獣医師をやっていると、大変なことも、つらいこともたくさんあるわけですが、それでもこの上ない幸せだったり、達成感だったり、やりがいだったりを得る機会もたくさんあるわけです。
患者さんからお礼を言われた時、患者さんからおいしいものをもらった時、難しい手術を成功させた時、患者さんからおいしいものをもらった時、他の動物病院の先生に依頼を受けた時、患者さんからおいしいものをもらった時(しつこい)…などなど。
そんな中、先日、かなり嬉しいお言葉をいただいたので、ちょっとここで紹介を
その患者さんは22歳の高齢の猫さんでした。
クロちゃん(仮名)はいろいろ大きな病気を持っているのですが、それでも飼い主様の介護を受け、一生懸命生きていました。
病院に来るのはいつもお母さんなのですが、ときどき小さいお子さんを連れてこられました。
幼稚園の年長さんくらいでしょうか、かわいい男の子で、クロちゃんが注射を打たれるときは、いつも痛そうに顔をしかめていました。
診察室の隅っこに張り付きながら、それでも一生懸命クロちゃんの応援をしている姿がとても微笑ましかったです。
そんなクロちゃんも長い闘病生活の末、お亡くなりになりました。
飼い主さんもクロちゃんも、本当に一生懸命頑張られていたので、その別れがどれほど辛いものか、ちょっと想像できないほどですが、それでも律儀にご挨拶にこられていました。
それから数カ月たち、いつも通りの診療をしていたときに、クロちゃんのお母さんがひょっこり現れたのです。
あれ、別の猫さんでも飼ったのかな?と受付に行くと、こんなことを言われました。
「子供が将来『沖田先生になりたい』って言っているんですけど、いいですか?」
はい?
ちょっと何をおっしゃっているのかわからず、ボーとしていると、詳しく説明してくださいました。
学校(幼稚園?)で将来の夢を発表する機会があったそうです(たぶん紙に書いて貼りだすということだと思うのですが)。
そのときにお子さんが、将来の夢として「獣医師になりたい」ではなく、「沖田先生になりたい」と書いたそうで、掲示される以上個人名なので、はたして実名を挙げて良いものかと思い、一応確認にこられた。
というようなお話でした。
ちょっと照れ臭いお話ですが、こんな光栄なことはありません。
あの注射を怖がって、壁に張り付いていた男の子が、獣医師ではなく私になりたいと言ってくれているというのです。
まあ、実質は私=獣医師ということなのかもしれませんが、それでも嬉しいじゃないですか。
かわいいじゃないですか。
うーん、ちょーかわいい!!
残念ながら、その時はお母さんしか居らっしゃらなかったのですが
その場にいたら
「何かほしいものはないかな?
おじさんに言ってごらん??」と、怪しいことを言っちゃったかもしれないくらい、うれしかったです。
こういう言葉って、一生の宝ものになりますよね。
ああ、この仕事していてよかった、と本当に実感しました。
来年にはパイロットか公務員になりたくなってるかもしれないけれど、すでに私のことなんか忘れてしまっているかもしれないけれど、あの子の人生の中でほんの一瞬でも目標になれたのなら、なかなかこの商売も捨てたものではないと思うのです。
もうさすがに2度とそんなセリフを言われることないでしょうねー。
あー、そのセリフ言うとき(書くとき?)現場に立ち会いたかったなー。
超絶かわいいですよ。
あー、飴玉とかぽち袋とか、何か用意しておけばよかった。
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