。
「まだ頑張れる」と思います。
「体力が続く限り見守って行きたい」と思います。
本当に長い間お疲れ様でした。
本当にありがとうございました。
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